廃業・倒産・破産後の帳簿書類の保存と税務調査

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永江 将典

公認会計士・税理士
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こんにちは。税務調査に詳しい税理士事務所です。

個人・法人問わず、事業を運営されている方で、
事業を廃止した後の帳簿や領収書とかってどうするんだろう?
と疑問に思われている方もいるかと思います。

今日はそういった疑問を、廃業・倒産・破産後の税務調査という観点から
お話ししたいと思います。

個人・法人共通して言えること

倒産後の税務調査・帳簿

まず、税務調査は、廃業・倒産した後であっても実施されます。
以前、税務調査のお問い合わせをいただいた方が、
「廃業したので、もういいのかとおもって領収書とか捨ててしまいました!」
「どうしたらいいですか?」
というものがありました。
たとえ事業を廃業したとしても、

【帳簿と取引等に関して作成又は受領した書類】

は申告後、一定年間(個人の場合最大7年、法人の場合最大10年)の保管が必要です。
国税庁のホームページ↓↓↓にもしっかりと書いてあり、倒産・廃業・破産した場合は
捨てていい、なんてどこにも&一言も書かれていません。

国税庁の根拠ページ(個人)はこちら(クリック)
国税庁の根拠ページ(法人)はこちら(クリック)

国税庁のホームぺージに帳簿とは何か、
取引等に関して作成又は受領した書類とは何かって
書いてありますが、平たく言いますと、

帳簿は、平成31年3月15日に、Aさんに運搬業務を依頼し、20,000円を現金で支払ったというように、
取引の内容を記載したノートのようなものです。
忘れがちなのは、何を依頼したということも明確にすべきでして、
ここでは「運搬業務」という記載が必要だということですね。

取引等に関して作成又は受領した書類は、
上記の例でいうと、Aさんから事業主様宛の
平成31年3月15日付けで、現金で20,000円を
受領しましたと記載されている領収書が想定されますね。
ここでも忘れがちなのですが、領収書には「但し書き」という
欄があります。
ここにはどのような目的で現金等を受領したかを記載することになっています。
そうですね、今回のケースでは運搬業務の依頼ということでしたので、
「但し、平成31年3月15日の運搬業務料として」というように記載することになります。
こういった事項を記載した領収書を必ず入手するようにしてください。

もし捨てていいなら・・・
5年ごとに会社を作っては潰し、作っては潰すことで、
税務調査がくる前にさんざん脱税しておいて、わざと廃業して証拠隠滅できてしまいますね。

そんなわけで、廃業・倒産なんて構わず、怪しいと思えば税務調査はやってきます。

そして、もし領収書などを捨ててしまっていた場合どうなるかというと。
そもそも税務調査が来たということは、何か調査官にとっては怪しいな?
と思うポイントがあるから来たわけです。

帳簿や領収書などの書類がない状態で税務調査にあたってしまうと、
この確定申告書の数値は、どうやって算定しましたか?って聞かれたときに、
回答に困ってしまいますよね。

事実をうやむやにするために、保管しなかったんですよね?

とか

税金を払いたくないから、破棄したんですよね?

とか言われたとき、どうやって答えますか?

無いものは無いんだから、しょうがない。好きにしてくれ!
って開き直る方もいるのでしょうが、
しかし、それはそれでまずいことになりますよね。

要するに、事業を廃業しても、帳簿とか領収書とかは保存しておかないと
いけないということです。
保存しておかないと、大変なことになる可能性があるってことは覚えておいてください。

個人事業主について

倒産後の税務調査・帳簿

それでは個人の場合の帳簿の保存期間ですが、最大7年ということは、
保存期間が7年じゃないものがあるってことなのですね。
そのとおりです。5年保存のものもあります。

実は、この5年か7年かという区別が非常にややこしいです。
まず、青色申告をされているか白色申告をされているかで話がかわりますし、
帳簿の中でも収入や支出に関連するものとそうでないもので扱いが変わったりします。

ですので、これは5年だから捨てよう、これは7年だから保存しておこうと区別するより、
全て7年間保存するのが良いと思います。

従いまして、廃業した後でも、7年間帳簿書類は保存するようにしましょう。

あと、事業主様がお亡くなりになってしまい、それをきっかけに廃業するというケースがありうると思います。
その場合、相続人の方がお亡くなりになられた事業主様の代わりに確定申告が必要となりますし(準確定申告と言います)、
相続の確定申告も必要となりますね。その場合でも、事業主様が保存していた帳簿書類は当然必要となります。
事業が廃業となるからといって破棄しないように注意してください。

法人について

倒産後の税務調査・帳簿

それでは法人の場合の帳簿の保存期間ですが、最大10年ということは、
10年より短い期間でも良いものがあるってことなんですよね。

結論からいいますと法人の場合、7年だったり、9年だったり10年だったりします。
間違いないのは最低でも7年間は保存が必要ですので7年間は絶対に
保存しておいてください。
考えるのが面倒になってきている方は、10年保存しておいてください。
その方が間違いないです。

では、10年保存が必要とされている状況ってどんなんでしょうね。
それは、青色申告をしている法人で欠損金が発生している会社です。

欠損金って簡単に言うと、損した分(赤字)ってことで、将来の儲け(黒字)と相殺して将来の税金を安くできるものってことです。
この欠損金を翌期以降に繰り越すってことで、繰越欠損金だなんて言ったりします。

平成30年4月1日以後に開始する欠損金の生ずる事業年度においては、帳簿書類の保存期間が10年間に延長されています。

とあり、3月決算の会社ですと、平成30年4月1日~平成31年3月31日の事業年度に関しては、
欠損金が生じていると、帳簿書類を10年間保存しないといけないんですね。

では、なぜ10年なのでしょうか。
書類だけで部屋が狭くなっちゃいますよね。
でも、やはり意味があるから年数の定めがあるんですよね。

その理由は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度においては、欠損金が10年間使えるからなんです。
ちなみに、以前はどうだったかというと、繰越欠損金は9年間しか使えなかったんですね(昔は5年とか7年という時代もありましたが・・さすがに割愛します)。
ということは、繰越欠損金が9年間しか使えない事業年度は9年間保管しておけばいいか?というと、
ズバリそうなんです。

欠損金を儲け(課税所得だなんて言ったりします)と相殺してもいいかを、後日検証できるようにするために
欠損金を繰り越すことができる期間に合わせて、保存期間を定めているんですね。

なるほどーって思ってくださると、私もうれしいです!

ちなみに、7年ってなんだろー?ってことですが、
これは、税務調査で追加で税金が取れるのが、最大7年分だからというのが一つの理由です。

税務調査って、過去3年間とか、過去5年間じゃないのー?って思われると思うのですが、
確かに、通常3年間だったり5年間だったりします。
しかし、脱税しているとみられる場合(偽りその他不正の行為といいます)は、
過去7年間にわたって調査されてしまうのですね。
そういった場合に備えて7年間保存しておいてください、となる訳です。

脱税している可能性ありきで7年間保存しておいてくださいというのは、ちょっと抵抗あるかもしれませんが、
脱税していない方は5年でいいです、脱税している可能性がある方は7年お願いしますっていうのも、
それはそれで変ですもんね。

あと、話がちょっと変わって、

会社がなくなったとしても、納税義務は残るよ、という根拠が
法人税法基本通達1-1-7に書かれているので、紹介します。

法人が清算結了の登記をした場合においても、その清算の結了は実質的に判定すべきものであるから、当該法人は、各事業年度の所得に対する法人税を納める義務を履行するまではなお存続するものとする。

なんだか、むつかしくかかれていますが、要約すれば、
会社がなくなったあとでも、法人税を全部払うまでは納税義務はありますよ、
という意味です。

法人税が税務調査の結果、追加で発生した場合には
当然会社がなくなったあとでも納税義務があるよ、という根拠はここです。

会社は解散し清算が結了すれば、払うべき法人がなくなってしまう訳ですから、
税金も払う必要がないのでは?

というのはある意味正しいのですが、それは正しく申告しているという前提なんですね。

 

以上、税務調査に詳しい税理士事務所がお届けしました。

永江 将典

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