不動産賃貸業(不動産投資)の税務調査のポイント

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永江 将典

公認会計士・税理士
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最近、会社員の方で不動産投資をされている方からの問い合わせが増えています。
そして・・・不動産投資をされる方が増えたからか、不動産賃貸業の税務調査の同行依頼も増えています。

今日は、不動産賃貸業(不動産投資)の税務調査について、ポイントを紹介したいと思います。

不動産賃貸業(不動産投資)の税務調査がきやすいタイミング

個人事業として不動産賃貸業を始めた場合、
税務調査が一番きやすいのは、購入したタイミングです。

ただ、数千万円程度の物件を1件買っただけでは、
確定申告書上で明らかな誤りがわかるケース以外はほとんど税務調査はきません。

1年で複数件購入したり、億を超える物件を購入した場合に
税務調査が入る可能性が高いようです(税務調査が来ているお客様をみていての感覚です)。

確定申告書で明らかに誤りが把握でき、是正にくるパターンとしては・・・

 ・個人の不動産業で減価償却を定率法で計算していた
  (現在は、定額法のみ認められています)
 ・5棟10室基準を満たしていないのに、青色申告65万円控除している
  (満たさない場合は10万円)
 ・5棟10室基準を満たしていないのに、青色専従者給与を払っている
  (満たさない場合は払えない)

上記のようなケースでは、確定申告を見れば誤りにすぐ気づきますので、
税務調査が入ることになります。

この場合は、税金のルールに照らして明らかに間違っているので、
反論のしようがありません。

調査官の指摘にしたがい、修正申告をし、
本来払うべき税金を払うことになります。

不動産賃貸業(投資)の税務調査では何が調べられるのか?

不動産賃貸業で税務調査が入った場合、
チェックされるものはほぼ決まりきっています。

 1)青色事業専従者給与は適切な金額か
 2)旅費や交際費など各種経費にプライベートなものが入っていないか
 3)携帯電話・車の減価償却費・ガソリン代などを経費に計上している割合
   は適切か
 4)修繕費と資本的支出は正しく区別されているか
 5)物件取得時の仲介手数料や固定資産税精算金は、
   土地や建物の価格に含めているか(物件を買った年に全額経費としていないか)
 6)登録免許税や不動産取得税は、経費にしているか
  (土地や建物に含めていないか)

といったことがチェックされます。

不動産賃貸業(不動産投資)で税務調査が来た場合、具体的にどのようなことをツッコまれるのか紹介します。

ここに書かれていることがクリアされていれば、税金を追加で取られることはほとんどありません。

不動産賃貸業の税務調査で必ずチェックされるポイント

1)青色事業専従者給与は適切な金額か

   5棟10室基準をクリアすると、青色事業専従者給与を支払うことができるようになります。

   多くの方が、奥様や家族・親族へ扶養の範囲内で給与を払おうとします。
   年間103万円÷12ヶ月=月85,000円くらい。

   税務調査官も馬鹿ではありませんので、そんなことはお見通しです。
   そこで、税務調査の当日、専従者給与を払っている人はどんな仕事をしているか聞いてきます。

   例えば、その仕事内容を聞き、ひと月の作業時間を考えます。
   月に10時間くらいの作業で85,000円を払っていたとすると、
   時給8,500円になってしまいます。すると、例えばこんなことを主張してきます。
  
   「あなたは、この月10時間の作業を外部の人に頼む場合、時給8,500円で依頼しますか?」

   「・・・払わないですね。」

   「専従者給与が高すぎますね。このくらいが妥当でしょう」

   といった具合に専従者給与の額を減らされてしまいます。
   もっとも仕事内容と支払っている金額が見合っていれば、文句は言われません。

   中には、実は何もしていないけど・・・
   妻が専業主婦をしていて、所得税がかかっていないから、

   妻に不動産賃貸業を手伝ってもらっていることにして、専従者給与を払おう

   という方もいらっしゃいます。
   このようなケースが税務調査で一番指摘を受けやすいパターンですね。

   ですので、家族や親族、配偶者の専従者給与は疑われやすいです。
   しっかりと仕事内容の記録などをとっておくことをオススメします。
   
   例えば、物件の清掃を行っているのであれば、清掃前後の写真や
   作業内容の報告書を残しておけば、ちゃんと仕事をしたぞ!という証拠となり、
   調査官を納得させる材料となります。

その他のチェックポイント

 2)旅費や交際費など各種経費にプライベートなものが入っていないか
 3)携帯電話・車の減価償却費・ガソリン代などを経費に計上している割合
   は適切か
 4)修繕費と資本的支出は正しく区別されているか
 5)物件取得時の仲介手数料や固定資産税精算金は、土地や建物の価格に含めているか
  (物件を買った年に全額経費としていないか)
 6)登録免許税や不動産取得税は、経費にしているか(土地や建物に含めていないか)

2)プライベートな経費についてのチェック

税務調査の目的は、あなたがおこなった確定申告が間違っていないか、
チェックすることです。

そして、誰もがよくやること(やりたくなること)が・・・

「ちょっとくらいプライベートな経費も入れちゃってもいいよね(・∀・)」

という悪魔の声に耳を傾けてしまうことです。

ですので、税務調査の際もそのあたりがチェックされるわけです。

よく聞かれる点としては、飲食関係の出費については、

調査官
「これは誰と打ち合わせをしたものですか?」

と質問されます。
不動産賃貸業で飲食が経費として認めれるケースは、不動産屋さんとの打ち合わせや、
不動産セミナー後の懇親会、不動産賃貸業をしている人(同業者)との打ち合わせで
情報収集を目的としている場合くらいでしょう。

家族や友人と飲食をして、彼らに不動産賃貸業の内容を伝えた、
といっても、認められないことが多いでしょう。

特に・・・
「これは、不動産賃貸業を手伝ってもらっている妻と食事をしながら打ち合わせをした!」

といったような場合。
個人事業主の場合、どうしてもプライベートな出費と実際に不動産賃貸業で使用した経費が
はっきりとどちらのものか区別できないケースがあります。

妻と食事をしながら打ち合わせをした!

とあなたが主張しても、
実際に打ち合わせをしたかどうか検証することはできません(議事録とか残せば別ですが)。

このような場合は、経費として認めません!
という税金のルールがあります。

非常に個人事業主としては不利なルールですが、
これがないと、プライベートなものも無制限に経費に入れられるようになってしまうので、
歯止めをかけるための抑止力としてこの基準ができたのだと思います。

不動産賃貸業の家事按分割合

例えば、会社員をしながら不動産賃貸業を始めた場合で車を保有していたとします。
この場合、車を利用するケースとしては、

 ・会社への通勤
 ・プライベートでの利用
 ・不動産賃貸業に関連して使用

する3パターンがあると思います。

年間で100万円ガソリン代を利用したとします。
このうち、いくらを経費にするか?という経費にする割合を家事按分割合といいます。

100万円のガソリン代を全額経費にしていた場合、
必ず税務調査で減らされます。

例えば・・・
普段は会社勤めで、不動産賃貸業では車を利用できませんよね。

だから、100万円のうち、経費となるのは

100万円÷7×2=28万円

までです!

というようなことを調査官は主張してきます。
要は、平日は仕事してるんだから、不動産賃貸業目的で車を利用するのは
土日だけだよね、という主張です。

まぁ、これでも優しいほうの調査官だと思います。

実際、不動産賃貸業で2/7も車利用している人いませんよね?
会社員の方の場合、不動産は一回購入してしまえば、あとは管理会社にお任せで
ほとんどすることはない、というケースが多いと思います。

ですので、私が調査官だったら、100万円のうち、5万円くらいなら許してやるか、
くらいの感覚です(爆)

しかしながら、2件目・3件目を取得するために積極的に物件を調査にいく大家さんも
いらっしゃいます。

中には、平日だって仕事のあとに物件調査にいかれる方もいます。

このような場合、ガソリン代が経費として認められる割合が2/7ではたまったもんでは
ありません。

そのような場合、ちゃんと2/7以上を経費として使ったことが主張でいるように、
平日でも物件を見に行ったことが主張できるよう、見に行った物件の販売図面と一緒に、
デジカメ等で自分が撮影した物件の写真(日付入り)や、販売図面の裏面に、自分の
感想を書いておきましょう。

このようにして、証拠を残していくことで経費として認めてもらえるよう準備しておきます。

車の減価償却費についても、ガソリン代と同じ割合で経費にしておけば問題ないと思います。
車の車検代やタイヤ交換についても、同じ割合で経費にしても、さほど問題になるケースは
ないと思います。

車以外の携帯電話やインターネット利用料などの経費について

これも考え方はガソリン代と同じです。
実際に使用している割合で経費にするのですが、その割合を証明できる証拠資料を残して
おくことがポイントです。

永江 将典

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