なぜ税務調査が来た!?消費税の脱税(売上適当)や、経費水増しなど狙われる申告書の特徴

最終更新日

Comments: 0

永江 将典

公認会計士・税理士
プロフィールへ


今回は、税務調査に選ばれやすい特徴をもった申告書はどんなものがあるのかご紹介していきます。

 

調査官が税務調査先を選定するときに、どのような着眼点を持って選定していくのでしょうか。
代表的なものを今回はご紹介していきます。

 

今回の記事に関わりのある記事がいくつかありますので、

そちらも参照して下さい。

「なぜ?個人に税務調査が来る理由、脱税が疑われやすい申告書のポイント」

「消費税を払いたくなく粉飾検査をし売上を誤魔化しました。逮捕されますか?」

「個人事業主に税務調査が入る理由について

 

選定は「人の心理」を突いて来る!

税務調査の対象・選び方
 
税務調査に選ばれる理由とは、どのようなものでしょうか。

そもそも税務調査の目的は「所得金額の確認」の為に行われています。

 

日本の税制度では、申告納税制度を使用しています。
これは、自らで所得額を計算し、それに基づいて税額を算出し、自己申告するという制度の事です。

ですので、自己申告した内容が正しいかどうか、即ち自らで算出した所得額ひいては納税額がが正しいかどうかは調べてみない事にはわかりません。

これらの事より、税務調査が行われています。

 

税務調査の目的は「所得金額の確認」の為ではありますが、
その調査先として選ばれる理由には、何らかの理由があります。
税務署は、この何らかの理由を公表してはいませんが、

「申告内容に違和感を感じる(誤りや不正の可能性がある)」
「申告内容から事業に動きがあったみたいなので、どういう事か確認に来る」
「取引先に不審なものが疑われるので、取引先の調査の裏付けとして先に調査に来る」

等、様々な理由から調査に来ます。

 

税務署は何らかの理由があって、税務調査に乗り出すわけですが、
調査先を選定する時に調査官が着目するのが「人の心理」のようです。

 

どういう事かと言いますと、
少しでも税金を抑えたいな~と思うと、
多くの場合、「これをすると税金を減らせるかも!」と考えられる方法で
何らかの対策をします。

 

それらの対策が税理士など税法に詳しい専門家に相談し
ちゃんと法律に則った、正しいやり方で納税額を減らすのであれば何も問題はありません。
これは「節税」と言われ、法律の範囲内での工夫によって税金を少なくする正しい方法です。

 

しかし専門家に相談せず、一応は調べてみただけで自己判断で対策をしてしまい、
結果正しい節税方法でなかったという事もあるでしょう。
もしくは安易に「隠したいな」「バレないといいな」と思って魔が差して、
という事もあるかもしれません。

往々にして、これらの「税金を減らす方法」というのは
税法に詳しくない人が自己判断して行うには難しく
間違ってしまう事が多くありますし、
安易に考えて対策と思って不適切な事をしても、
専門家から見ると簡単に見破られてしまいます。

 

又、正しい正しくない関係なく

「税金を減らしたい」という心理から想定される行動や
「税金と減らしたい」という心理の原因となる背景

には共通点があります。

 

調査官はプロですから、
これらの心理や行動の共通点、また背景となる出来事が何か等を熟知しています。

ですので、税務調査先を選定する時に、
あえてその心理や行動の共通点、そして背景となる出来事な何かを把握し、
そこを突いて選定していくという事をしているようです。

 

例えば、よく税務調査で選ばれやすい「税金を減らしたい」という思いの背景となるものに

  • 「売上が1000万円超えてしまった」⇒消費税を払いたくない。
  • 「売上がどんどん伸びてきた」    ⇒嬉しい反面、納税額をちょっと減らしたい。
  • 「申告していない」         ⇒申告書を作るのが面倒。税金を払いたくない。

等が代表的に挙げられます。

これらの思いの背景は、細かく見ていくと人それぞれ、様々なものでしょう、
しかし大抵の場合、広い視野で見ていくと共通の枠組みのようなものがあります。

 

また「税金を減らしたい」と思い、不適切なやり方で税金を減らす方法
即ち代表的な不正として見受けられるのは

「売上除外」や「経費の水増し」等です。

これらも税務調査でもよく目にします。

 

このように税務調査を選定する時に、
調査官は「人の心理」を突き、
背景となる出来事や考えられる疑わしい行動が見え隠れする申告書を選んでいきます。

 

勿論前述しましたが、このような疑わしいと思われる申告だけではなく、
提出された申告書の背景が不明で、何故その申告に至ったかを確認したいと思った時、
取引先が疑わしく裏付けが必要となった時等も
調査の選定時の理由として挙げられます。

 

ここでもう一つ、ご紹介しておきたいことがあります。
それは税務署が調査に至るまでに、あえて時期をずらす事があります。

 

税務署は調査先の選定の着眼点として、
人の心理や、背景、行動の共通点を利用していますが、それだけではありません。

 

税務署は、「疑わしいな」「不思議だな」「どういう事かな」「裏付けが必要だな」等
様々な理由から調査を行うわけですが、
何も気付いたその年に調査をするという訳ではありません。
あえて時期をずらす事があります。

 

つまり、税務署は必要と思った場合は

あえて数年泳がす、
もしくは関連先に先に調査に行ってしっかりとした裏付けを取ってから調査に乗り出す、

ということがあるという事です。

 

例えば、家を購入したという出来事があった場合、
家を購入した年に調査に来ないで、あえて3年後ぐらいに調査に来る時があります。

 

これらの詳しい内容については
「税務調査はいつ来る?税理士変更や、法人化、車や家の購入は調査が来やすい多い時期・タイミング?」
に記載していますので、今回は割愛します。

 

あえて時期をずらすとはどういう事か、
税務調査が来やすいタイミングとは、どんな出来事があった時が知りたい方は

「税務調査はいつ来る?税理士変更や、法人化、車や家の購入は調査が来やすい多い時期・タイミング?」

を参照してください。

 

それでは、税務調査に選ばれやすい申告書の特徴について代表的なものをご紹介していきます。

 

やっぱり消費税は大きい!

税務調査の対象・選び方
 
税務調査に選ばれやすい申告書の特徴と言えば、一番に挙げられるのは、

やはり数年間「売上が900万円前後で推移し続けている」申告書

になります。

この「売上が900万円前後で推移し続けている」申告書と関連が深い記事として
「消費税を払いたくなく粉飾研鑽をし売上を誤魔化しました。逮捕されますか?」

がありますので、参照してみて下さい。

 

さて何故、「売上が900万円前後で推移している」と狙われやすいのでしょうか?
ここには消費税が大きく関連していきます。

 

まず、消費税は「売上高が1000万円を超えた」方が課税対象となっています。
消費税徴収は、売上高が1000万円を超えた年の2年後に徴収されます。

 

この消費税というのは、申告するかしないかではかなり納税額が大きく変わってきます。そのため、売上高を900万円前後で何年も推移させている申告書を提出していた場合、「本当は売上が1000万円を超えているのに、消費税の申告をしたくない為にごまかしているのでは?という疑いがかけられてしまうのです。

 

別の言い方をしますと、売上が1000万円を超えないと消費税がかからないという事を知っていて、消費税から逃れるために正しい申告をしていないのではないかと疑われているという事です。

この「売上が900万円前後」の事をボーダーラインと呼ばれていますが、
このボーダーラインにあたる申告書を数年にわたって提出している場合は、
まず目をつけられてしまいます。

 

つまり、売上が900万円前後の申告書が1年や2年であれば、まだ大丈夫ですが、
このボーダーラインにあたる申告書を3年、5年と
何年もかけて提出し続けている際は注意が必要
です。

 

事実、売上高が900万円台が続いているのであればいいのですが、
そうでない場合は、税務調査が行われると加算税や延滞税などが追加され、
本来払う以上の税金が課税されることになり
、納税額が多額になります。

また税務調査で、追徴された場合は納税が一括払いとなります。

 

つまり、この消費税逃れの為に、正しい申告をしていなかった場合は、
本来払う以上の多額の税金が徴収される上、それらが一括払いとなりますので
会社の運営に必要な資金に大きなダメージとなる
という事です。

 

税務署にはさまざまな情報があります。
本人はバレていないと思っていても、税務署の職員もプロの方ですので、
調べる為の着眼点というのがあります。
また税務職員は職権として取引先や銀行などの情報を調べる事も出来ます。
ですので、税務署には必ずバレていると思っていた方がよいでしょう。

まだ税務調査に来ていないのであれば、気付いていないのではなく、
まだ来ないだけの何らかの理由があって、あえて泳がしているという事もありますので、
気を付けて下さい。

 

もし、このボーダーラインにいる方で、
実は売上が1000万を超えていたけれど、
まだ税務署から連絡が来ていない場合は、
早めに対処を
しましょう。

早めに自ら動いで対処することで支払う税額が大きく変わります

 

何故なら税務調査の連絡が来る前に自ら修正申告を提出した場合は、
延滞税や加算税がかかるのは同じですが、加算税の税率が変わってくるからです。

 

即ち事前通知前に修正申告をした場合、
過少申告加算税であれば対象外となりますし、
無申告加算税であれば金額に関係なく税率が一律5%となります。

 

逆に、税務調査の連絡が来てしまってからでは、
加算税や延滞税などのペナルティーが発生する事は同じでも、
加算税の税率が最悪の場合35%もの上乗せ分が加わり
さらに調査の対象期間の年数分の税金を支払うことになります。

 

を参照して下さい。

 

以上の事から、もし消費税逃れの為に正しい申告をしていなかった場合は、
今からでも遅くありません。事前連絡が来る前に、気付いた時点で早めの対処されることをお薦めします。
もし相談できる場所がない場合はお気軽にご相談ください。

 

売上が右肩上がりの申告書

税務調査の対象・右肩上がりの申告書
 
次に近年、税務調査で狙われやすい申告書の特徴として挙げられるのが

「売上が右肩上がり」の申告書です。

 

「売上が右肩上がり」、つまり年々売上が伸びてきている所です。
今までの努力が実り、良い結果として出てきているというのは、
とても素晴らしい事ですし、嬉しい事だと思います。

 

売上がどんどん伸びてきている、規模が大きくなっていくというのは嬉しい反面、
支払う税額も大きくなっていきます。

納税額が増えますが、正しいい申告を心がけているというのであれば、問題ないのですが、
「売上が右肩上がり」すなわち、売上が伸びてきていたり、規模が大きくなってきたりすると、
中には「納税額を少し誤魔化せないかな?」を魔が差してしまう方もいらっしゃるようです。

 

この「売上が右肩上がり」となっている場合に、税金を誤魔化しやすいというのは、
税務署では昔からの王道中の王道として認識されています。

特に誤魔化すために、「売上を除外する」「経費を水増しする」というのは、
一般的にやりやすい方法で、よく見受けられる方法ですが、
逆の見方をすると税務署がその部分にしっかりと目をつけているという事です。

 

ですので、近年売上が伸びてきている、
若しくは2店舗目・3店舗目を出店した等、事業の拡大がある又はあった方は、
税務署は「正しい申告をしているか」確認する為に、調査先として選び調査に来ます。

実際の税務調査の実施は
景気が良くなった、もしくは何らかの事業拡大をした直後というより、
期間を少しあけて調査に来ることが多いようです。

特に、申告内容に不審な点、不明な点があったり、
税務署に集まってきている資料等から申告内容に疑問点が見られた場合は要注意です。
1年、2年と様子を見て、必要な裏付けをしっかり取り、
また納税者側の資金がしっかりと確保された時期ぐらいを見計らって
調査に訪れる事が多いです。

 

明らかに所得金額が低い申告書も要注意!

税務調査の対象・低い申告書
 
税金を少なくする為に、適切な節税をする事もあれば、不適切な方法でもって税金を減らしている事もあります。

 

特に個人事業主の方は、「所得金額≒生活費」と見られています。

これらの詳しい内容は
「個人の税務調査はどこまで調べる?脱税はどこまでバレてる?」

を参照してください。

 

ですので、明らかに所得金額が少ないとなると、

調査官は自然な事ですが
「どうやって生活しているの?」
「どこから生活費を捻出しているの?」
「貯えがあるの?」

と様々な疑問を感じる事になり、
結果、税務調査先に選んで調査に来ます。

 

税務署は、家族状況は勿論、所有している車、家等様々な情報を持っています。
調査選定の際に、必要と判断された場合は、
事前に外観調査といって、わざわざ家を見に来たり、車の所有者を調べたりという事をしますし、
飲食店等店舗があるなら、客を装って内観調査をする事もあります。
飲食店の内観調査をする場合、ガッツのある調査官であれば、
自腹で家族を連れて、客として何度か足を運び、
裏付けを取るという方もいらっしゃいます。

その他、時には銀行調査と言われる調査を行う事もあります。
つまり銀行へ赴いて、銀行の口座や取引について調べて裏付けを取っていたりもします。

 

このように、「明らかに所得金額が少ない」申告書は、
税務調査先に選ばれやすい申告書と言えます。

 

ラウンド数字や一括での記入は危険!

税務調査の対象・ラウンド数字の申告書
 
ラウンド数字とは何?と思われるかもしれません。
まずこのラウンド数字について簡単にご説明しますと、

所謂「千単位」「万単位」等、端数が全くついていないものを言います。

 

申告書を作成する場合、売上、仕入、経費いろんな科目を記載していきます。
その際に、通帳を見る事もあれば、領収書を見る事もあります。
それぞれ関連するいろんな資料から、事業に関わった全てのお金を記入して、申告書を作成していきます。
そうしますと当然、全科目に端数が全くないというのは明らかに不自然なことです。

もちろん、科目によってはラウンド数字はあるでしょう。
しかし、全ての勘定科目が万円単位、千円単位の記入となると、怪しさ満点の申告書になります。

 

このラウンド数字だけで記入された申告書は「怪しい」と思われるのは勿論ですが、
中には経費を一括で記入している申告書等もあります。

 

売上だけ細かく書いたとしても、
旅費や水道光熱費、交際費、消耗品費等、
経費の勘定科目を全部すっとばして、
経費一括で記入するというのは、とても不自然です。

 

このような不自然な申告書は、当然ながら調査先の選定に挙がります。
「何故こうなった?詳しい内容はどうなっているの?」と調査官が思うのは自然な事でしょう。

つまり、このように一括記入もしくは全勘定科目がラウンド数字という申告書は、
「何かを誤魔化す為にそのような記入にした」
もしくは「そもそも各科目ごとの記帳をきちんとしておらず、適当に合計して記入した」

と疑われます。
当然、しっかりと内容を把握して正しい申告をしてもらって、
きちんと納税してもらおうと税務署側はなるわけです。

 

そもそも、記帳と資料等の保存は法律で義務付けられています。

法人はもちろん、
個人であっても白色申告・青色申告関わらず、
全ての人に義務として課されているものです。

 

記帳や資料保存はしっかりとしておきましょう。
詳しい内容については
「税務調査の電話がきたけど、帳簿がない、つけてない、紛失した、白色申告で適当だ…という方へ」

 

を参照してください。

 

税務署ごとに「今年は〇〇を重点的に調べよう」がある

税務調査・業種
 
これは、税務調査先に選ばれやすい申告書の特徴とは違いますが、

最近税務署では、税務署ごとに「今年は○○を重点的に調べよう」といったもので、
調査先に選ばれる事もあります。

これを重点調査業種、もしくは重点業種と呼ばれています。

 

この重点調査業種とは、どういう事かと言いますと、
各税務署ごとに

例えば、「今年は農業をしっかりと調査していこう」とか「今年は繁華街を重点的に調査していこう」等、
テーマ・業種を掲げ、そのテーマ・業種に沿って重点的に調査先をピックアップする事があります。

 

このような重点調査業種については各税務署ごとに内容は違います。
またその年の重点調査業種についてや何件調査するといった情報は公表されていません。

各税務署や国税局からこの重点調査業種についてや、
それらの重点調査業種の調査件数の指定が入り、
その内容に合わせて、対象となる申告書をピックアップし調査先として選定されてることがあります。

 

最後に

税務調査の選定基準
 
税務調査の目的は「所得金額の確認」ですが、
調査対象として選ばれるには、それぞれ何らかの理由があります。

その中でも、税務調査に選ばれやすい特徴をもった申告書というのも事実あります

正しい申告を心がけ、資料等はしっかりと決められた年数分保管しておきましょう

もしまだ事前連絡がないけれども、
提出した申告書がこの選ばれやすい特徴をもった申告書でかつ、
実は正しい申告でなかった場合は、
早めに対処をしましょう。

事前連絡前に自ら修正申告を提出する事で、追徴される税額が大幅に変わってきます

 

周りに相談できる税理士がいない場合は、お気軽にご相談下さい。
不当に税金を安くするため、もしくは今だけなんとか出来れば良いという方はお断りしておりますが、

これからちゃんと申告していきたい!という方は全力でサポートさせて頂きます。

例え無申告であったも、資料が不足していたとしても大丈夫です。
すでにしてしまった事に対して、責めたり怒ったり致しません。

これからちゃんと申告していきたい!という方全力でサポート致しますので、一度ご相談下さい。

永江 将典

公認会計士・税理士
プロフィールへ


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


コメントする