【知っておくべき!】相続税の税務調査確率と調査されやすい12の事例

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永江 将典

公認会計士・税理士
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相続税申告後に税務調査が行われることは珍しいことではありません。申告内容によっては調査される確率が高まることがあります。この記事では、税務調査がなぜ必要とされ、どのようなケースで行われるか、また調査を避ける方法や調査中の適切な対応策について詳しく解説します。相続税の申告を控えている方、または税務調査の可能性に不安を感じている方にとって、役立つ情報となれば幸いです。

相続税の税務調査と調査される確率

相続税の申告後に行われる税務調査、それに伴う不安は多くの相続関係者に共通する心配ごとです。税務調査は全ての申告に対して行われるわけではありませんが、特定の状況下では調査の可能性が高まります。相続税の税務課がどのような基準で調査対象を選定しているのか、またそれに伴う調査率について理解することは、適切な申告を助けるだけでなく、将来的な問題を回避する上で重要です。

何故相続税の税務調査が行われるのか?

相続税だけに言えることではありませんが、真っ当な税収を確保するために必要です。国は、適正な税金が徴収されていることを確認する必要があります。税務調査はその一環として行われ、不正防止や誤りの訂正を目的としています。

例えば、相続財産に不動産や海外資産が含まれている場合、これらの評価が難しく誤りが生じやすいため、税務署は特に注意を払います。また、相続人間の取引に不自然な流れがある場合も、調査の対象となり得ます。

このような申告漏れや誤りを正確に把握し、適切な税額を徴収することが国の責務とされています。
税務調査は法令遵守を促し、全ての納税者に平等な負担を求めるために不可欠なものと考えられています。

結局のところ、相続税の税務調査が来てしまえば避けることはできません。正しい申告を行い、公平な税制の実現に貢献することが求められます。

全体の税務調査件数と相続税申告の関連性

相続税の税務調査と全体の税務調査件数には密接な関連性があります。税務調査全般における件数は多いですが、相続税の申告件数が増加する年では、それに比例して税務調査の件数も増える傾向にあります。

この理由は、相続税の申告が複雑で、高額な財産評価が関わることが多いからです。また、遺産分割協議の結果も影響し、申告漏れや誤りが生じやすい状況が生まれがちです。適切な申告と評価が行われていない場合、調査の対象となる可能性は高まります。

調査されやすい時期とその理由

税務調査が特に行われやすいタイミングは存在します。
特に相続税の申告書を提出してから概ね1~2年間に多く行われる傾向があります。
最近では、相続税の申告期限の10ヶ月を過ぎてすぐに税務調査が入るケースもあります。

さらに、より具体的な時期で言えば、特に7月~10月頃は注意が必要です。
なぜかというと、税務署の人事異動が7月頃に行われるからです。
人事異動に伴い引継ぎが行われた後、本格的に調査へと移行していきます。

1月~3月の確定申告のシーズンは税務署内がバタバタすることもあり、この期間中に税務調査の連絡が来ることは少ないといえるでしょう。

調査されやすいケースの具体例

相続税の税務調査は特定の条件やケースで発生しやすいとされています。ここでは、具体的に調査されやすい事例をいくつか取り上げ、どのような状況が税務調査の引き金となるのかを解説します。

相続財産の申告漏れが疑われる場合

相続税の申告漏れが税務調査を招く一因です。この状況が生じると、申告者は多くの不利益に直面する可能性があります。

この事例が生じる主な理由は、遺産として得られる全財産の把握が困難である場合や、故意に財産を隠したり、過小申告したりするケースが含まれます。たとえば、不動産や海外資産、貴重品などの記録が不明瞭だったり、申告書に意図的に記載されていなかったりすることが挙げられます。

これに対して、中には、誤って漏れが生じてしまったと主張することも考えられますが、税務調査では過去の取引記録や資産の詳細な調査が行われるため、故意でない場合でもその根拠をしっかりと証明する必要があります。つまり、単なる誤記や見落としであったとしても、それを裏付ける具体的な証拠が必要となります。

相続財産の申告漏れには細心の注意を払い、全ての財産を正確に申告することが求められます。

申告書に不備や矛盾がある場合

税務調査が特に配慮を要するのは、申告書に不備や矛盾が見られる場合です。このような状況は、意図的なものであれ偶発的なものであれ、調査官の注目を引き易くします。申告書に曖昧さや矛盾があると、それが税務上の不正を隠蔽する試みではないかと疑われる可能性が高まります。

例えば、不動産の評価額が市場価値と著しく異なる数字で申告されていたり、財産の一部が申告から漏れていることが後から発覚したりするケースです。また、財産に関連する書類が提出されていない、又は提出された書類に不一致が見られる場合も問題となります。

特に意図がなくとも、手続きの誤りは厳しい審査の対象となることが往々にしてあります。したがって、申告書は最大限の注意をもって準備する必要があります。

結論として、申告書に不備や矛盾がある場合は、税務調査を招きやすいです。確実な申告書の作成、専門家への相談が非常に重要であると言えます。後の誤解や不要な税務調査を避けるための最善策となります。

高額な相続税が課されるケース

高額な相続税が課されるケースでは、税務調査が行われる可能性が高くなります。これは、税務署がが大きな税収逃れを防ごうとするからです。

例えば、数十億円規模の資産を相続するようなケースです。相続した財産の中には不動産、株式、海外資産など、評価が複雑かつ高額になるものが含まれていることがあります。これらの資産に対する正しい評価が行われているか、確認が必要になるため、税務調査の対象となりやすいのです。

一部には「高額な相続税が課されたからといって、必ずしも調査対象になるわけではない」との意見もありますが、統計的に見ると高額資産の申告ケースでは調査頻度が高まる傾向にあります。

税務調査を避ける方法

相続税の税務調査をできるだけ避けるためには、正確で透明性のある申告方法が必要です。申告書の正確な作成を始めとし、経験豊かな税理士や専門家と協力することが重要です。加えて、自身の財産に関する記録を定期的に更新し、評価する習慣を身につけることで予期せぬ税務調査のリスクを最小限に抑えることができます。

正確な申告書の作成

正確な申告書の作成は税務調査を避ける上で極めて重要です。この点をおろそかにすると、誤った情報が税務署に提供され、結果として不要な調査やペナルティを招くリスクがあります。

申告書を正確に作成する理由は明確です。税務調査は、主に申告内容に疑義がある場合に行われます。したがって、申告する情報が正確で完全であれば、税務調査の対象となる可能性を大幅に減少させることが可能となります。

具体には、相続財産の評価を行う際、専門家に正確な鑑定を依頼し、その結果を申告書に反映させることです。また、全ての取引文書や銀行の記録が最新であることを確認し、これらの情報を申告書に正しく記載することも重要です。
将来的なトラブルを回避するためには、初めから正確なデータを用意しておくことが最も効果的です。

税理士や専門家との協力

税務調査のリスクを下げるために、相続税の申告書を税理士や専門家と協力して作成することは非常に効果的です。税理士等の専門家は、税法の複雑な要件を把握しており、誤りのない申告書の作成を支えてくれます。

例えば、財産評価の専門技術が必要な不動産の評価では、税理士は市場価値を正確に評価するためのアドバイスをします。また、遺産分割協議においても、適切な法的アプローチや節税対策をアドバイスすることもあります。

したがって、税務調査のリスクを考えた時に、専門家に頼る方が税務調査のリスクを減らす上は効果的だといえるでしょう。

定期的な財産の記録と評価

定期的な財産の記録と評価は、税務調査を避ける効果的な方法です。これにより、申告内容の正確性が保証され、疑惑を招く余地が減少します。この習慣は、特に資産価値が変動しやすい項目に対して重要です。

例えば、不動産や株式など、市場価値が頻繁に変動する財産は、定期的に評価し直すことが求められます。これらの資産は、評価時期によって申告額が大きく異なる可能性があり、それが税務調査のトリガーとなることも少なくありません。

繰り返しになりますが、定期的な財産の記録とその評価は、相続税申告書の作成や税務調査をスムーズに乗り切るための鍵となります。これにより、申告の正確さが保証され、適切な税額が計算されることにつながります。

税務調査中の対応策

税務調査を効果的に乗り切るためには、十分な準備と適切な知識が必要です。ここでは、税務調査が始まった際にすぐに行うべき具体的な手順や対応策を解説します。これらの対策を理解し、適用することで、税務調査をスムーズに進め、可能な限り問題の発生を抑えることが出来ます。

準備すべき書類と情報

税務調査中には特定の書類と情報が求められることが一般的です。これらを事前に準備しておくことで、よりスムーズに調査を進めることができます。

調査官は通常、相続に関する全ての財産の詳細や税務申告書、関連する銀行口座の記録、それに不動産の評価書などを確認します。これらの文書は、相続税の申告内容が正確に行われているかを確認するためのものです。

例えば、不動産を相続した場合は、その評価額を示す公的な評価書や購入時の契約書、改修歴を示す書類が要求されることがあります。また、株式や他の金融資産については、取得時と現在の価値を示す証明書が必要になることも少なくありません。

調査をスムーズに終えるためにも、必要な書類の準備と情報は予め用意しておきましょう。

調査官の質問にどう答えるか

税務調査の際、調査官の質問には落ち着いて正確に回答することも重要です。これにより、誤解を避け、スムーズな税務調査を進行することが可能になります。

税務調査では、調査官が、提出された資料や申告内容に基づいて具体的な質問をします。例えば、不動産の評価方法や譲渡所得の計算について詳細を尋ねることがあります。

しかし、質問の意図を誤解して過剰に情報を開示することは避けるべきです。適切な情報提供は調査の範囲を適正に保ち、不必要な追加調査のリスクを軽減します。

したがって、調査官からの質問には、必要な情報を的確に、かつ正確に答えるべきです。これにより、調査官との信頼関係を築きつつ、効率的なに調査を進めることができます。

専門家の支援の利用

税務調査の対応を専門の税理士に依頼することも、調査をスムーズに終えるために非常に役立ちます。
税理士などの専門家は税法に精通しており、税務調査中に生じうる複雑な法的問題を解決することが出来ます。
反対に、「自分たちで対応すれば費用を抑えられる」という考えもありますが、専門家への投資は適切なアドバイスと防御策によって最終的に様々な負担を軽減します。よって、複雑な税務調査においては、専門家に頼ることも検討するのが望ましいです。

よくある質問と回答

相続税の税務調査は、多くの人にとって不安の種です。そんな中、特に多く寄せられる質問に答えることで、この複雑な領域についての理解を深めていただければと思います。次の内容では、税務調査の持続時間、主な調査の対象、追加納税が発覚した際のペナルティなど、基本的な疑問に回答します。

税務調査はどれくらいの時間を要するのですか?

税務調査の期間は様々ですが、一般的には数週間から3ヵ月ほどです。

どのくらいの期間を要するかというのは、調査の範囲や複雑さに大きく依存します。税務署は、調査に関連する文書や証拠の確認、関係者への質問など、多くの諸手続きを行います。

例えば、相続財産が多岐にわたる場合や海外資産が関与している場合は、調査期間が長引く傾向があります。これらのケースでは、詳細な資料分析と正確な資産評価が重要となるため、時間を要します。

したがって、税務調査は数週間から数ヶ月必要と考えておくとよいでしょう。

調査対象になる主な指標は何ですか?

税務調査では、対象となりやすい主なパターンが存在します。高額な財産評価差、異常な取引記録(預金口座の引き出し等)、申告内容と銀行記録との不一致などが挙げられます。これらはすべて税務署が特に注目し、詳細な調査を行う要因となり得えます。

税務調査はある程度の基準と疑念に基づいて選定されます。主なパターン以外にも実際に調査で不正と解釈されるパータンも存在します。(長くなりますのでそれはまた別の記事で書くとします。)不必要な心配や誤解を避けるためにも、適切な申告を心がける必要があります。

調査後に追加納税が発覚した場合、どのようなペナルティがありますか?

調査後に追加納税が必要となった際のペナルティは厳しいものとなることが多いです。税務調査で過少申告や不正行為をしていたことが明らかになれば、通常、追加で支払うべき税額に加えて、延滞税や罰金が科されることがあります。

ただ、毎事例において必ずしも重いペナルティが科されるわけではありません。適正な理由や誤解があった場合、これらのペナルティは軽減されることもあります。

税務署による調査後に追加納税が発覚した場合は厳しいペナルティが科されることを十分理解し、正確な申告を心がけましょう。

まとめ

この記事を通じて、相続税の税務調査の概要と調査されやすい事例、そしてそれを避ける方法について詳しく解説しました。必要に応じて、各ポイントを改めて確認するようにしましょう。

永江 将典

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