ネットジャパンがタックスヘイブンを利用して脱税!?租税回避行為として追徴課税15億円

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永江 将典

公認会計士・税理士
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ネットジャパンがタックスヘイブンを利用した脱税・申告漏れを解説します

朝日新聞DIGITALで、大手貴金属商社「ネットジャパン」が66億円の申告漏れを指摘され、ペナルティとしての過少申告加算税などを含め
約25億円となったとニュースになっていました。

何が起こっていたのか?解説したいと思います。

英領バージン諸島にある会社を使った節税対策

タックスヘイブン

英領バージン諸島は、キューバから700Kmくらいのカリブ海の西インド諸島に浮かぶ島です。
英領バージン諸島は、人が住む16の島と小さな無人島が50ほどあります。

主な島は、トラトラ島、ヴァージン・ゴルダ島、アネガダ島、ヨスト・ヴァン・ダイク島、ノーマン島などです。

タックスヘイブンって何?

タックスヘイブンは、所得税や法人税などが著しく安い、もしくは完全に免税の国や地域のことです。
税率の低い国の中には、ドバイやアンギラ、サモアなど0%なんて国もあります。
日本にいて、税金高い・・・と苦しんでいる人にとったら、意味不明な税率です。

このような税金が安い国や地域を利用して節税しようとし、国税局から節税として認められない!やりすぎだ!!
と指摘されたのが今回のケースですね。

タックスヘイブンを使った節税対策を国は潰したい!!

このような、日本より税金が低い国があるので、
お金持ちはタックスヘイブンへお金を逃がそうとします。

アメリカやシンガポール、ドバイに移住するお金持ちたちは今でも増えています。
うちのお客さんだった方でも2名、シンガポールとドバイへ移住されました。

でも、そうすると日本としては税金が減ってしまいますよね。
だから、あの手この手で税金の法律を見直して、税金が取れるようにしよう!
と努力しています。

で、できあがったのがタックスヘイブン対策税制と呼ばれるものです。

ネットジャパンの株式売却益節税スキーム

タックスヘイブン

朝日新聞デジタルにのっていた申告漏れの構図を見てみましょう。
以下は、朝日新聞デジタルより転載させていただいた画像です。

株の譲渡が2パターンで行われているのがわかりますね。
A社へ譲渡したパターンとB社へ譲渡したパターンです。

まずは、A社へ譲渡したパターン。何をしようとしていたのか見てみましょう。

ネットジャパン株のA社への譲渡

ネットジャパンの株が、英領バージン諸島のA社へ売却されています。
そして、その後、どこの国かはわかりませんがX社に売却されていますね。

例えば、こんなことをするとタックスヘイブンである英領バージン諸島の会社を利用して日本の税金を安くできます。
(極端な例で書いてます。低額譲渡は無視してます。)

ネットジャパンの株の取得価額が1000円だったとします。
しかし、会社が成長し現在の株価が5000円になっていたとします。
5000円で売ると、4000円に対して日本の税金がかかってしまいます。

そこで、A社に1000円で売却します。
これだと、1000円の株を1000円で売却しただけなので税金は発生しませ。

その後、X社に売却してますね。
X社に本当の価格5000円で売ったとします。

すると、A社は1000円で買った株を5000円で売ったことになります。
A社が4000円の利益に対して、税金が日本より安いバージン諸島の税率で税金を払います。

すると、A社を使わず、ネットジャパンからX社に売却した場合よりも、
日本とバージン諸島の税率差分だけ税金が減ります。

タックスヘイブン税制とは何か?

タックスヘイブン

しかし、こんな取引が認められてしまっては、お金持ちはバージン諸島を使ってやりたい放題です。
そこで、国がタックスヘイブン税制という新しい税金のルールを作りました。

タックスヘイブン国にある外国関係会社が株を譲渡して得た利益は合算課税しますよ、というルールです。

続きは後程加筆します。

タックスへイブン対策税制は、タックスへイブン(軽課税国)を利用して租税回避を図る行為を排除する制度です。本税制では現在、経済実態がない、いわゆる受動的所得は合算対象とする一方で、実態のある事業からの所得であれば、子会社の税負担率に関わらず合算対象外となります。これは、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」との経済協力開発機構(OECD)の「税源浸食と利益移転行動計画」(Base Erosion and Profit Shifting: BEPS)の基本的な考え方を踏襲しています。

I. 外国関係会社
タックスヘイブン税制適用対象としての外国関係会社は、まず特定外国関係会社とそれ以外の外国関係会社に大別されます。特定外国子会社以外の外国関係会社は、さらに経済活動基準のすべてを満たす場合といずれかを満たさない場合とに区分され、それぞれ課税対象が異なります。

外国関係会社とは、下記のいずれかをいいます。

居住者及び内国法人が直接または間接にその株式の50%超を保有している外国法人
居住者または内国法人との間に実質支配関係がある外国法人
II. 特定外国関係会社
従来の租税負担割合による一律の判断基準(いわゆるトリガー税率)は廃止され、租税負担割合が20%以上であったとしても、以下1~3に掲げるペーパーカンパニー等の特定外国関係会社に該当する場合は当該会社のすべての所得に対して合算課税されます。ただし、企業の事務負担軽減の措置として、租税負担割合が30%以上のペーパーカンパニー等については、適用が免除されます。

ペーパーカンパニー
下記のいずれも満たさない外国関係会社をいいます。
その本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること
事実上のキャッシュボックス
下記の基準の両方を満たす外国関係会社をいいます。
受動的所得のうち、1~4に該当する所得の合計額÷総資産の額 > 30%
(有価証券+貸付金+無形固定資産等)÷総資産の額 > 50%
ブラックリスト国所在法人
租税に関する情報の交換に非協力的な国または地域として財務大臣が指定する国または地域に本店等を有する外国関係会社をいいます。
III. 経済活動基準(適用除外基準)
外国関係会社に経済実態があるか否かを判定する基準となります。外国関係会社のうち、下記1~4の要件をすべて満たす場合においては、租税負担割合が20%未満のときは、受動的所得(下記IV参照)についてのみ合算課税の対象となります。 一方、外国関係会社のうち、下記1~4の要件を1つでも満たさない場合においては、当該会社のすべての所得に対して合算課税が生じます。

事業基準:主な事業が株式の保有、著作権の提供、船舶リース等でないこと
実体基準:本店所在地国に主たる事業に必要な事業所等を有すること
管理支配基準:本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること
次のいずれかの基準
所在地国基準:主たる事業が卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業又は航空機リース業以外の場合で、かつそれを主として本店所在地国で行っていること
非関連者基準:主たる事業が卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業又は航空機リース業の場合で、かつ非関連者との取引割合が50%超であること
IV. 部分合算課税所得(受動的所得)
外国関係会社のうち、経済活動基準を全て満たす場合で租税負担割合が20%未満のときに部分合算課税される受動的所得の主なものは下記のとおりです。

株式等の配当(持分25%以上等の一定のものを除く)にかかわる所得又は譲渡による所得
債券の利子にかかわる所得、デリバティブ取引及び外国為替による損益
無形資産等の使用料による所得、譲渡損益
有形固定資産の貸し付けによる対価
総資産等に対して根拠性の希薄な異常所得
V. その他
書類等の提出
ペーパーカンパニーの適用除外要件(Ⅱの1参照)または経済活動基準(Ⅲ参照)の判定上、国税当局の当該職員が要件を満たすことを明らかにする書類等の提出等を求めた場合において、期限内に提出等がないときは、当該要件を満たさないものと推定されます。
外国関係会社の判定
実質支配基準が導入され、居住者または内国法人と外国法人との間に、その居住者または内国法人がその外国法人の残余財産のおおむね全部を請求することができる等契約関係等がある場合には、その外国法人は、その居住者・内国法人にとっての外国関係会社とされます。
外国関係会社に係る財務諸表等の添付
内国法人は、下記の外国関係会社に係る財務諸表等の確定申告書への添付を要します。
租税負担割合が20%未満の外国関係会社
租税負担割合が30%未満の特定外国関係会社

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