他人名義の口座で取引をした場合の税務調査での注意点(せどりや副業編)
今回は何らかの事情により妻や家族、友人など他人名義の口座やクレジットカードで取引をした場合の税務調査での注意点をご紹介していきます。
本来、事業においての取引は事業を営んでいる本人名義のものを使用し行う事が原則です。しかしながら、
「サラリーマンで副業をしており会社にバレたくない!」
「せどりをしているけれども、Amazonのアカウントが停止され商売が出来ない。誰かに助けてもらおう!!」
など、なんらかの事情から他人名義のものを使用し事業を行うもしくは継続するといった事もあるかもしれません。
そういった他人名義で取引をしている事情がある中で、若しくは過去に行っていた中で、もし税務調査が行われるとなった場合何に気を付けたら良いのか、どのような注意点があるのかといった事を今回はご紹介していきます。
原則、他人名義は使用しない。不正を疑われてしまうので注意!!
原則としては、やはり他人名義のものを使用して取引をしない事です。
余程のやむを得えない事情がない限りは本人名義ものを使用し、取引を行う事が原則です。
事業に関わる取引は銀行口座やクレジットであれ、本人名義のもので行いましょう。
特に、売上が入金される銀行口座は注意が必要です。
まず税務署は、事業が誰に帰属するのかという部分に着目します。
要するに、取引の主体が誰なのかという部分を見るという事です。
その取引の主体が誰なのかというのを判定する基準というが
お金の入金先はどこなのか、という部分になります。
ですので、たとえ家族であっても、他人名義の口座を使って取引をしたり、
またその他人名義の口座に売上の入金があるという行為は
客観的に視て、売上を隠蔽しようという意図があると税務署側から思われる危険性があるという事です。
もし、税務署がそのように売上の隠蔽をしたと判断した場合には、
これは仮装隠蔽すなわち不正行為を行ったとして重加算税の対象になってしまいます。
決してやましい気持ちがなかったとしても、この他人名義の口座を使用し
売上の入金を行う事は余程の理由がない限りはしない方が良いです。
特に副業をされている方は会社に知られたくない等、何らかの理由があると思います。
どうしても必要だという場合には、
例えば妻の口座を使用して取引を行うのであれば
副業の主体を妻にし、妻の確定申告を提出する等、
対応をしっかりして頂く事が重要ではないかなと思います。
逆に経費として他人名義のクレジットカードなどを使用する場合は、
要件をしっかりと満たした場合であれば経費として認められます。
これらの要件など詳しい内容は
「税務調査で、妻(配偶者や家族)名義のクレジットカードで払った経費は認められるか?」
でご紹介していますので、参照してください。
繰り返しとなりますが、
安易に他人名義を使用し取引を行うという事は、結果的に大きな代償として返ってくる可能性もありますので、余程の理由がない限りは避けた方が良いでしょう。
どうしても必要な時は
原則としては事業の取引に関わるものは本人名義のものを使用することですが、中にはどうしてもやむを得ない事情があって他人名義を使用する場合があると思います。
最も大事な事
やむを得ない事情から他人名義を使用して取引を行っている場合、
もっとも大切な事は
「記帳義務」「帳簿など資料の保存義務」をしっかりと守る!!
という事です。
記帳の事や帳簿などの保存期間などについては
「税務調査の電話がきたけど、帳簿がない、つけてない、紛失した、白色申告で適当だ…という方へ」
に詳しくご紹介しておりますので、ご参照ください。
この記帳や帳簿などの資料保存をしっかりとする事は勿論ですが、
その中でも特に事業の主体が自分である事を示す書類をしっかりと保存している事が大切です。
先ほどもお伝えしましたが、
税務署が事業の主体が誰なのかというのを判断する基準は
売上の入金先がどこなのか、という部分です。
売上の入金先が他人名義であった場合、
税務署がまず思う事は、その売上の入金がされている名義の方が事業の主体であると判断するという事です。
しかしながら実際の事業の主体が売上の入金先の名義の方ではなく、自分自身が主体であった場合、自分自身が主体であることを証明する書類が必要となってきます。
ですので、その事業の主体である証拠となる書類はしっかりと保存しておく必要があります。
少しこのままの説明では難しいと思いますので、
ある例を使ってご紹介していきたいと思います。
②事例
<事例>
せどりをしているAさんを例にご紹介していきます。
Aさんはせどりを生業にしている個人事業主です。
AさんはAmazonや楽天等を利用して商売をしています。
ある時、何らかの事情でAさんのAmazonのアカウントが停止なってしまいました。
Aさんのアカウントが使用できなくなり、
とても困ったAさんは友人のBさんにアマゾンでアカウントを作ってもらい、
Bさんのアカウントを使用して商売を継続することにしました。
Bさんのアカウントを使用して得た売上は、
Bさんの銀行口座に入金してもらい、
その後Bさんの口座からAさんの口座へ売上を移してもらう事にしました。
Aさんは、楽天などでのAさんのアカウントでの取引、
そして勿論AmazonのBさんから借りたアカウントでの取引も全部含めて、
Aさんの確定申告に入れて申告していました。
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このような場合、もしAさんに税務調査が行われるとなった場合、
何に気を付ければよいのでしょうか。
まず税務署が着目するのは、
事業の主体となる所、すなわち「売上の入金先はどこか」という部分です。
ですので、Aさん本人のアカウントを使用し、
Aさん本人の名義の口座に売上が入金されているもの
は問題ないでしょう。
ここで問題となるのは「Bさんのアカウントで取引されている」ものになってきます。
「Bさんのアカウント」を使用し、
「Bさんの名義の口座に売上が入金されている」ものがあるといったケースで言えば、
このBさんに税務調査が及ぶ可能性があります。
ただしこのネット上であったとしても、
- 物の売り買いの情報というものが、ある程度Aさん本人の調査内で書類上わかる事
- きちんとした取引形態になっており、
最終的な申告状況が正しくAさんの所に反映されているという事 - これらの事情をしっかりと調査官に説明する事
でれば、税務調査において余程の事がない限り
Bさんに課税されるような事はありません。
また、Bさんという他人名義を使用して取引をしたからと言って、
仮装だとか隠蔽など不正行為をしたというような判断をされること
もありませんのでご安心ください。
何故なら税務職員も、
取引の形態上それはどうしても仕方がない行為であることは、
世の中の常とわかっているからです。
しかしそういう
説明であったり、証拠書類といったものががない場合、
逆に最終的な申告を
Aさん本人がいい加減にやっていたり、間違っていたり(過少で申告していたり)等
していた場合は、注意が必要です。
やはり説明もですが、
何より申告内容や証拠書類といったものを杜撰にしていた場合は、
それらの信憑性がなくなったりするという事もあり、
ひいてはBさんの方に課税に繋がる可能性も出てきます。
ですので、
しっかりと記帳をして正しい申告を行い、
税務調査ではきちんと事情を説明を説明し、
その裏付けとなる書類等の保存をしましょう。
特に、形式上はBさんの売上に見えるけれども、実態はAさん本人の売上であるという事を示す書類や帳簿、原始記録などはしっかりと作成し管理・保存していることが最も大切なことです。
この「実態はAさん本人の売上であるという事を示す書類や帳簿、原始記録」といったものは、
例えばAさんからAmazonへ商品を送った伝票
もしくはお客様へ直接送った伝票など、
Aさんが主体である事を証明する書類や記録の事です。
せどり等ではAさんが主体である事を証明する書類や記録があっても、
アフィリエイトやyoutubeなどで他人名義を使用した場合、
自分自身が主体であることを示すものがない場合もあると思います。
それらの自身が主体であることを示すものがない場合については
「アフィリエイトやyoutubeで、家族や友人(他人名義)の口座を使用した取引と税務調査」
を参照して下さい。
まとめ
最後に、もう一度大切な事をまとめて記載します。
他人名義を使用して取引をした場合、税務調査での危険を回避するため
日頃からしっかりと守って頂きたい事です。
絶対にしてはいけない事
やむを得ない事情から他人名義のものを使用して事業の取引をすることは仕方のない事です。
ですが、絶対にしてはいけない事があります。
それは、他人名義の口座に入金される売上を隠すことです。
これは絶対にしてはいけません。
不正行為はバレます!
この場合重加算税の対象となりますし、
最悪この売上が入金されてた名義の方にも税務調査が及び課税対象となってしまう事がありますので、
やむを得ない事情から他人名義の口座を使用して売上の入金があった場合、
正しく申告を行いその裏付けとなる書類はしっかりと保存しておきましょう。
記帳と資料保存はしっかりと!
どのような場合でもですが、記帳と資料保存は義務ですのでしっかりと行う事が大切です。
ですが、今回のように他人名義を使用する場合は、よりしっかりと行いましょう。
特に自分自身が事業の主体であるという事を示す
書類や帳簿、原始記録といったものは
しっかりと作成し、管理・保存を行いましょう!