接待交際費に家族での旅行や、貰った領収書が入っています。脱税は見つかりますか?

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永江 将典

公認会計士・税理士
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結論から申し上げますと、見つかります。
調査官は不正行為を見つけ出すプロですので、侮ってはいけません。

 

今回は何故見つかるのかというのだけでなく、
個人事業主の経費の扱い、特に交際費に関しても詳しく見ていきたいと思います。

 

①経費か経費でないか

接待交際費

所得税法などにおいては、個人に帰属する支出費用を「家事上の経費」及び「家事上の経費に関連する経費」「業務上の経費」に区分しています。
「家事上の経費」とは専門的な言い方をすると「家事費」と呼ばれています。
そして「家事上の経費に関連する経費」は「家事関連費」と呼ばれています。

 

今回の題にある「家族での旅行」は家事費となりますので、経費として計上することはできません。

 

では、そもそも家事費とはどのようなものなのでしょうか。

家事費とは、先ほども述べたように家事上の経費のことです。すなわち事業に関係のない私用で使った費用のことです。私用で使った費用ですので当然経費に計上することはできません。

 

この家事費にはどのような内容があるかと言いますと、以下ものになります。

 

・自己もしくは家族の生活費     ⇒ 食費、被服費、医療費、娯楽費など
・自己もしくは家族の保険料     ⇒ 生命保険料
・自己もしくは家族の住宅に係るもの ⇒ 地代家賃、水道光熱費、修繕費、
租税公課、火災保険料、損害保険料など
・自己もしくは家族の税金      ⇒ 所得税、住民税、贈与税
また滞納による延滞税や延滞金など

 

つまり、自分自身もしくは家族に係る費用のうち事業に関わらない私生活に必要となるお金が家事費となります。

 

今回のテーマとは少しそれますが、よくある質問の中に「経費になるかどうかがわからない」といったものがあります。

まず「経費」とは、ざっくりというならば「事業に関係のあるものに使ったお金」と言えます。
ですので、本当にざっくりとした言い方ですが、「経費になるかどうか」は「仕事と関りがあるのかどうか」という事になります。

ただし、よくある間違いで「眼鏡」や「スーツ」等は特殊な対象者(例えば芸能人)を除き、家事費となります。
このように個人事業主の場合、経費になるかどうかは視点や考え方によって判断が難しい場合があります。

その中でも、よく税務調査でも争点となるものなのですが、
この「経費となるかどうか判断が難しい」と言われるもの、
もしくは税務調査があった時にに経費として否認されることが多いものが
「家事関連費」にまつわるものです。

つまり、家事費のように完全な私用ではないけれども、完全にすべてを仕事で使っているとは言い難いので経費と計上して良いのかどうか判断が難しいと思われるものが家事関連費と言われるものです。

例えば、自宅ではあるものの一部の部屋を完全に仕事で使用してい場合や、店舗併用住宅の場合の地代家賃、水道光熱費、修繕費、租税公課、火災保険料や、車やパソコンそして携帯電話などで仕事にも私用にも使っているものなど、完全に私用とも仕事用ともわけられないものがこの家事関連費と言われています。

家事関連費に関しては、所得税法施行令 第96条で以下のように定められています。

第九十六条
法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。

一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費

二 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費』

 

話を戻します。

今回の題に関係するものは、この判断が難しいと思われる家事関連費ではありません。
家族での旅行は明らかな家事費となりますので、経費と計上することはできません。

後述しますが、ただ税金を減らしたいからと言って、家事費を経費に計上した場合、調査官にバレます。調査官はただ金額を見ているだけではないからです。

 

②個人事業主の接待交際費の扱いについて

接待交際費

今回の題は明らかな「家族との旅行の費用」といった家事費、もしくは「もらった領収書」といった不正行為の内容なのですが、経費として計上してはいけません。
また経費として計上して紛れされていたとしても調査官は目ざとく見つけていきますのでバレると思っていて頂いた方が良いでしょう。

 

ただ、今回接待交際費という言葉も出ましたので、この場を借りて個人事業主の接待交際費の扱いについてご紹介していきたいと思います。

 

接待交際費という課目についての論点ですが、法人税法において、交際費等とは
租税特別措置法 第61条の4の4で、以下のように定められています。

 

『第一項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、 その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その 他これらに類する行為(以下この項において「接待等」という。)のために支出するも の(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいい、第一項に規定する接 待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用 (専ら当該法 人の法人税法第二条第十 五号 に規定 する役員若しくは従業員又はこれら の親族に対する接待等のために支出するものを除く。第二号において「飲食費」という。) であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。 一 専ら従業員 の慰安のために行われる 運動会、演芸会、旅行等のために通常要す る費用 二 飲食費であつて、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計 算した金額が政令で定める金額以下の費用 三 前二号に掲げる費用のほか政令で定める費用』

 

ここで注意が必要なのは、上記の規定は法人税法で定められているものなので、対象は法人となります。

個人事業主の本税は所得税なので、個人に対する法律としては所得税法が適応されます。
しかしながら、所得税法では交際費に関する定義規定は設けられていません。

 

これは、法人税法のような損金算入制限がないことによるものだと推測されます。ただし交際費としての科目処理の基準としてはこの法人税法での定義で理解しても問題ないと考えられます。

またその交際費自体が必要経費として計上されるのかといった該当性の判断は、所得税法 第37条の第1項の規定に基づいて行う必要があります。

つまり

第三十七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。』

ということです。

 

少しかみ砕いてお話しするならば、

一般に個人事業主が支出する交際費のうち、その支出の目的が取引先との取引を円滑に進めるためにあるものについては、業務との関連性があるのもに限り、あるいは家事費と明確に区分されるもののみが必要経費に該当するものと考えられます。

個人事業主の支出する交際費は幅広く、必要経費への参入の可否についてはしばしば争点となりところですので、明確な判断根拠に基づく慎重な対応が求められます。

 

つまり、何度も繰り返しになりますが、今回の題にある「家族との旅行」は明らかな家事費となりますので、必要経費に該当しないという事です。

 

③なぜ見つかるのか

接待交際費

最後に、今回の題にあるような「家族との旅行」などの家事費、「もらった領収書」などの不正行為が何故バレるのかという事を少しお話していきたいと思います。

 

調査官が見ている視点やどうやってバレるのかについては

「個人の税務調査はどこまで調べる?脱税はどこまでバレてる?」

で、元調査官の視点から、かなり詳しい内容を記載していますので、参考にしてください。

 

詳しい内容は「個人の税務調査はどこまで調べる?脱税はどこまでバレてる?」

に委ねることにして、今回は題に関連した部分について調査官の視点を少しご紹介していきたいと思います。

 

そもそも調査官は不正行為を見つけるセンサーのようなものを搭載しているのでは?と思うぐらい、不正行為や不自然な部分を見つけ出してきます。

 

一つの理由としては、調査官は申告書類や領収書の金額をただ見ているだけではありません。金額が申告書の記載内容と実際の資料があっていたかどうかいった数字的な部分を見ているわけではないのです。

 

ただ数字の確認だけであれば、わざわざ税務署から調査先へ調査官が来る必要はないのです。

税務調査では、数字の確認ではなく、その数字が生じたもと、つまり「原始記録」を知るために調査に赴いていきます。

 

例えば旅行を経費として計上していた場合、領収書の金額を見ているわけではありません。もっともっと細かい部分すなわち「いつ」「どこへ」「誰と」「何人で」等といった部分も調査していきます。

また必要があれば反面調査で、事実確認を取っていきます。

 

つまり、旅行の日程や旅行先、人数、誰と行ったかだけでなく、旅行中の宿泊先や予約した部屋の状況、食事内容や買い物と行ったものの内容も確認し裏付けをとっていきます。また仕事に関連した経費であったという事実確認をとるのに資料が不足している場合は、反面調査として一緒に行ったとされる相手方だけでなく宿泊施設先まで足をのばして調査していきます。そうです、必要であるならば宿泊施設先にまで調査が及ぶことがあるのです。

 

このように安易に家族の旅行といった、家事費すなわち仕事に関係のないプライベートなものを、税金を減らすために経費として使用していたとしてもバレてしまうのです。

また、その金額や頻度の度合によっては間違って紛れてしまったといった判断にならず、私用であるのを知っていて故意に経費として計上したとして、不正行為即ち脱税と見なされることもあるので注意が必要です。

 

またそれ以上にやっかいなものがもらった領収書です。

人や家族からもらった領収書や、白紙の領収書などを実際事業には全く関係のない領収書を経費として使用した場合もまた調査官にバレます!

 

調査官はこのような不正に関してとても勘が鋭く、目ざとく見つけ出してきます。

何度も繰り返しますが、領収書の金額を確定申告書の金額と間違いないかなどといった事をわざわざ調査しに来ているわけではないのです。

 

領収書の金額をみているのではなく、その領収書が発生した原点を調べに来ているのです。

 

ですので、このようなもらった領収書や白紙の領収書を使用した場合、計上した側はバレないだろうと安易に判断してしまったかもしれませんが、調査官側にはなんらかの不自然さを感じ取ることが出来ますので、裏付けをとっていきます。

調査官は不正を見つけるプロなのです!!!決して侮ってはいけません。

 

例えばこちらに領収書があるということは、相手側には売り上げが立っているのが本来の形です、しかしたとえ白紙の領収書をもらったとしても使用してはいけません。もらった白紙の領収書に自分で金額を書いて使用してしまうと、この相手側の売上とあわなくなってくるので、反面調査をされるとすぐにバレます!

 

このように事業に全く関係がないもらった領収書を経費として計上することはそもそも不正行為に当たります。

 

調査官は不正を見つけるプロです。税金を減らしたいという気持ちもわかりますが、安易な考えで不正行為つまり脱税をしてはいけません。

脱税と判断された場合は、調査期間が延びるだけでなく、追徴課税といったペナルティも重くなります。

きちんと法に則った『節税』を心がけましょう!

永江 将典

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