個人事業主・自営業は税務調査が来ない?税務調査とは。調査目的や対象、調査時期について?

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永江 将典

公認会計士・税理士
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まず初めにお伝えしたい事。それは、個人事業主・自営業に税務調査は…

「来ます」

 

そうです。税務調査は、法人(会社)だけでなく、個人事業主・自営業にも来ます。

もちろんサラリーマンであっても副業で収入を得ている方も税務調査が来る可能性があります。

 

今回は税務調査とは何か、その目的と対象、そして調査の時期などについて、税務調査の基本的なことについて、以下6つの項目に分けて具体的に書いていきたいと思います。

 

今回の記事は、一部法人・個人ともに当てはまる事もありますが、

主に個人事業主(自営業、フリーランス、副業も含む⇒以後、今回の記事では個人事業主で記載)に対して行われる税務調査について記載しています。

 

「税務調査という言葉は知っているけれど、自分に関係があるの?」「私は税務調査の対象になるの?」「もし、税務調査がきたらどうしよう…」と不安をお持ちの方は一度読んでみて下さい。「税務調査とは何か」それを知る手助けになると思います。

 

今回は基本的な事について記載してますので、より具体的な内容、大切な要点や注意点、事例などについては、他の記事を是非参考にしてみて下さい。

 

1)税務調査とは

まず税務調査とは

「国税庁が管轄する税務署などの組織が、納税者の申告を帳簿などで確認し、申告内容に誤りがないかどうかを確認する調査」の事です。

 

簡単にいうと、

「調査とは、所得金額の確認」です

<注意>
上記の「調査とは、所得金額の確認」という表現は
税務署の職員がよく使う言葉です。
が、これは法人と個人事業主に対してです。

相続税は法人税・所得税とは種類が違うので、
相続に関する税務調査では「所得金額の確認」とはいいません。

2)税務調査の種類

個人の税務調査

次に税務調査の種類についてです。税務調査には大きく分けて以下の2つがあげられます。

①強制調査

②任意調査

です。

また事前連絡ですが、強制調査は事前連絡がありません。

ただし、任意調査には

イ)事前に連絡が来る場合

ロ)事前に連絡が来ない場合

と2つのパターンがある事を知っておきましょう。


一般的に、税務調査と呼ばれているものは

「事前に連絡の来る任意調査」(②-イ)に該当します。

 

では、①②・イ)ロ)ともに、もう少し詳しく説明していきましょう。

 

①強制調査とは

強制調査とは、脱税を疑われる納税者に対して裁判所の令状を得て強制的に行われる調査の事です。この強制調査は大口で悪質な脱税の疑いのある納税義務者に対して行われます。この調査は国税局査察部(通称:マルサ)が担当し、最終的には、検察庁への告発を目的としています。証拠隠滅を防ぐため、事前に連絡はなく、いきなり調査が行われます。
国税犯則取締法に則り、調査が行われます

 

②任意調査

任意調査とは納税者の同意のもとで行われる調査の事です。
申告内容の正誤確認や、申告漏れの有無を確認するために行われます。

強制調査のような強制力はありませんが、任意調査そのものを拒否する事は出来ません。また納税者は調査官の質問に答える義務があります。調査官には「質問検査権」があるため、黙秘や虚偽の回答は出来ません。黙秘や虚偽の回答は罰則の対象となります。
国税通則法に則り、調査が行われます

個人事業主については税務署の個人課税部門の調査官が担当します。

 

前述しましたが、任意調査には、イ)事前に連絡が来る場合と、ロ)事前に連絡が来ない場合があります。

 

イ)事前に連絡が来る場合

任意調査のほとんどがこの事前に連絡が来る場合です。

顧問税理士が「税務代理権限書」を税務署に提出している場合は、基本的に税務調査前に連絡が来ます。調査の通知は税理士に連絡するよう、税理代理権限書に記載すれば、税理士経由でその通知が入ってきます。

顧問税理士がいない場合は、税務署より直接対象者本人に、文書や電話などで通知が入ります

なお、事前に通知される事項は「国税通則法」によって内容が決まっており、調査の日時や対象者、調査官の氏名などがこの時点が明らかとなります。

調査の日時については、対象者の仕事の都合が優先されるため、都合がつかない場合、日時の変更してもらうことも可能です

 

日時を変更したからと言って不利になることはありません。もちろん、何度も変更していると怪しまれますが、本当に都合が悪いのなら変更してもらうようにしましょう。

 

ロ)事前に連絡が来ない場合

サービス業や飲食業などの現金払いが多い業種では、こっそり不正を働いて売上の記録を残さないということがあります。そのような不正を防ぐため、税務調査が事前連絡なしに行われる場合があります。

事前連絡なしに税務調査を行う事になった場合、大切なのは慌てない事です。

まずは本当に税務署なのか身分証明書を確認しましょう。

そして顧問税理士がいる場合はすず連絡を取り、調査現場に来てもらいましょう。

また、その場合、税務調査は税理士が到着してから取りかかってもらうのがベストです。調査官には税理士が到着するまで、税務調査を待ってもらいましょう

 

ただし、仕事の邪魔になるようだったら断固として断る事も大切です。

あくまでも調査よりも企業活動が優先されます。

やむを得ない事情がある場合、業務に支障が出る場合など、ダメな時はダメと言いましょう。

 

突然来る理由は、現金が帳簿とあっているかどうかの確認や、通常使用・作成している帳票類を把握・確認するためです。

現金商売の方は普段からきっちりとやっていれば、何ら恐れる事はありません。

 

3)税務調査の目的

個人の税務調査

では、何故税務調査が行われるのでしょうか。その目的ついてお伝えします。

 

現在の日本の税制では、申告納税制度がとられています。

この申告納税制度とは、自分で自分の所得と税額を計算し、その税額を自主的に納付するという課税制度の事です。

自分で申告するので、「申告納税制度」と言われています。

この申告納税制度を維持していくために、重要な役割を担っているのが税務調査です。

もし、この自主的に申告・納税が行われている制度のもとで、税務調査がなかったとしたら…

「所得や税額を自分の都合のいいように改ざんして申告し、本来納めるべき税金を納めないでも良いのでは」と考える方も出てきやすくなってしまいます。

また、自分では正しい申告、納税をしたつもりでも、複雑な税制のもとでは間違った申告をしてしまう事もないとは言えません。ほかにも、申告者の申告内容と税務担当職員の確認との間で見解の相違が発生した場合に、本来納められるべき税金の金額が足りていなかったという事もあり得ます。

 

このように自分で申告をする事によって生じる、間違いや不正(脱税)など、税金の間違いなどがないかを確認するため、そして申告納税制度の質を保つため、行われるのが税務調査です。

 

まとめると、税務調査の大きな目的とは、

「適正な税金を計算する事」そして「不正の抑止」と言えます。

 

4)税務調査の対象

個人の税務調査

次に税務調査の対象についてお話しします。

税務調査の目的とは「適正な税金を計算する事」とお伝えしました。

税務調査では、「適正な税金を計算する」ために、必要なものを必要なだけ調査されます。

 

今回のテーマで、焦点を当てているのは個人事業主についてですので、ここでいう税金とは「所得税」と「消費税」になります。つまり個人事業主の税務調査において対象となるのは確定申告となります。

確定申告には青色申告と白色申告がありますが、申告の仕方によって税務調査が避けられるわけではありません。つまり、青色申告でも白色申告、無申告もすべて税務調査の対象になります。

 ⇒確定申告が必要な人について、税務調査で調べられる内容や項目、どこまで調べられるのかなど、詳しい内容については、個人の税務調査ではどこまで調べる?脱税はどこまでバレてる?を参照。

 

個人を対象とした税務調査には他にも、相続税を対象としたものや贈与税を対象としたものなどがあります。

⇒その内容については他の記事で詳しく説明したいと思います

 

個人事業主の税務調査の対象は「確定申告」であり、確定申告の申告内容に誤りがないかどうかを調査されるというのがわかりました。

ではどのような個人事業主が税務調査の対象者となるのでしょうか。

別の言い方をすると、どのような個人事業主のもとに税務調査が来るのでしょうか。

実はこの対象者に関して多くの人が間違った認識を持っているようです。

結論からいうと、「誰にでも税務調査は来る」です。

 

税務調査は事業をやっている人(副業で確定申告が必要なくらい収入を得ている人も含む)なら、いつ税務調査が来てもおかしくありません。

 

今まで来ていないのは、たまたまであり、絶対に来ないという理由にはなりません。

同じように、「私はまだ売上が少ないから」「利益が出てないから」「人を雇っていないから」などの理由でまだ自分には税務調査が来ないと思っている人も多くいますが、これらの解釈も間違った解釈だと言えます。

 

もちろん、税務調査が来やすい業種や条件などはあります。

しかし、来やすい業種や条件でなくとも、税務調査が来る可能性というのはあります。

また間違った解釈としてあるのが、税務調査が入ったからと言って、必ずしも不正を疑われているとは言えません。

 

繰り返しになりますが、税務調査の目的は「適正な税金を計算する事」です。
つまり、申告内容に誤りがないかを確認するためにくるので、正しい申告をしていたとしても確認の為、税務調査が入る事があります。

また、似たような場合として、今は事業をやめていたとしても、過去の申告内容について税務調査に来る事もありますし、事業を始めたばかりだとしても、税務調査が来ることもあります。

 

つまり、

税務調査は誰にでも来る可能性があると言えます。

 

5)税務調査の時期

個人の税務調査

最後に税務調査の行われる時期についてお伝えします。

 

実は税務調査が行われやすい時期があります。

ずばり、税務調査が多いのは8月から11月頃です。

特に最盛期と言われるのは9月10月です。

ただし、8月から11月が多いというだけで、原則として1年を通じて行われるものであり、いつ入ってもおかしくない事を理解しておきましょう。

 

では何故8月から11月が多くなるのか。

税務署は毎年7月に人事異動があります。

人事異動の前までには税務調査を終わらせないといけないので、7月前は当然税務調査は少なくなります。

また12月から3月、5月までは年末調整・確定申告・3月決算の会社が多い事から、これらの処理に時間がかかっています。

 

このような事情から人事異動が終わった後の8月から他の処理で忙しくなる前の11月までが税務調査が行われやすいようです。

 

大切な事なので、繰り返しになりますが、原則として税務調査は1年を通じて行われるます。8月から11月までが多くなるというだけで、それ以外の時期でも連絡が来る可能性は十分ありますので、いつでも対応できるよう事前の準備はしっかりとしておきましょう。

 

6)最後に

個人の税務調査

今回は税務調査について基本的な事を記載しました。

「税務調査」と聞くと、きちんと申告していたとしても不安が出てきてしまうと思います。

今回は基本的な事のみでしたが、より具体的な内容、大切な要点や注意点、事例、については他の記事に記載してますので参照してください。

 

 

 

永江 将典

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