税務調査は拒否できますか?調査が無くなったり、途中で中止となるケースはありますか?

永江 将典

公認会計士・税理士
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税務調査には、大きく分けると「強制調査」と「任意調査」という2種類に分類されます。
一般的に税務調査と言ったり、読んだり、記載したりする場合「任意調査」の事を表しています。
多くの納税者の方が税務調査を受ける場合も又この「任意調査」と言われるものになります。

 

よく聞かれる質問として、「税務調査は拒否する事が出来るのですか?」というものです。

「強制調査」と聞くと、名前からしても拒否できない、逃れようがないという感じが伝わってきます。
しかしながら「任意調査」と聞くと「任意」なので、納税者側の「任意」が無ければ拒否できるんじゃないかと思ってしまうのでしょう。

今回は、税務調査は拒否できるのか?という事についてご説明していきたいと思います。

 

税務調査は拒否できるか

強制調査であれ、任意調査であれ、税務調査と言われるものには受忍義務があります。
国民には、等しく納税の義務、受忍義務がり、税務調査を拒むことはできません

どういうことかといいますと、

まず憲法第三十条により、国民全員に納税の義務が定められています。

憲法第三十条
国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

さらに、税法の規定によって、所得税や法人税、消費税などの納税額の算出などが細かく定められています。これに応じて税務当局は納税者に対して、税務調査に関する質問や調査をする権限、
つまり質問検査権を行使して税務調査を行われます。

それに対し、納税者には納税の義務と同時に、
「税務調査に応じなければならない」という義務があります。

言い換えますと、「質問検査権」をもつ税務調査官の質問や調査を受けなければならない義務があります。これを受忍義務といいます。

実は受忍義務という言葉は、法律用語ではありません。ですので、どの法律を探したとしても、受忍義務といった言葉を見つける事ができません。
では、なぜ受忍義務という言葉で法律が規定していないにも関わらず、受忍義務が生じているのでしょうか。
これは国税通則法の中にある、第十章の罰則の規定によって、
つまり「質問検査権」をもつ税務調査官の質問や調査を受けなければならないという規定から、納税者には受忍義務があるとされているのです。

もう少し詳しく見ていきましょう。
まず、税務当局は「質問検査権」があり、その権限のもと税務調査を行います。
そして、納税者には質問検査権を持つ税務調査官の調査や質問を受けなければならないとされています。

この「納税者には質問検査権を持つ税務調査官の調査や質問を受けなければならない」というのは、
国税通則法第128条から来ています。

第百二十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
二 第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)若しくは第七十四条の四から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

三 第七十四条の二から第七十四条の六までの規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出した者

このように、国税通則法内にある罰則に関しての規定から、
税務調査を拒否したり、嘘をついたいりすれば罰則に抵触するということなのです。

これらを総じて税務調査には受忍義務があるとされているのです。
以上の事より、税務調査を断ることはできません

ちなみに、罰則について規定されている国税通則法第128条内にある、
第74条の2・第74の3条・第74条の4から6までというのは、
調査官のもつ質問検査権についての事です。

具体的に記載しますと、

国税通則法第74条の2には、所得税等に関する調査に係る質問検査権について
国税通則法第74条の3には、相続税等に関する調査等に係る質問検査権について
国税通則法第74条の4には、酒税に関する調査等に係る質問検査権について
国税通則法第74条の5には、たばこ税等に関する調査に係る質問検査権について
国税通則法第74条の6には、航空機燃料税等に関する調査に係る質問検査権について
が定められています。

以下に長いですが、国税通則法第74条の2~6までを記載しておきます。

第七十四条の二 国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、消費税に関する調査(第百三十一条第一項(質問、検査又は領置等)に規定する犯則事件の調査を除く。以下この章において同じ。)を行う場合に限る。)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(税関の当該職員が行う調査にあつては、課税貨物(消費税法第二条第一項第十一号(定義)に規定する課税貨物をいう。第四号イにおいて同じ。)又はその帳簿書類その他の物件とする。)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。

一 所得税に関する調査 次に掲げる者

イ 所得税法の規定による所得税の納税義務がある者若しくは納税義務があると認められる者又は同法第百二十三条第一項(確定損失申告)、第百二十五条第三項(年の中途で死亡した場合の確定申告)若しくは第百二十七条第三項(年の中途で出国をする場合の確定申告)(これらの規定を同法第百六十六条(非居住者に対する準用)において準用する場合を含む。)の規定による申告書を提出した者

ロ 所得税法第二百二十五条第一項(支払調書)に規定する調書、同法第二百二十六条第一項から第三項まで(源泉徴収票)に規定する源泉徴収票又は同法第二百二十七条から第二百二十八条の三の二まで(信託の計算書等)に規定する計算書若しくは調書を提出する義務がある者

ハ イに掲げる者に金銭若しくは物品の給付をする義務があつたと認められる者若しくは当該義務があると認められる者又はイに掲げる者から金銭若しくは物品の給付を受ける権利があつたと認められる者若しくは当該権利があると認められる者

二 法人税又は地方法人税に関する調査 次に掲げる者

イ 法人(法人税法第二条第二十九号の二(定義)に規定する法人課税信託の引受けを行う個人を含む。第四項において同じ。)

ロ イに掲げる者に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡をする義務があると認められる者又は金銭の支払若しくは物品の譲渡を受ける権利があると認められる者

三 消費税に関する調査(次号に掲げるものを除く。) 次に掲げる者

イ 消費税法の規定による消費税の納税義務がある者若しくは納税義務があると認められる者又は同法第四十六条第一項(還付を受けるための申告)の規定による申告書を提出した者

ロ イに掲げる者に金銭の支払若しくは資産の譲渡等(消費税法第二条第一項第八号に規定する資産の譲渡等をいう。以下この条において同じ。)をする義務があると認められる者又はイに掲げる者から金銭の支払若しくは資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者

四 消費税に関する調査(税関の当該職員が行うものに限る。) 次に掲げる者

イ 課税貨物を保税地域から引き取る者

ロ イに掲げる者に金銭の支払若しくは資産の譲渡等をする義務があると認められる者又はイに掲げる者から金銭の支払若しくは資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者

2 分割があつた場合の前項第二号の規定の適用については、分割法人(法人税法第二条第十二号の二に規定する分割法人をいう。次条第三項において同じ。)は前項第二号ロに規定する物品の譲渡をする義務があると認められる者に、分割承継法人(同法第二条第十二号の三に規定する分割承継法人をいう。次条第三項において同じ。)は前項第二号ロに規定する物品の譲渡を受ける権利があると認められる者に、それぞれ含まれるものとする。

3 分割があつた場合の第一項第三号又は第四号の規定の適用については、消費税法第二条第一項第六号に規定する分割法人は第一項第三号ロ又は第四号ロに規定する資産の譲渡等をする義務があると認められる者と、同条第一項第六号の二に規定する分割承継法人は第一項第三号ロ又は第四号ロに規定する資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者と、それぞれみなす。

4 第一項に規定する国税庁等の当該職員のうち、国税局又は税務署の当該職員は、法人税又は地方法人税に関する調査にあつては法人の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員(連結親法人の各連結事業年度の連結所得に対する法人税若しくは連結親法人の地方法人税に関する調査に係る連結子法人又は当該連結子法人に係る同項第二号ロに掲げる者に対する同項の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求にあつては連結親法人の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員及び当該連結子法人の本店又は主たる事務所の所在地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員を、当該調査に係る連結親法人に対する同項の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求にあつては連結子法人の本店又は主たる事務所の所在地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員を、納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に本店、支店、工場、営業所その他これらに準ずるものを有する法人に対する法人税又は地方法人税に関する調査にあつては当該国税局又は税務署の当該職員を、それぞれ含む。)に、消費税に関する調査にあつては消費税法第二条第一項第四号に規定する事業者の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員(納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に住所、居所、本店、支店、事務所、事業所その他これらに準ずるものを有する第一項第三号イに掲げる者に対する消費税に関する調査にあつては、当該国税局又は税務署の当該職員を含む。)に、それぞれ限るものとする。

(当該職員の相続税等に関する調査等に係る質問検査権)

第七十四条の三 国税庁等の当該職員は、相続税若しくは贈与税に関する調査若しくは相続税若しくは贈与税の徴収又は地価税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査又は徴収の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、第一号イに掲げる者の財産若しくは第二号イからハまでに掲げる者の土地等(地価税法第二条第一号(定義)に規定する土地等をいう。以下この条において同じ。)若しくは当該財産若しくは当該土地等に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。

一 相続税若しくは贈与税に関する調査又は相続税若しくは贈与税の徴収 次に掲げる者

イ 相続税法の規定による相続税又は贈与税の納税義務がある者又は納税義務があると認められる者(以下この号及び次項において「納税義務がある者等」という。)

ロ 相続税法第五十九条(調書の提出)に規定する調書を提出した者又はその調書を提出する義務があると認められる者

ハ 納税義務がある者等に対し、債権若しくは債務を有していたと認められる者又は債権若しくは債務を有すると認められる者

ニ 納税義務がある者等が株主若しくは出資者であつたと認められる法人又は株主若しくは出資者であると認められる法人

ホ 納税義務がある者等に対し、財産を譲渡したと認められる者又は財産を譲渡する義務があると認められる者

ヘ 納税義務がある者等から、財産を譲り受けたと認められる者又は財産を譲り受ける権利があると認められる者

ト 納税義務がある者等の財産を保管したと認められる者又はその財産を保管すると認められる者

二 地価税に関する調査 次に掲げる者

イ 地価税法の規定による地価税の納税義務がある者又は納税義務があると認められる者

ロ イに掲げる者に土地等の譲渡(地価税法第二条第二号に規定する借地権等の設定その他当該土地等の使用又は収益をさせる行為を含む。ロにおいて同じ。)をしたと認められる者若しくはイに掲げる者から土地等の譲渡を受けたと認められる者又はこれらの譲渡の代理若しくは媒介をしたと認められる者

ハ イに掲げる者の有する土地等を管理し、又は管理していたと認められる者

2 国税庁等の当該職員は、納税義務がある者等に係る相続税若しくは贈与税に関する調査又は当該相続税若しくは贈与税の徴収について必要があるときは、公証人の作成した公正証書の原本のうち当該納税義務がある者等に関する部分の閲覧を求め、又はその内容について公証人に質問することができる。

3 分割があつた場合の第一項第二号の規定の適用については、分割法人は同号ロに規定する土地等の譲渡をしたと認められる者に、分割承継法人は同号ロに規定する土地等の譲渡を受けたと認められる者に、それぞれ含まれるものとする。

4 第一項に規定する国税庁等の当該職員のうち、国税局又は税務署の当該職員は、地価税に関する調査にあつては、土地等を有する者の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員(納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に住所、居所、本店、支店、事務所、事業所その他これらに準ずるものを有する同項第二号イに掲げる者に対する地価税に関する調査にあつては、当該国税局又は税務署の当該職員を含む。)に限るものとする。

(当該職員の酒税に関する調査等に係る質問検査権)

第七十四条の四 国税庁等又は税関の当該職員(以下第四項までにおいて「当該職員」という。)は、酒税に関する調査について必要があるときは、酒類製造者等(酒類製造者(酒税法(昭和二十八年法律第六号)第七条第一項(酒類の製造免許)に規定する酒類製造者をいう。以下この条において同じ。)、酒母(同法第三条第二十四号(その他の用語の定義)に規定する酒母をいう。以下この条において同じ。)若しくはもろみ(同法第三条第二十五号に規定するもろみをいう。以下この条において同じ。)の製造者、酒類(同法第二条第一項(酒類の定義及び種類)に規定する酒類をいう。以下この条において同じ。)の販売業者又は特例輸入者(同法第三十条の六第三項(納期限の延長)に規定する特例輸入者をいう。第四号において同じ。)をいう。第三項において同じ。)に対して質問し、これらの者について次に掲げる物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。

一 酒類製造者が所持する酒類、酒母、もろみ又は酒類の製造の際生じた副産物

二 酒母の製造者が所持する酒母

三 もろみの製造者が所持する酒母又はもろみ

四 酒類の販売業者又は特例輸入者が所持する酒類

五 酒類、酒母若しくはもろみの製造、貯蔵若しくは販売又は酒類の保税地域からの引取りに関する一切の帳簿書類

六 酒類、酒母又はもろみの製造、貯蔵又は販売上必要な建築物、機械、器具、容器又は原料その他の物件

2 当該職員は、前項第一号から第四号までに掲げる物件又はその原料を検査するため必要があるときは、これらの物件又はその原料について、必要最少限度の分量の見本を採取することができる。

3 当該職員は、酒類製造者等に原料を譲渡する義務があると認められる者その他自己の事業に関し酒類製造者等と取引があると認められる者に対して質問し、これらの者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。

4 当該職員は、酒税の徴収上必要があると認めるときは、酒類製造者又は酒税法第十条第二号(製造免許等の要件)に規定する酒類販売業者の組織する団体(当該団体をもつて組織する団体を含む。)に対してその団体員の酒類の製造若しくは販売に関し参考となるべき事項を質問し、当該団体の帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。

5 国税庁等の当該職員は、検査のため必要があると認めるときは、酒類製造者若しくは酒母若しくはもろみの製造者の製造場にある酒類、酒母若しくはもろみの移動を禁止し、又は取締り上必要があると認めるときは、酒類製造者の製造場にある次に掲げる物件に封を施すことができる。ただし、第二号の物件について封を施すことができる箇所は、政令で定める。

一 酒類の原料(原料用酒類を含む。)の容器

二 使用中の蒸留機(配管装置を含む。)及び酒類の輸送管(流量計を含む。)

三 酒類の製造又は貯蔵に使用する機械、器具又は容器で使用を休止しているもの

(当該職員のたばこ税等に関する調査に係る質問検査権)

第七十四条の五 国税庁等又は税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、印紙税に関する調査を行う場合を除く。)は、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税、石油石炭税、国際観光旅客税又は印紙税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める行為をすることができる。

一 たばこ税に関する調査 次に掲げる行為

イ たばこ税法(昭和五十九年法律第七十二号)第二十五条(記帳義務)に規定する者に対して質問し、これらの者の業務に関する製造たばこ(同法第三条(課税物件)に規定する製造たばこをいう。以下この号及び第七十四条の十二第二項(当該職員の団体に対する諮問及び官公署等への協力要請)において同じ。)若しくは帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

ロ 製造たばこを保税地域から引き取る者に対して質問し、又はその引き取る製造たばこを検査すること。

ハ イに規定する者の業務に関する製造たばこ又はロに規定する製造たばこについて必要最少限度の分量の見本を採取すること。

ニ イ又はロに規定する者に原料を譲渡する義務があると認められる者その他自己の事業に関しイ又はロに規定する者と取引があると認められる者に対して質問し、これらの者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

二 揮発油税又は地方揮発油税に関する調査 次に掲げる行為

イ 揮発油税法(昭和三十二年法律第五十五号)第二十四条(記帳義務)に規定する者に対して質問し、これらの者の業務に関する揮発油(同法第二条第一項(定義)に規定する揮発油(同法第六条(揮発油等とみなす場合)の規定により揮発油とみなされる物を含む。)をいう。以下この号及び第七十四条の十二第三項において同じ。)若しくは帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

ロ 揮発油を保税地域から引き取る者に対して質問し、又はその引き取る揮発油を検査すること。

ハ イに規定する者の業務に関する揮発油又はロに規定する揮発油について必要最少限度の分量の見本を採取すること。

ニ イ又はロに規定する者に原料を譲渡する義務があると認められる者その他自己の事業に関しイ又はロに規定する者と取引があると認められる者に対して質問し、これらの者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

三 石油ガス税に関する調査 次に掲げる行為

イ 石油ガス税法(昭和四十年法律第百五十六号)第二十四条(記帳義務)に規定する者に対して質問し、これらの者の業務に関する石油ガス(同法第二条第一号(定義)に規定する石油ガスをいう。以下この号及び第七十四条の十二第四項において同じ。)、石油ガスの容器若しくは帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

ロ 課税石油ガス(石油ガス税法第三条(課税物件)に規定する課税石油ガスをいう。以下この号において同じ。)を保税地域から引き取る者に対して質問し、又はその引き取る課税石油ガス及び自動車用の石油ガス容器(同法第二条第三号に規定する自動車用の石油ガス容器をいう。)を検査すること。

ハ イに規定する者の業務に関する石油ガス又はロに規定する課税石油ガスについて必要最少限度の分量の見本を採取すること。

ニ イ又はロに規定する者に石油ガスを譲渡する義務があると認められる者その他自己の事業に関しイ又はロに規定する者と取引があると認められる者に対して質問し、これらの者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

四 石油石炭税に関する調査 次に掲げる行為

イ 石油石炭税法第二十一条(記帳義務)に規定する者に対して質問し、これらの者の業務に関する原油等(同法第四条第二項(納税義務者)に規定する原油等をいう。以下この号及び第七十四条の十二第五項において同じ。)若しくは帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

ロ 原油等を保税地域から引き取る者(石油石炭税法第十五条第一項(引取りに係る原油等についての課税標準及び税額の申告等の特例)の承認を受けている者を除く。)に対して質問し、又はその引き取る原油等を検査すること。

ハ イに規定する者の業務に関する原油等又はロに規定する原油等について必要最少限度の分量の見本を採取すること。

ニ イ又はロに規定する者に原油等を譲渡する義務があると認められる者その他自己の事業に関しイ又はロに規定する者と取引があると認められる者に対して質問し、これらの者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

五 国際観光旅客税に関する調査 次に掲げる行為

イ 次に掲げる者に対して質問し、その者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

(1) 国際観光旅客税法の規定による国際観光旅客税の納税義務がある者又は納税義務があると認められる者

(2) 国際観光旅客税法第十六条第一項(国内事業者による特別徴収等)又は第十七条第一項(国外事業者による特別徴収等)の規定により国際観光旅客税を徴収して納付する義務がある者又はその義務があると認められる者

ロ イ(2)に掲げる者の委託を受けて運賃の領収を行う者その他自己の事業に関しイに規定する者と取引があると認められる者に対して質問し、これらの者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

六 印紙税に関する調査 次に掲げる行為

イ 印紙税法の規定による印紙税の納税義務がある者若しくは納税義務があると認められる者に対して質問し、これらの者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

ロ 課税文書(印紙税法第三条第一項(納税義務者)に規定する課税文書をいう。ロにおいて同じ。)の交付を受けた者若しくは課税文書の交付を受けたと認められる者に対して質問し、当該課税文書を検査し、又は当該課税文書(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めること。

ハ 印紙税法第十条第一項(印紙税納付計器の使用による納付の特例)に規定する印紙税納付計器の販売業者若しくは同項に規定する納付印の製造業者若しくは販売業者に対して質問し、これらの者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めること。

(当該職員の航空機燃料税等に関する調査に係る質問検査権)

第七十四条の六 国税庁等の当該職員は、航空機燃料税又は電源開発促進税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その帳簿書類その他の物件(第一号ロ又は第二号ロに掲げる者に対する調査にあつては、その事業に関する帳簿書類その他の物件に限る。)を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。

一 航空機燃料税に関する調査 次に掲げる者

イ 航空機の所有者等(航空機燃料税法(昭和四十七年法律第七号)第十四条第一項(課税標準及び税額の申告)に規定する航空機の所有者等をいう。次項において同じ。)

ロ イに掲げる者に対し航空機燃料(航空機燃料税法第二条第二号(定義)に規定する航空機燃料をいう。ロ及び次項において同じ。)を譲渡する義務があると認められる者(その者の委託を受けて航空機燃料の貯蔵、運搬又は積込みを行う者を含む。)その他自己の事業に関しイに掲げる者と取引があると認められる者

二 電源開発促進税に関する調査 次に掲げる者

イ 一般送配電事業者(電源開発促進税法(昭和四十九年法律第七十九号)第二条第二号(定義)に規定する一般送配電事業者をいう。次項において同じ。)

ロ イに掲げる者に対し電気を供給したと認められる者その他自己の事業に関しイに掲げる者と取引があると認められる者

2 前項に規定する国税庁等の当該職員のうち、国税局又は税務署の当該職員は、航空機燃料税に関する調査にあつては航空機の所有者等の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員(納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に、住所、居所、事務所、事業所、航空機燃料の保管場所その他これらに準ずるものを有する航空機の所有者等に対する航空機燃料税に関する調査にあつては、当該国税局又は税務署の当該職員を含む。)に、電源開発促進税に関する調査にあつては一般送配電事業者の納税地の所轄国税局又は所轄税務署の当該職員(納税地の所轄国税局又は所轄税務署以外の国税局又は税務署の所轄区域内に、営業所、事務所その他の事業場又は電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第十八号(定義)に規定する電気工作物を有する一般送配電事業者に対する電源開発促進税に関する調査にあつては、当該国税局又は税務署の当該職員を含む。)に、それぞれ限るものとする

 

まとめますと、
税務調査を受けるとなると、精神的にも経済的にもダメージを受けがちですが、
それでも税務調査を拒否することはできないのです。

それは「質問検査権」に基づく適法な税務調査において、正当な理由もなく拒否した場合や調査官の質問に対して虚偽の回答をした場合には、「検査拒否妨害罪」や「質問不答弁罪」、「不実記載提示罪」などの罰則が科せられ、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるからです。
また時として、個人事業主の場合ですと、調査を拒否し続けた場合には、
帳簿を保存していないとみなされ、青色申告の取り消しなどの厳しい処分が下される場合もあります。

以上のことにより、税務調査は基本的に断ることができません

任意調査の「任意」とは?

税務調査は受忍義務がある為、税務調査を拒否できないということはわかりました。

では、任意調査の「任意」とは何なのでしょうか

 

まず「任意」という言葉は「その人の意思に任せる事」という意味があります。

任意調査には、この「任意」とついている事から、
「納税者側の任意が得られなければ、
税務調査を拒否したり、
税務調査そのものを受けなくてもいいのでは?」

と思われてしまっているのではないでしょうか。

任意調査の「任意」とは、
「税務調査自体を行うかどうか」について納税者の任意を問うて行うという事ではありません。
受忍義務がありますから、当然その点ではないのです。

 

では、任意調査の「任意」とはなんなのでしょうか?

これは、税務調査中に帳簿や資料・書類、
時にはパソコンのデータや引き出しの中、手帳、レジの中等を調べる事がありますが、
任意調査の場合では、それらを調べる際に調査官が勝手に触って調べることはできません
任意調査と言われる税務調査の場合、
調査官が何かを見たり手に取ったり、調べたりとする際は
必ず納税者側の任意を問うて、納税者の許可を得ないと調べる事が出来ないのです。

具体例を挙げますと、
「〇〇のデータをみたいのですが、パソコン内の××のデータを開けてもらってもいいですか?」とか
「▲▲について調べたいので、この帳簿を開いてもらってもいいですか?」とか
「レジの中を見たいので開けてもらえますか?」と、
必ず納税者側の許可を取って、実際の帳簿や書類・資料、その他を調べていくという事です。

 

ただし、基本的には調査官は「質問検査権」の行使のもと調査を行っているので、
調査官の「〇〇を見てもいいですか?」はほぼほぼ拒否することはできません

しかし正当な理由や調査官の言い分に納得が出来ない場合は、
強制調査ではないので、任意調査の場合、納税者側は質問をしたり反論することが出来ます

例えば、
何故その書類を見る必要があるのかと思った時は
具体的にどういう事か尋ねる事も可能ですし、
既にある書類で調査官の質問の答えが得られるのであれば
「既に提出しているこちらの書類に全て記載があります」と言って、
新たな書類の提出の必要性がないという事を主張する事ができます。

 

このように任意調査では、あくまで税務調査そのものを拒否することはできませんが、

調査中のやり取りにおいて、
また帳簿や書類・資料等において調査官が見る・手に取るといった事は
必ず納税者側の許可を取ってからでないと出来ないということになっています。

ですので「任意」調査と呼ばれているのです。

 

つまり受忍義務があるため、税務調査そのものを拒否する事が出来ないのにも関わらず、
何故「任意」調査と呼ばれているのかといいますと、
調査中のやり取り、帳簿や書類・資料等は
調査官が独断で勝手に見たり手に取ったりすることが出来ず、
何かを調べたいという時には
必ず納税者側の任意すなわち納税者側の意思を確認し
許可を得てから調査を行うことになっているから
です。

 

中止や税務調査そのものが無くなるケース

受忍義務がある為、税務調査そのものを納税者側が拒否する事は基本的にはできません。
しかしながら、稀に税務調査そのものが無くなったり、中止されるケースも中にはあります。

この税務調査そのものが無くなったり、中止されるというケースは、
余程の理由がない限りは、ほぼあり得ないことではありますが、稀にありますので、ご紹介します。

天災が起こった時

大震災等、大きな天災、災害が起こった場合、
税務調査そのものをするといった場合ではありませんので、
当然税務調査そのものが無くなったり、中止になったりします。

行政的判断で無くなる若しくは中止になるケース

天災が起こったと同様、
税務調査をしている場合ではないという行政的判断が下された場合
税務調査が無くなる若しくは中止になる場合があります。

 

これは、例えば

  • 税務調査を受けるご本人が大きな病気を患ってしまい入院する必要が出た場合
  • ご本人が事故に巻き込まれてしまった場合
  • ご身内にご不幸が生じた場合

等、が挙げられます。

このように「社会的にどうみても、税務調査している場合ではないだろう。」という場合には、
行政的判断から税務調査そのものが無くなったり、税務調査の途中でも中止という事になります。

 

ちなみに税務調査の途中の場合は、「税務調査を中止します」という言い方は基本的にしません
たいていの場合、「一旦ここで延期します」という言い方をします。

つまり、「中止」とは言わず「延期」という言葉を使います

また「延期します」とはいうものの、いつまで延期していつから再開するのかといった事は明言される事はありません。

何故なら、いつから再開するか等を言ってしまうと、その再開すると言った日にちまで、
もし何かあっても税務署側が手だし出来なくなってしまうからです。

ですので、「一端はここで延期します」と伝え、再開については明確な期日は伝えず、
例えばご病気等ですと「体調のご都合等を考慮しながら、またご連絡させて頂きます」
というのが一般的です。

その後、実際税務調査が再開されるのかどうか、そのままフェードアウトになるかどうかは、それぞれのケースによって変わってきます。

拒否は出来ないが変更できること

最後に、税務調査そのものを拒否する事は出来ませんが、
任意調査の場合、納税者側が変更する事が出来るものがありますので
ご紹介します。

納税者側にも変更できるもの、
それは税務調査の開始の日程です。

任意調査の場合、現状を調べたい・不正を隠される恐れがあるなど
何らかしらの理由がある場合を除き、
大抵の場合は事前に税務署から電話等ので連絡が来ます

 

この事前通知については、国税通則法第74条の9に、
また事前通知を要しない場合については国税通則法第74条の10に
規定がなされています。

 

(納税義務者に対する調査の事前通知等)
第七十四条の九 税務署長等(国税庁長官、国税局長若しくは税務署長又は税関長をいう。以下第七十四条の十一(調査の終了の際の手続)までにおいて同じ。)は、国税庁等又は税関の当該職員(以下同条までにおいて「当該職員」という。)に納税義務者に対し実地の調査(税関の当該職員が行う調査にあつては、消費税等の課税物件の保税地域からの引取り後に行うもの又は国際観光旅客税について行うものに限る。以下同条までにおいて同じ。)において第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。)に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。

一 質問検査等を行う実地の調査(以下この条において単に「調査」という。)を開始する日時

二 調査を行う場所

三 調査の目的

四 調査の対象となる税目

五 調査の対象となる期間

六 調査の対象となる帳簿書類その他の物件

七 その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

2 税務署長等は、前項の規定による通知を受けた納税義務者から合理的な理由を付して同項第一号又は第二号に掲げる事項について変更するよう求めがあつた場合には、当該事項について協議するよう努めるものとする。

3 この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 納税義務者 第七十四条の二第一項第一号イ、第二号イ、第三号イ及び第四号イ並びに第七十四条の三第一項第一号イ及び第二号イに掲げる者、第七十四条の四第一項並びに第七十四条の五第一号イ及びロ、第二号イ及びロ、第三号イ及びロ、第四号イ及びロ、第五号イ並びに第六号イの規定により当該職員による質問検査等の対象となることとなる者並びに第七十四条の六第一項第一号イ及び第二号イに掲げる者

二 税務代理人 税理士法第三十条(税務代理の権限の明示)(同法第四十八条の十六(税理士の権利及び義務等に関する規定の準用)において準用する場合を含む。)の書面を提出している税理士若しくは同法第四十八条の二(設立)に規定する税理士法人又は同法第五十一条第一項(税理士業務を行う弁護士等)の規定による通知をした弁護士若しくは同条第三項の規定による通知をした弁護士法

4 第一項の規定は、当該職員が、当該調査により当該調査に係る同項第三号から第六号までに掲げる事項以外の事項について非違が疑われることとなつた場合において、当該事項に関し質問検査等を行うことを妨げるものではない。この場合において、同項の規定は、当該事項に関する質問検査等については、適用しない。

5 納税義務者について税務代理人がある場合において、当該納税義務者の同意がある場合として財務省令で定める場合に該当するときは、当該納税義務者への第一項の規定による通知は、当該税務代理人に対してすれば足りる。

6 納税義務者について税務代理人が数人ある場合において、当該納税義務者がこれらの税務代理人のうちから代表する税務代理人を定めた場合として財務省令で定める場合に該当するときは、これらの税務代理人への第一項の規定による通知は、当該代表する税務代理人に対してすれば足りる。

 

(事前通知を要しない場合)
第七十四条の十 前条第一項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第三項第一号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第一項の規定による通知を要しない。

 

この税務署から電話等で事前通知がなされた場合、税務調査を開始する日時が伝えられます。

 

税務調査そのものを拒否する事はできませんが、
この税務調査を開始する日時については、正当な理由があれば変更する事ができます

正当な理由とは、「忙しいから」、「面倒だから」といったことではありません。
これらの理由で税務調査の日程の変更を願い出たとしても税務署側からの許可を得る事はできません。

正当な理由とは、
例えば、「顧問の税理士に立ち会いを依頼しているんだけれども顧問税理士の日程とあわない」とか「重要な取引先との契約の約束をしているので、日にちを変えて欲しい」等、事業に関わる重要な案件がある場合等です。

 

このように正当な理由があって日にちの変更を願い出た場合は、日にちを大幅に変更する事は出来ませんが、税務署側と日にちの交渉をする事は可能です。

永江 将典

公認会計士・税理士
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