無申告で税務調査が入るとどうなる?

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永江 将典

公認会計士・税理士
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税理士法人エールでは年間200件ほど税務調査のご依頼に立ち会っています。
その中でも無申告で相談に来られる方は2割ほどです。
相談を受ける中で開口一番に「自分は逮捕されてしまうのか?」と聞かれることがあります。

結論から言ってしまうと逮捕される可能性は低いです。
ただし、低いというだけでゼロといわけではありません。

みなさんも学校の授業などで一度が耳にしたことがあると思いますが、憲法では納税は国民の三大義務の一つとされています。
よって無申告が発覚した場合には通常よりも課される罰金が多くなります。

本日は無申告時のリスクと対策について話します。
税務調査の背景や目的、そして無申告のリスクを正確に理解することで、将来的なトラブルを避けることに役立つこができれば幸いです。

税務調査の種類

まず、税務調査には大まかに任意調査と強制調査の2種類があります。
税務調査の連絡がどこから来るかによって、その調査の厳しさをうかがうことができます。

税務署の調査(任意調査)

税務職員が実施する任意調査です。基本的には電話や手紙などで事前通知の上で調査を行います。また、税務調査のほとんどがこの調査に該当します。任意調査という名目ですが納税者には受忍義務があるため拒否することはできません。

資料調査課の調査(任意調査)

資料調査課とは、国税局に属する「税務調査を専門とする部署」のことです。資料調査課の調査は任意調査です。申告内容に不正がある可能性が極めて高い場合や税務署では対応が難しい案件がある場合に動きます。基本的には逮捕される可能性はほとんどないです。

強制調査(マルサ)

令状のある強制的な調査です。税法違反の疑いがある場合に、証拠を確保するために行う調査のことを指します。具体的には、脱税や申告漏れなどの疑いが強い場合、税務署は事前の通知なしに納税者の自宅や事務所に突然訪れ、書類やデータの押収を行います。この調査は、税務署の権限に基づき、納税者は協力する義務があります。
※ここから調査の依頼がきた場合には逮捕される可能性があります。

無申告は何年分調査される?

ではもし実際に税務調査に入られた場合、何年分調査されるのかをお話します。

税務調査の対象期間

税務調査の対象となる期間は、通常、過去3年分の所得税や法人税、消費税などの申告内容に関して調査されます。これは、税法上の「課税時効」が3年であるためです。

ただし、以下のような特定の状況下では、課税時効が5年または7年となり、それに応じて調査の対象期間も長くなることがあります:

1故意の脱税や申告漏れがあった場合:課税時効が5年となります。
2申告義務があるにも関わらず申告を一切しなかった場合:課税時効が7年となります。

したがって、税務調査の対象期間は通常3年ですが、特定の状況に応じて5年または7年となることもあります。

また、無申告の場合は最低でも5年は見られることを覚悟してください。

無申告時の税務調査

無申告が発覚した場合

過去の売上を申告し忘れていた場合、速やかに申告を訂正し、追加納税を行うことが求められます。
この際、税理士や会計士と連携し、正確な申告訂正書を作成することが重要です。
税務調査官との適切なコミュニケーションを取りながら、誤りや不備があった理由を説明することも必要となります。

帳簿・領収書がない場合

実際に無申告で相談に来られる方で

・帳簿がない
・領収書全部捨ててしまった

という方がいます。
帳簿がない、領収書がないというのが実は一番と言ってもいいくらい大変です。
何が大変なのかと言いますと、資料がないということは
経費として認められるかどうかや消費税の課税仕入れが認められにくいということに繋がってくるからです。

調査官は、調査の際に必要な帳簿や書類、領収書などの提出を求めてきます。
そして提出された書類を基に、所得の計算や経費の妥当性などを確認します。

無申告で調査の連絡が来てから調査日までに
確定申告作成して出すことは認められています。
しかし、帳簿も領収書もない中、最初から作成することになります。
そして申告書はほぼ正しいものを出さないといけません。

ここまででも相当大変であるということは安易に想像がつくと思います。

では、どうしたらいいの?ということになりますが
それはもう、「覚悟を決めるしかない」ということです。

また、申告書を出したからと言って調査はなくなりません。

税金はいくら払うことになるの?

では実際に税務調査に入られた場合はそれぐらい税金を納めるのでしょうか?
国税庁の調査資料を元に見ていきたいと思います。

税務調査の追徴税額

一例として国税庁が出している平成29年度「法人税の実地調査の状況」によれば
調査 1件当たりの追徴税額は約178万円とあります。
こちらの資料は確定申告をして税務調査に入ったものも含んでいるので
無申告だけの場合だともっと多い税額になると予想されます。
無申告では調査年数が最低でも5年、消費税も5年となるとそれだけでも相当かかってきます。
加えて地方税などを考えるともっとかかってくる可能性があります。

無申告を避けるための対策

無申告を避けるためには、定期的な帳簿のチェックや税務に関する知識の習得が必要です。できれば月に一度、売上や経費の確認を行い、年度末には税理士との打ち合わせを設けることで、無申告や申告の誤りを未然に防ぐことができます。また、最新の税制改正や税務に関する情報を常にキャッチアップすることも重要です。

まとめ

冒頭で少し話しましたが、税理士法人エールでは年間200件の税務調査に対応しています。
ご依頼いただく中の2割は無申告の税務調査の対応依頼です。
無申告で税務調査が入ると通常より多くの罰金が課せられます。
また、帳簿や領収書がない場合は税務署に正しく申告書を作成すること自体が難航するだけでなく、経費や課税仕入れなどの交渉がしにくくなります。
よって無申告のリスクは高く、その対策は非常に重要です。
当然のことですが将来のためにも正確な申告を心がけ、税務調査を恐れずにビジネスを進めることが、安心して事業を続けるための鍵となります。

永江 将典

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