税務調査と追徴課税の税率は?過少・無申告加算税、重加算税、延滞税、附帯税

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永江 将典

公認会計士・税理士
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追徴課税とは?=税務調査の結果、追加で払う所得税・消費税・法人税などの税金

追加徴税とは

税務調査が入ると、売上や経費の間違いや脱税がないか、総勘定元帳や固定資産台帳、補助元帳などの帳簿や見積書、請求書、納品書、レシート等が調査官によってチェックされます。

そして、調査の結果、売上が漏れていたり経費として認められないものがあった場合、利益(所得)が増加することになるため、本来払う税金よりも実際に払った税金が少ないという事態が発生します。この本来払う税金に不足する税金を税務調査終了後に払うことになります。

この追加で払う税金のことを追徴課税と言います。

追徴課税にはペナルティとして罰金(附帯税)が上乗せされる!

徴課税を払う際、追徴課税と別に

  • 無申告加算税
  • 過少申告加算税
  • 重加算税
  • 延滞税

という、罰金が上乗せされます。なぜ罰金が上乗せされるか?

これは、罰金がないと、みんな税金を少なく申告してしまうからです。
国としては早く税金を回収したいので、附帯税を設けて、正しい税金がちゃんと回収されるように、
という意図で導入されています。

無申告加算税とは?税率は?法的根拠は?

無申告加算税とは

無申告加算税は、確定申告をしていなかった場合の罰金です。無申告加算税は、以下の4つのケースで支払う必要があり、それぞれ税率が異なります。

  1. 無申告で、法定申告期限は過ぎているが自主的に確定申告をした場合
  2. 無申告で税務調査の連絡があり、調査前に自主的に期限後申告をした場合
  3. 無申告で税務調査が入り、調査の結果、追徴税額を払うことになった場合
  4. 3の場合で、さらに過去5年以内に無申告加算税を課された経験がある場合

(わかりやすくするため、正しい定義とはちょっと違います。詳しく知りたい方はこちらを参照ください
 税務調査と無申告加算税。税率や加重措置、法的根拠を解説。

1~4のケースでは、1や2のほうが自主的に申告している分、無申告加算税が安いです。

1の場合の無申告加算税は5%です。
2の場合の無申告加算税は、追徴税額が50万円以下の部分に対して10%、50万円超の部分に対して15%の税率で税金が加算されます。

3の場合の無申告加算税は、追徴税額が50万円以下の部分に対して15%、50万円超の部分に対して20%の税率で税金が加算されます。

4の場合の無申告加算税は、追徴税額が50万円以下の部分に対して25%、50万円超の部分に対して30%の税率で税金が加算されます。

例えば、所得税が追加で120万円発生したとします。

1の場合は、100万円×5%=5万円
2の場合は、50万円×10%+70万円×15%=15万5千円
3の場合は、50万円×15%+70万円×20%=21万5千円
4の場合は、50万円×25%+70万円×30%=33万5千円

となります。1と3では無申告加算税の金額に8倍以上も差が出てしまいました。

無申告のまま税務調査が来てしまうことほど悲惨なことはありません。
無申告だけど、今すぐちゃんと確定申告したい!という方はこちらをご覧ください。

無申告の状態から確定申告をしてスッキリしたい方へ

無申告加算税の法的根拠

無申告加算税は、国税通則法第66条に根拠が記載されています。

第六十六条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該納税者に対し、当該各号に規定する申告、更正又は決定に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十五の割合(期限後申告書又は第二号の修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の十の割合)を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する。ただし、期限内申告書の提出がなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。

一 期限後申告書の提出又は第二十五条(決定)の規定による決定があつた場合
二 期限後申告書の提出又は第二十五条の規定による決定があつた後に修正申告書の提出又は更正があつた場合

国税通則法はこちら(クリック)

実は、無申告加算税の税率がアップし、罰金が強化されました

平成29年1月1日から、実は無申告加算税は罰則が強化されています(平成28年度の税制改正による)。
以前は、税務調査で税金が決定する前までに自主的に修正申告をすれば、無申告加算税は5%でした。しかし、現在は先ほど紹介した税率へと変更され、罰則が強化されています。

税務調査の通知があってから、調査前までに修正申告を提出してしまおう!無申告加算税が安いうちに、という無申告の納税者の方がたくさんいたんでしょうね。

短期間に繰り返して無申告が行われた場合の加重措置

これも平成28年度税制改正で新しく導入されたルールです。何度も何度も無申告を繰り返す納税者を取り締まる目的で、該当者への無申告加算税の税率を上乗せしています。

税務調査の結果、追徴課税が決定された場合。通常は無申告加算税15%(50万超の税金部分は20%)です。しかし、短期間に繰り返して無申告を繰り返した場合は、無申告加算税25%(50万超の税金部分は30%)です。

10%も上乗せされていますが、それだけ繰り返し無申告状態を続ける納税者がいたんでしょうね。脱税思考のある悪質な納税者を取り締まるための加算税制度ですので、導入は当然だと思います。

過少申告加算税とは?税率は?

過少申告加算税

過少申告加算税は、税務署や国税局による実地の調査の結果、売上除外や経費否認事項が見つかり、修正申告書を提出し追徴税額が発生した際、上乗せされるペナルティとしての罰金です。

過少申告加算税は、修正申告のタイミングにより、税率が異なります。

  1. 調査の事前通知後、調査が本格的に始まる前までに修正申告を出した場合
  2. 調査に着手し、結果がほぼ固まってきた時点で修正申告を出した場合

(わかりやすくするため、この定義は厳密にはちょっと違います)

1の場合、過少申告加算税の税率は追徴税額が50万円以下の部分は5%、50万円を超える部分については10%の税率が適用されます。

2の場合、過少申告加算税の税率は追徴税額が50万円以下の部分は10%、50万円を超える部分については15%の税率が適用されます。

例えば、法人税の追徴税額が120万円だった場合。

1のケースだと、50万円×5%+70万円×10%=12万円
2のケースだと、50万円×10%+70万円×15%=15万5千円

の過少申告加算税を支払うことになります。

過少申告加算税の税率が調査の時期によって異なる理由

1と2で、税率が5%異なりますね。
この意味は、納税者が実は脱税しており、申告書の内容に誤りがある場合を想像するとわかりやすいです。実は脱税しているので、どうせ見つかるなら少しでも税金が安いほうがいいですよね。

修正申告の税率が、調査が進むにつれ5%⇒10%へアップします。

もし税率が同じだとしたら。脱税が見つかったら諦めて修正するか、と思ってしまうかもしれません。調査通知があり、実際に調査が始まる前であれば税率が5%安いわけです。

どうせ見つかってしまうなら・・・5%安いうちに修正申告書を出しておこう、となるわけです。

過少申告加算税の法的根拠

無申告加算税は、国税通則法第65条に根拠が記載されています。

第六十五条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第一項ただし書又は第七項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

国税通則法はこちら(クリック)

重加算税とは?要件は?税率は?法的根拠は?

重加算税とは

重加算税とは、税務調査の結果、悪質な税逃れ・脱税とみなされた場合に適用される追徴税額とは別に払う罰金的意味をもつ税金です。脱税とみなされてるわけですから、無申告加算税や過少申告加算税よりも厳しい最高税率が適用されます。

重加算税の税率

重加算税は、35%または40%のいずれかが適用されます。
確定申告をしていた場合で、重加算税と指摘・認定された場合は35%。無申告の場合で、重加算税と指摘・認定された場合は40%の税率が適用されます。

ただし・・・重加算税が確定し、修正申告や更生の決定による処分を受けた場合で、過去5年間の間にも重加算税を課されたことがある場合。繰り返し脱税をするペナルティとして、さらに加算税がアップします。

重加算税の加重措置

税率が10%上乗せされます。
35%の税率が45%に。40%の税率が50%に上乗せされます。

本当に重加算税であった場合は、ルールとして決められている以上、従うしかありませんが、調査の途中で重加算税を認めてくれたら、他の論点は指摘しません、といった謎の交渉が行われることがあります。

本来は重加算税でない場合でも、納税者も早く税務調査を終わらしたいことから、合意してしまうことがあります。

今まではそれでもよかったかもしれませんが、今後は次回の税務調査の際の税率にまで影響してしまいます。加算税が10%アップすれば、いい金額になります。今後は、重加算税を指摘された際は、安易に妥協せず、しっかりと反論していきたいところです。

重加算税の要件

では、どのような場合に重加算税の対象となるのでしょうか?ここがみなさんが一番気になるところですよね。

重加算税は、確定申告の内容に「仮装または隠ぺい」行為があった場合に適用されます。
では、何をすると、この「仮装または隠ぺい」に該当するのでしょうか?

よく質問を受けるケースとして、

Q.私の場合、重加算税に該当しますか?

  • 売上の一部を隠し口座を作り、そこへ入金しました。確定申告の際、除外してます。
  • 現金売上の一部を除外して確定申告していまいました。
  • 外注費の支払いの中に、本当は払っていない金額を帳簿へつけてしまいました。
  • 本当は仕事を発注してないけど、友人に領収書を作ってもらい外注費にしてしまいました。
  • プライベートな家族の旅行や、家の経費を混ぜてしまいました。
  • 帳簿も作らず、適当な数字を書いて申告してしまいました。

といった相談を受けます。

重加算税に該当すると、7年間に調査期間が延長される可能性が非常に高くなるため、
なるべく重加算税にならないように税務調査を終わらせたい方がほとんどだと思います。

こちらで、どこよりも詳細に解説しています。参考にしてみてください。

重加算税に反論するために。仮想隠ぺい・故意過失の判定基準とは?

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重加算税の法的根拠

重加算税の根拠は、国税通則法68条に記載されています。これを根拠に、調査官は重加算税を指摘してくるハズなのですが、中にはとりあえず重加算税と言ってくる調査官もいました。

根拠は?と尋ねると、条文に照らして十分な要件を満たしておらず、最終的には重加算税なしで終わることもあります。重加算税と認定されると、ほとんどのケースで7年間遡って税務調査期間が延長されてしまうため、安易に認めると税金が倍以上に膨らみかねません。

納得できない場合は、調査官にしっかりと根拠を確認するようにしましょう。

国税通則法より。第68条引用。

第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

延滞税とは?税率や法定根拠について

延滞税とは

延滞税とは、本来の申告期限から納税が遅れた分に対する利息のようなものです。利息ですので、遅れた日数が長くなるほど増えていきます。

利息と聞くと、大したことない気がしてきますが・・・
以前は、延滞税の税率が14.6%と非常に高率で、5年間で税金が2倍に増えるという恐ろしい税率でした。

税務調査は最長7年ですので、5~7年前の税金は延滞税だけで2倍以上に膨らむという・・・本当に恐ろしい税率でした。しかし、近年の超低金利な現状から、税率が下がっています。

現在の延滞税の税率

法定納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までの利息は、毎年見直しが行われ、現在は以下の利率となります。

平成30年1月1日から平成30年12月31日までの期間は、年2.6%
平成29年1月1日から平成29年12月31日までの期間は、年2.7%
平成27年1月1日から平成28年12月31日までの期間は、年2.8%
平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年2.9%
平成22年1月1日から平成25年12月31日までの期間は、年4.3%
平成21年1月1日から平成21年12月31日までの期間は、年4.5%
平成20年1月1日から平成20年12月31日までの期間は、年4.7%
平成19年1月1日から平成19年12月31日までの期間は、年4.4%

法定納期限の翌日から2ヶ月を経過した日数に対してかかる税率

平成30年1月1日から平成30年12月31日までの期間は、年8.9%
平成29年1月1日から平成29年12月31日までの期間は、年9.0%
平成27年1月1日から平成28年12月31日までの期間は、年9.1%
平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年9.2%
平成25年12月31日以前 年14.6%

それでも、9%前後の税率ですので、なるべくなら延滞税を減らしたいな、と思うのが人情だと思います。

延滞税が増えていくのを防ぐための対策

税務調査の結果、追徴税額が決まると、本来の納付時期から納付が遅れているため、延滞税の計算が始まります。

追徴税額が決まると、他に無申告加算税・過少申告加算税・重加算税など加算税と延滞税が発生します。延滞税は、追徴税額に対してのみかかります。加算税にはかかりません。よって、加算税の支払いは後回しとし、先に所得税や消費税・法人税などの追徴税額を払ってしまいましょう。

これで、延滞税が毎日増えていく事態にストップをかけることができます。

延滞税の税率が下がる換価の猶予の申請手続

延滞税の対象となる本税を払えれば、延滞税の増加にストップをかけることができます。しかし、税金が多額になり一括で払えない方も多くいらっしゃいます。そんなとき、税金の支払いを分割払いにするための手続きとして換価の猶予という制度があります。

この制度を申請し、認められると猶予期間中は延滞税の税率も2%程度に下がります。税務署の職員の方に聞いてみてください。知っているはずです。

もし知らない際は、税務署の徴収部門という税金の回収部隊へ相談してみましょう。税務署の窓口で納税の相談で徴収部門と話がしたい、と言えば繋いでもらえます。

延滞税の法的根拠

延滞税の根拠は、国税通則法60条に記載されています。

第六十条 納税者は、次の各号のいずれかに該当するときは、延滞税を納付しなければならない。
一 期限内申告書を提出した場合において、当該申告書の提出により納付すべき国税をその法定納期限までに完納しないとき。
二 期限後申告書若しくは修正申告書を提出し、又は更正若しくは第二十五条(決定)の規定による決定を受けた場合において、第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき国税があるとき。
三 納税の告知を受けた場合において、当該告知により納付すべき国税(第五号に規定する国税、不納付加算税、重加算税及び過怠税を除く。)をその法定納期限後に納付するとき。
四 予定納税に係る所得税をその法定納期限までに完納しないとき。
五 源泉徴収による国税をその法定納期限までに完納しないとき。

永江 将典

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