個人・法人の税務調査で脱税で逮捕される金額基準は!?逮捕されない対策は?

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永江 将典

公認会計士・税理士
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税務調査がきっかけで、逮捕・懲役となり刑務所行きとなるケースはあります。

最近だと、大阪城の前でたこ焼きを販売していたおばちゃんが3年間で1憶3000万円の脱税をしたとして告発され、懲役1年の判決が出ています。

ポイントは、脱税していて3年間で1憶3000万円というところですね。順番に解説していきます。

税務調査で逮捕される可能性

『私は逮捕されますか?』

こんな電話が税務調査の時期になると毎月のように相談したいとかかってきます。
年間100件以上の調査に、納税者の方と一緒に同席させてもらってますが、逮捕された件数は0件です。(1件、逮捕へつながりそうな案件はありましたが)

税務調査の連絡があった場合は逮捕されません!(ほぼ)

逮捕・懲役となる場合、税務調査にあたって税務署から電話はかかってきません。
裁判所からの捜査令状をもって、予告なく朝突然、国税庁査察部という部署のみなさまに取り囲まれます。この場合は、逮捕・懲役へと発展する可能性があります。

ですので、税務署から、

『税務調査へ行きたいので日程調整をさせてください』

と連絡が入った場合は、99%(弊社統計)逮捕へ至る可能性はないです。この点は安心してもらって大丈夫です。

連絡のない税務調査は逮捕される!?

逮捕に至る税務調査かどうか?の判断ポイントのひとつ目は事前連絡があったかどうかです。

そして、次の判断ポイントは裁判所の令状を突き付けられるか?どうかです。朝、突然、今から税務調査をしますと無予告で訪問されるわけですが、裁判所の令状をもっていないケースもあります。

突然の調査には3パターンあります。

1.国税局査察部による裁判所の令状をとったうえで行われる税務調査(強制調査、通称マルサ)
2.国税局資料調査かによる税務調査(任意調査)
3.税務署が、特に現金商売の飲食店や水商売をする事業所に対して行う税務調査(任意調査)

ですので、朝税務調査が来た時に、国税局査察部の人が令状をもってきたらヤバい!!
と思ってください。誰が調査に来たのか。これが逮捕されるかどうかの第一判断基準です。

査察部による調査以外で逮捕・懲役となるケース

ただし、2や3のケースだったからといって100%逮捕されないわけではありません。1のケースは、事前に多額の脱税が見込まれる場合ですが、普通の任意調査のつもりで調べていくと予想以上に悪質な脱税で脱税額も3年間で1億円を超えると、任意調査から強制調査へ切り替わることがあります。強制調査へ切り替わると・・・逮捕の可能性が出てきます。

逮捕・懲役で実刑をくらう可能性がある国税局査察部(マルサ)による調査

国税局査察部による調査は、国税犯則取締法という法律に基づいて行われます。

国税局資料調査課や税務署の調査は、国税通則法第34条の6第3項に基づき行われます。

同じ税務調査と言っても、根拠となる法律が違うわけです。第一条を見てみましょう。明治33年に基本ができた法律なので、漢字カタカナで非常に読みにくいですが・・・

国税犯則取締法はこちら

第一条 収税官吏ハ国税(関税及噸税ヲ除ク以下同シ)ニ関スル犯則事件(以下犯則事件ト称ス)ヲ調査スル為必要アルトキハ犯則嫌疑者若ハ参考人ニ対シ質問シ、犯則嫌疑者ノ所持スル物件、帳簿、書類等ヲ検査シ又ハ此等ノ者ニ於テ任意ニ提出シタル物ヲ領置スルコトヲ得
2 収税官吏ハ犯則事件ヲ調査スル為必要アルトキハ参考人ノ所持スル物件、帳簿、書類等ヲ検査スルコトヲ得
3 収税官吏ハ犯則事件ノ調査ニ付キ官公署又ハ公私ノ団体ニ照会シテ必要ナル事項ノ報告ヲ求ムルコトヲ得

特徴は、納税者に対する調査という扱いではなく、嫌疑者に対する調査である点です。引用した第一条の中にも嫌疑者と書かれてますよね。そもそも調査に対するスタンスが他の調査と違うわけです。逮捕を目的に来てますからね。

逮捕・懲役の法的根拠

脱税をして、逮捕・懲役となるケースは、所得税法第238条・法人税法159条のなかに書かれており、偽りその他不正の行為(=売上の故意な脱漏)をした場合には、刑罰として10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金となります。参考までに、根拠条文も引用・記載しておきますね。

第二百三十八条 偽りその他不正の行為により、第百二十条第一項第三号(確定所得申告)(第百六十六条(申告、納付及び還付)において準用する場合を含む。)に規定する所得税の額(第九十五条(外国税額控除)又は第百六十五条の六(非居住者に係る外国税額の控除)の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした所得税の額)若しくは第百七十二条第一項第一号若しくは第二項第一号(給与等につき源泉徴収を受けない場合の申告)に規定する所得税の額につき所得税を免れ、又は第百四十二条第二項(純損失の繰戻しによる還付)(第百六十六条において準用する場合を含む。)の規定による所得税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

所得税法はこちら

第百五十九条 偽りその他不正の行為により、~略~その違反行為をした者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

法人税法はこちら

査察部による強制調査から逮捕までの流れ

では、強制調査で無予告の調査が始まった場合。どのようにして逮捕にいたるか紹介します。(強制調査=100%逮捕ではありません)

脱税が悪質で、手口が巧妙(脱税がバレないために手の込んだ対策をする)な場合、告発や起訴をされる可能性が高く、裁判で実刑判決に至ります。脱税が犯罪として認定されるためには、脱税の故意性が要件とされているわけです。

このため、まずは脱税が故意でないことを主張して裁判で国税と戦い無罪判決を目指すことになります。ちなみに、裁判になってしまった場合の起訴率(逮捕される割合)は約70%程度です。裁判になっても、逮捕を回避できる可能性はまだあるわけです。

税金を本来あるべき税額より少なく払っていたが、逮捕・起訴されなかった事例

2016年7月16日のヤフーニュースからの抜粋です。こちらは5億円近い税金の支払い漏れがあったにも関わらず、逮捕とならなかった例です。

ゼネコン大手の清水建設(東京、東証1部上場)が東京国税局の税務調査を受け、2015年3月期までの5年間で約20億円の申告漏れを指摘されたことがわかった。水増しされた下請け会社への外注費などが問題視され、経費として認められなかった模様だ。追徴税額は過少申告加算税を含め、約5億円とみられる。

このニュースの概要は、清水建設の社員の方が不正をし、経費を水増ししていたというものです。逮捕とならなかった理由は、推測ですが・・・社員の不正であって会社として組織ぐるみでわざと税金を安くしよう!と悪意を思って行ったわけではない、と税務署が判断したからだと思います。

このように、税務調査で逮捕される際は、税金を少なくする目的をもってわざと嘘の資料を作成したり、売上を隠したりした場合です。ですので、今回のニュースに登場した清水建設は追加で払うことになった税金の額は多額ですが、逮捕者が出るという事態には発展しなかったわけです。

実際に脱税で逮捕された事例

FXで得た利益を全く確定申告しておらず、逮捕されたニュースです。

日経新聞からの抜粋です。

静岡地検は9日、外国為替証拠金(FX)取引で得た所得約3億6800万円を申告せず、約1億4千万円を脱税したとして、シンガポール在住の会社役員、溝田耕治容疑者(37)を所得税法違反(脱税)容疑で逮捕した。溝田容疑者は日本在住時に問題のFX取引を行い、利益を申告しないままシンガポールに移住していた。

ニュースによると、溝口容疑者は、国税局から

「こいつは初めから脱税目的で利益を隠す意図があった!」と判断されたようです。

証拠として、FX取引に十数人の知人名義の口座を使用したり、数万円の謝礼を支払って口座を譲り受けた疑いがあったそうです。

結局、この行為が意図的に利益を隠す目的で悪質だ!と判断されたようです。そして、FXで稼いだのち、海外に移住していたようです。

海外に移住してからFXで稼いでいれば、その分は日本では税金がかからないのですが、日本にいるときに稼いでから海外へ行ったという点も税金を逃れるためと判断されたのではないかと思います。

脱税を見つける手口

税務調査で脱税がバレるパターンを4つ紹介したいと思います。

 ・雑談から脱税がバレるケース
 ・裏帳簿から脱税がバレるケース
 ・反面調査で脱税がバレるケース
 ・資産から脱税がバレるケース

の4つです。

雑談から脱税がバレるケース

税務調査の初日によくある話です。
初日の午前は、結構雑談で終わったりします。

で、この雑談タイムで意外と情報が引き出されたりします。
税務調査が入ると、どこの会社にも絶対あるのが帳簿です。
帳簿は、脱税している人ならわかると思いますが、
絶対バレないように作りますよね(爆)

だから、帳簿から脱税がバレるケースは少ないです。
それよりも、帳簿以外の管理資料から脱税が発覚します。

そして、この管理資料は会社によってまちまちですよね。
だから、調査官は雑談の中からどんな管理資料があるか
聞き出そうとします。

例えば・・・家を作っている工務店の場合であれば、
「家は年間何件くらい作っているんですか?」
「1件作るのに、どのくらいの期間がかかるのですか?」
「外注業者は利用していますか?」
「何社くらい利用していますか?」
「そんなにたくさん外注業者を使っていると、スケジュール管理が大変じゃないですか?」

と話をふると・・・
社長さんはついつい日々の現場管理の大変さを語ってしまったりします。
すると、

「現場での外注先のスケジュール管理はどのようにしているのですか?」

⇒「工事管理台帳で業者ごとに納期の管理をしています」

⇒「では、その工事管理台帳を見せてください」

となり、工事管理台帳にのっているすべての外注先をチェックします。
そして、この管理台帳に乗っている会社以外に外注費を払ったりしていると・・・
めでたく、架空経費が発見されてしまいます。

このように、帳簿と帳簿の元になっている資料を照合することで、
客観的事実と帳簿のズレをみつけて、帳簿上の嘘を見つけるのです。
なんだか、探偵みたいです。

初日の雑談から脱税がバレた事例 その2

脱税が雑談からバレた事例をもう一つ、紹介します。
税務調査の初日の午前は雑談で終わっていくことが多いのですが、
雑談の際に、雑談をしている部屋にB銀行のボックスティッシュがありました。

で、このB銀行は帳簿には全く載っていない銀行でした。
すると、調査官は銀行へ問い合わせをして、あなたの会社の口座がないか
確認をします。結果、めでたく隠し口座が発見され、脱税がみつかります。

このようにして、雑談や会社にあるものなどを観察しながら、
脱税の糸口を見つけるわけです。

反面調査から脱税を見つける

反面調査は、実際にあなたの取引先へ税務署が取引の状況を
確認することです。

脱税しているダークな会社なんかと付き合わない!という理由かどうかはわかりませんが・・・
この反面調査のせいで、取引先から契約を打ち切られた!
なんて話もあり、税務調査の現場でもめやすいイベントです。
もちろん、脱税していれば一発で発見されてしまいます。

反面調査は、国税通則法第74条の2が根拠条文となっています。
これによれば、あなたと取引関係がある個人・会社に対して、
必要があれば調査ができる、と書かれています。

しかし、どういう場合に必要かが書かれておらず、
あいかわらず税金の世界は曖昧です。

ただ、少なくとも次のようなケースでは反面調査をされても文句が言えない
と思います。

 ・請求書や領収書を全部捨ててしまった ⇒ 調査しようがない
 ・明らかに帳簿がうそっぱちである ⇒ 証拠を掴む必要がある

実際に反面調査が行われる際は、取引先に対して事前に連絡され、
関係資料の確認がおこわなれます。

権利として、税務調査官は反面調査ができるのですが、
帳簿も真面目につくっていて、資料もきっちり保管していて何も
やましいことがないのに、嫌がらせのように反面調査をするぞ!
と脅されているような場合は、各地の税務署にいる

「納税者支援調整官」

に連絡しましょう。
納税者支援調整官は、税務調査に対する不満や調査官の態度に問題がある場合
など苦情を受け付けています。

こちらのリンク先(国税庁のホームページ)から確認ができます。
納税者支援調整官制度(クリック)

裏帳簿や隠し資産

次に、裏帳簿や隠し資産から脱税がバレるケースです。

裏帳簿は、脱税をしている場合に、税務署に見せる用の帳簿以外に作られた
実際に本当はいくら儲かっているかが乗っている帳簿やメモ帳などを指します。

普通、裏帳簿なんて作っている場合には、
絶対にバレないようにいつも肌身離さず持ち歩くカバンにいれているかもしれません。

肌身離さずもっているので、調査官から
「カバンの中を見せてください」

と言われることもあるでしょう。
これは見せる義務はないのですが、見せないと確実に疑われます。
やましい(脱税)ものがなければ、見せてしまったほうが楽ちんです。

家や高級車を買うと、脱税がバレる!?

必ずではないですが、バレるきっかけになります。
家を買うと、絶対に登記しますよね。

この登記情報は法務局から税務署に流れます。
税金を全然払っていない(利益が出ていない)のに、家が建つなんて
明らかにおかしい!!という疑いの目でチェックしています。

また、車を買うと自動車税を払いますよね。
税を管理しているのは税務署です。高級車を買ったくせに、
税金を全然払っていなければ、やっぱり脱税してるんじゃないか?
と疑われる原因になりやすいです。

永江 将典

公認会計士・税理士
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