税務調査で追徴課税が払えない時の分割払いは可能?

永江 将典

公認会計士・税理士
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税務調査で追徴課税の通知を受け、期限までに納付が難しい場合の救済措置として納付の猶予制度が存在します。

この記事では、分割納付が認められるための必要条件や、猶予の申請方法についてわかりやすく解説します。

追徴課税とは

税務調査による追徴課税ときくと、精神的にも経済的にもは大きな不安をもたらしますが、
この章では、まず追徴課税とは何かについてわかりやすく解説します。

追徴課税とは何か?

追徴課税とは、過去に不正確な申告や脱税があった場合に、税務署がその過少申告分や未申告分に対して課税を行う制度です。これは、納税者が本来納付すべき税金を適正に納めるよう求めるための制度であり、追徴課税額は税務署が詳細な調査を行った結果に基づいて算定されます。

追徴課税の対象となった場合、税務署から通知が届き、特定の期間内に過少申告分や未申告分を支払うよう求められます。追徴課税額の計算は、遡及課税や利息、罰金などが含まれることもあり、支払いが容易ではない場合もあります。

追徴課税が発生するケース

追徴課税が発生する主な理由は、納税者が申告すべき税金を適切に申告していない場合です。

これには様々な形態があり、自身の収入を低く申告する、あるいは必要な情報を提出しないことが含まれます。

例えば、個人事業主が事業収入を過少に申告した場合や、特定の経費を過大に計上した場合が挙げられます。

これらの行為は税務調査の対象となり、結果的に追徴課税へと繋がることがあります。

一見、税負担を軽くする有効な手段のように思えるかもしれませんが、追徴課税が発生すると、本来納めるべき税金に加え、追加のペナルティや利息が課されることが一般的です。このため、短期的には節税できたとしても、長期的な視点で見れば、より多くの負担を背負うことになりかねません。

再び、追徴課税が発生すると、税務上の信用失うリスクも高まり、将来的な事業運営にも影響を及ぼす可能性があります。

追徴課税の分割払いはできるのか?

追徴課税の分割払いについては、原則として一括納付が求められます。

しかし、期限内の納付が難しい場合は納税猶予制度といって、申請により税務署長の許可を 受けて、分割納付を受け入れてくれるケースもあります。

ただし、分割納付を受け入れてもらうためには、事前に適切な申請を行うことや資料を提出することが必要不可欠です。

税務署との十分な対話や交渉を行うことで、分割納付の実現性を検討することが重要です。

次の章では2つの納税の猶予制度について解説します。

納税猶予制度とは?

追徴課税は、原則一括払いです。

しかし、どうしても期限内に払うことが難しい場合は救済措置である2つの猶予制度を利用することが可能です。

ただし、利用するには要件を満たしていることが必要です。

次に、どんな場合に適用できるのかを解説していきます。

猶予制度①:換価の猶予

換価の猶予とは?

換価の猶予とは、申請によって財産の差し押さえや売却を待ってもらえる制度です。

換価の猶予の要件

以下の5つの要件を満たす場合
① 国税を一時に納付することにより、事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあると認められること。
②納税について誠実な意思を有すると認められること。
③換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと。
④納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されていること。
⑤原則として、担保の提供があること。
※担保が必要ない場合があります。詳細はこちら→
国税庁HP:担保の提供

ここで特に注意が必要なのは納期限から6か月以内に申請書が提出されていることです。
提出期限は特に注意して確認しましょう。

猶予期間

猶予を受けられる期間は1年間の範囲内です。

猶予制度②:納税の猶予

納税の猶予とは?

納税の猶予とは、申請によって追徴課税を含む国税の納付を待ってもらえる制度です。

納税の猶予の要件

以下の4つ要件を満たす場合

①下記のAからFに該当する
A.財産について、災害を受けたり盗難にあったこと。
B.納税者や家族が病気にかかったり負傷したこと。
C.事業を廃業したり休業したこと。
D.事業について著しい損失を受けたこと。
E.A~Dに類する事実があったこと。
F.本来の期限から1年以上経過した後に、修正申告などにより納付すべき税額が確定したこと。

②上記の①の事実に基づき、納税者がその納付すべき国税を一時に納付することができないと認められること。

③申請書が提出されていること(上記①のF場合は納期限までの提出)。

④ 原則として、担保の提供があること。

ここでも特に、③の提出の期限に注意しましょう。

※国税庁HP:納税の猶予

猶予期間

猶予を受けられる期間は1年間の範囲内です。

納税猶予の申請方法

書類の提出

猶予を受けるためには、次の①~④も書類を所轄の税務署長に提出する必要があります。

①「換価の猶予申請書」または「納税の猶予申請書」

② 「財産収支状況書」(猶予を受けようとする金額が100万円を超える場合は、「財産目録」および「収支の明細書」)

③ 担保の提供に関する書類(押印(実印)と、その押印に係る印鑑証明書の添付が必要な場合があります。)

④ 災害などの事実を証する書類(納税の猶予の場合)

※国税庁HP:手続き

まとめ

追徴課税は原則一括払いです。追徴課税の分割払いは可能な場合もありますが、要件を満たす必要があります。

期限までに納付が難しい場合は猶予制度が利用できるかを所轄の税務署に相談しましょう。

永江 将典

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