アフィリエイトやyoutubeで、家族や友人(他人名義)の口座を使用した取引と税務調査
今回は、前回と同様何らかの事情により妻や家族、友人など
他人名義のものを使用し、その他人名義の口座に売上の入金がある場合
の確定申告や税務調査での注意点をご紹介していきます。
前回の違うのは、自分が主体であるという事を証明する書類や資料、
例えば自分からお客様へ商品を送った時の控え等
これらの事業の主体が自分である事を示すものがない場合の事例をご紹介していきます。
他人名義で事業の取引をおこなっている方で、
事業の主体が自分である事を示す書類や資料がある場合は、
前回ご紹介した
「他人名義の口座で取引をした場合の税務調査での注意点(せどりや副業編)」
を参照してください。
今回は、アフィリエイトやyoutube等をされている方で、自分のアカウントが停止され、
他人名義のアカウントを使用し、又売上の入金が他人名義の口座に入ってくる場合の
確定申告や税務調査で気を付けておく事、事前に対策をしておく必要のある事等をご紹介していきます。
原則、他人名義は使用しない。不正を疑われてしまうので注意!!
原則としては、やはり他人名義のものを使用して取引をしない事です。
余程のやむを得えない事情がない限りは本人名義ものを使用し、取引を行う事が原則です。
事業に関わる取引は銀行口座やクレジット等、何であれ本人名義のもので行いましょう。
特に、売上が入金される銀行口座は注意が必要です。
まず税務署は、事業が誰に帰属するのかという部分に着目します。
要するに、取引の主体が誰なのかという部分を見るという事です。
その取引の主体が誰なのかというのを判定する基準というが
お金の入金先はどこなのか、という部分になります。
ですので、たとえ家族であっても、他人名義の口座を使って取引をしたり、
またその他人名義の口座に売上の入金があるという行為は
客観的に視て、売上を隠蔽しようという意図があると税務署側から思われる危険性があるという事です。
もし、税務署がそのように売上の隠蔽をしたと判断した場合には、
これは仮装隠蔽すなわち不正行為を行ったとして重加算税の対象になってしまいます。
決してやましい気持ちがなかったとしても、この
他人名義の口座を使用し
売上の入金を行う事は余程の理由がない限りはしない方が良いです。
特に副業をされている方は会社に知られたくない等、何らかの理由があると思います。
どうしても必要だという場合には、
例えば妻の口座を使用して取引を行うのであれば
副業の主体を妻にし、妻の確定申告を提出する等、
対応をしっかりして頂く事が重要ではないかと思います。
逆に経費として他人名義のクレジットカードなどを使用する場合は、
要件をしっかりと満たした場合であれば経費として認められます。
これらの要件など詳しい内容は
「税務調査で、妻(配偶者や家族)名義のクレジットカードで払った経費は認められるか?」
でご紹介していますので、参照してください。
繰り返しとなりますが、
安易に他人名義を使用し取引を行うという事は、結果的に大きな代償として返ってくる可能性もありますので、余程の理由がない限りは避けた方が良いでしょう。
どうしても必要な時は
原則としては事業の取引に関わるものは本人名義のものを使用することですが、中にはどうしてもやむを得ない事情があって他人名義を使用する場合があると思います。
最も大事な事
前回同様やむを得ない事情から他人名義を使用して取引を行っている場合、
もっとも大切な事は
「記帳義務」「帳簿など資料の保存義務」をしっかりと守る!!
という事です。
特に今回のケースですと
事業の主体が自分である事を示す書類や資料等がないため、
記帳や帳簿や資料などの保存をしっかりするとともに、
正しい申告を行う事はとても重要になってきます。
他人の名義を使用し、事業の主体を証明するものがない状況だからこそ
他人名義の口座に売上が入金されてはいるけれども、
その実態は自分に帰属する分だという事で、
正しく申告することが最も大切な事です。
記帳の事や帳簿などの保存期間などについては
「税務調査の電話がきたけど、帳簿がない、つけてない、紛失した、白色申告で適当だ…という方へ」
に詳しくご紹介しておりますので、ご参照ください。
もちろん、前回の話と同様に、
もし何かしら少しでもいいので、
自分に帰属するようなものがあれば
必ず残して、しっかりと管理・保管して頂くというのが重要です。
今回も前回と同様説明だけでは、難しい内容と思いますので、
事例を使用し、ご説明していきます。
事例
<事例>
アフィリエイトをしているAさんを例にご紹介していきます。
Aさんはアフィリエイトを生業にしている個人事業主です。
ある時、何らかの事情でAさんが使用していたグーグルアドセンスのアカウントが停止されてしまいました。
Aさんのアカウントが使用できなくなり、とても困ったAさんは友人のBさんに相談し、Bさんの名義で新たなグーグルアドセンスのアカウントを作ってもらいました。
Aさんは、新たに作成したBさんのアカウントを使用して事業を継続することにしました。
そしてBさんのアカウントを使用して得た売上は、Bさんの銀行口座に入金してもらう事にしました。
しかし、Bさんのアカウントを使用して得た売上が、Aさんの事業であるという事を示すものがありません。
Aさんは、グーグルアドセンスのアカウント以外のAさん本人のアカウントでの取引、そしてBさんから借りたグーグルアドセンスのアカウントでの取引も全部含めて、Aさんの確定申告に入れて申告していました。
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このような場合、もしAさんに税務調査が行われるとなった場合、何に気を付ければよいのでしょうか。
まずAさんは正しい申告を行う事が大原則です。
次に、税務署が着目するのは、
事業の主体となる所、すなわち「売上の入金先はどこか」という部分です。
ですので、Aさん本人のアカウントや名義を使用しているものは問題ないでしょう。
ここで問題となるのは「Bさんのアカウントで取引されている」ものになってきます。
「Bさんのアカウント」を使用し、「Bさんの名義の口座に売上が入金されている」ものがあるといったケースで言えば、このBさんに税務調査が及ぶ可能性があります。
前回のせどりの事例と違い、Aさんに帰属することを示すものがないので可能性がとても高くなります。
このようにAさんに帰属することを示すものがない場合には、
例えば、Bさんの口座を使用するにしても、
Bさんが通常使っている通帳ではなく、
新たにBさんに口座を作ってもらう方が良いでしょう。
そのBさんに新たに作ってもらった口座の方に
Bさん名義のアカウントから入っているアフィリエイトの収入だけが入ってくるような形にして、
その通帳やキャッシュカードの管理は
Aさん本人がするという事をしっかりやって頂きたいと思います。
というのも、
銀行のATMでの入出金というのは、100%録画されています。
もし税務調査が行われた場合、
税務署はその口座の出し入れが記録された録画を見る事が出来ます。
その時にBさんから借りた名義の口座での取引を
Aさんが全てちゃんと行っていれば、
Aさん自身に帰属するものであると証明することが出来ます。
このように、客観的に見た場合
Bさんに帰属するもののように見えますが、
経済的な実態はAさんに帰属するものであるという部分も
税務調査ではちゃんと調査されます。
また実際、このようなケースは近年よくある出来事だと思います。
税務署も今の時代の流れはよくわかっています。
ですので、ただBさんの名義を使用したからといって
Aさんのものではないと否定し、Bさんに課税するといった事はありません。
ただ、やはりあくまで収入が入ってくる先はBさんなので、
税務調査では、まずはBさんの課税に向けて動いていきます。
今回のように収入が入ってくる先はBさんで、
実際の事業の実態・経済的な実態はAさんに帰属するものであると主張するのであれば、
やはり裏付けとなる、それ相当のものをしっかり対策をし残す必要があります。
つまり、他人名義の口座を借りるにしても、
- 専用の口座・通帳を使用して取引を行う
- それらの管理は自分でしっかりと行う
- 専用の口座での取引は自分で行う
等、なんらかの形でその事業に関わるものが
自分に帰属するものである事を示す事が出来るよう対策をした方が良いでしょう。
このように他人名義の口座を借りるにしても、
専用の口座・通帳を使用し、自身で管理し、入手金などの手続きや取引も自身で全て行う事は、
その貸した側の方にも後々の事を考えて迷惑がかからないのではないかと思います。
もし、それでもこれらの事が不可能なのであれば、
大前提である、正しい申告をしっかりとする!
これに尽きると言えます。
他人名義の口座やアカウントを借りる場合は契約書を作成する
前回も含め今回のような事例で、
名義を借りるという事を契約書を作成した上で行われて方はとても少ないと思います。
しかし、簡単でも良いので、
アカウントや銀行口座の名義を借りるという旨を記した契約書を作成し
その契約書をしっかりと保管して頂ければ
もし税務調査が入ったとしても、
他人名義ではあるけれども、自身に帰属するものであると証明することができます。
ですので、既に税務調査が入ってからでは駄目ですが、
税務調査がまで来ておらず、今気付いたところであれば
簡易な契約書で結構ですので、
契約書を作成されることをおすすめします。
もしも、税務調査が名義を貸してくれている方へ来たら?
前回と同様に、名義を貸してくれている側の方へ先に税務調査が行く事はあります。
やはり収入の入金場所が名義を貸してくれている方の口座となりますので、
税務署がまずその貸してくれている側の方へ動くことは否めません。
つまり、今回の事例を使うならば、
AさんではなくBさんの方へ税務調査の事前通知が行くという事です。
ただBさんからしてみれば、Bさんはただ名義を貸しているだけで
Bさん自身とは関係のない事でもあります。
ですので、Bさんの方へ税務署より税務調査を行う旨の事前連絡があった場合、Bさんが
「私はAさんに名義を貸しているだけで、私には関係がありません。税務調査に行くならAさんの方に行ってください。」
と言って、Bさんは税務調査を回避できるかと言えばそうではありません。
税務調査は「所得金額の確認」という事です。
つまり、所得金額が正しいかどうかというのを確認するという事になります。
ですので、税務調査の事前通知の段階で
Bさんがいくら自分に関係がないと主張しても
Bさんの所得金額が正しいかどうかを判断することができませんので、
その場ではBさんの主張を認めてもらう事はできません。
Bさんのところに税務調査として事前通知があった訳ですから、
事実確認が取れない以上Bさんが事前通知の段階で主張しても
税務調査の対象をBさんからAさんに変更することはできない訳です。
これらの事より、もしBさんに税務調査の事前通知があった場合は、
AさんもBさんも含めて、担当の税務職員に会って、しっかりと説明をする。
つまりそこはしっかりと二人で協力して税務署に対応する必要があります。
その後、BさんとAさん共に税務調査となるのか、Aさんだけになるのかは、その調査担当者の判断に委ねられることになると思います。
まとめ
最後に、大切な事をまとめて記載します。
他人名義を使用して取引をした場合、税務調査での危険を回避するため
日頃からしっかりと守って頂きたい事です。
大原則として
正しい申告を行う事。
今回のケースは特に重要なことです。
絶対にしてはいけない事
やむを得ない事情から他人名義のものを使用して事業の取引をすることは仕方のない事です。
ですが、絶対にしてはいけない事があります。
それは、他人名義の口座に入金される売上を隠すことです。
これは絶対にしてはいけません。
不正行為はバレます!
この場合重加算税の対象となりますし、最悪この売上が入金されてた名義の方にも税務調査が及び課税対象となってしまう事がありますので、やむを得ない事情から他人名義の口座を使用して売上の入金があった場合、正しく申告を行いその裏付けとなる書類はしっかりと保存しておきましょう。
記帳と資料保存はしっかりと!
どの場合でもですが、記帳と資料保存は義務ですのでしっかりと行う事が大切です。
ですが、他人名義を使用する場合は、よりしっかりと行いましょう。
専用の口座や契約書を作成する等しっかりとした対策を!
前回と違い、今回のケースは他人名義で取引を行う中で、事業を行っている本人に帰属する事を証明できる書類や資料がない場合です。
もちろん、他人名義を使用しながらも、その名義に関わる取引が事業を行っている本人に帰属する事を証明できる書類や資料がある場合でも、以下の対策を行う事はとても有効です。
これらの対策はほとんどの方がされておられないようですが、
税務調査が入った時にとても証拠書類・資料として有効なものです。
自分以外の他人の名義を借りる以上、
貸してくれた方に迷惑がかからないよう事前にしっかりと対策をしておきましょう。
1.専用の口座を作成する
他人名義の口座を使用する際は、
その貸してくれている方の通常の口座を使用するのではなく、
新たに自身の事業専用に口座を作ってもらう事をおすすめします。
またその新たに作った専用口座の通帳やクレジットカードの管理、
入出金等の取引は全て事業主本人が行うようにしましょう。
2.契約書を作成する
他人名義のアカウントや口座を使用して事業を行う場合は、
簡易な形でも良いので、
他人名義を使用する旨を記した契約書を作成し
しっかりと保管しておくことをおすすめします。