美容院・理容院・床屋など理容業の税務調査の注意点

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永江 将典

公認会計士・税理士
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理容業の税務調査の注意点を、税務調査の流れにそってお伝えします。

理容業の税務調査1日目・午前の部

美容院・理容室の税務調査

 

税務調査は、だいたい10時に、お店に調査官が1名か2名やってきます。
スーツをきた人たちがくるので、外を見てればすぐにわかります。

駅から近ければ徒歩、遠い場合は車で来ることが多いです。
車はグレーの軽自動車以外、見たことがないです。

最初に、あなたへ税務調査官が「身分証明書及び質問検査章」を提示します。
どこの税務署に所属してる誰が調査を行うか、提示されます。

これは、国税通則法(税務調査のルールが書かれてる法律)74条の13
に記載されています。参考まで、原文を引用いておきます。

第七十四条の十三 国税庁等又は税関の当該職員は、第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査、提示若しくは提出の要求、閲覧の要求、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施をする場合又は前条の職務を執行する場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

自己紹介の次は、雑談が始まります

最初の挨拶が終わると、次に雑談が入ります。
いきなり売上や領収書を見始めたりはしません。緊張を解く目的もあると思います。

何でそんな細かいことを聞くんだ!?えー、そこまで聞くの?と言ったことも聞かれたりします。

・いつから事業を始めたか
・事業を始める前は何をしていたか
・どこの学校を卒業したか
・業界動向
・家族構成

と言った話題から、次第に売上や経費の話になっていきます。

一日の来店者は何名くらいか
顧客カルテは作成しているか、どこに保管しているか
現金売上は、いつ、誰が、どこの銀行へ入金しているか
物販はどんなものを扱ってるか?どのくらい売れるか?
在庫の管理はどのように行っているか?
スタッフは何人いるか?
経理や、申告書の作成はどうしているか?

だいたい11時30分~12時前までこのような話が続き、12時が近づくと
午後に帳簿や売上・給与・経費の明細・根拠資料を準備しておくよう言われ、
1時間のお昼休憩に入ります。

調査官も慣れてますから、話を聞き出すのがうまいです。
また、理容業の経営者さんはみなさん話すことがうまいので、ついつい余分なことまで話してしまう
こともあります。

税務調査に同席させてもらう際は、事前にこう聞かれたらここまで答えてください、
質問には最低限の回答をして、余計なことは話さないようにしてください!
とお伝えしていても、あー、それ話しちゃいましたか~、話さないで欲しかったなぁ、ということもあります。
(脱税してるわけではなく、後で無駄なツッコミを受けたくないので触れられたくないこともあります)

税務調査1日目・午後の部

美容院・理容室の税務調査

 

お昼休みも終わり、いよいよ税務調査が本格的に始まります。
午後の部はだいたい13時に始まり、16時に終わります。

一人で税務調査に臨む場合は、社長がずっと調査に同席することになりますが、
税理士へ依頼すると、午後は社長は仕事に戻ってもらい、お任せいただくことが多いです。

一人で調査に対応するのが不安だ・・・という方は、税務調査が得意な税理士へ依頼すると楽です。
だいたい社長は初日の午前だけで、あとは調査官に会うこともなく終わっていきますよ。

さて、午後の調査の内容です。

理容業は現金商売。売上を過少申告してないか厳しくチェック

美容院・理容院・床屋さん。

売上を現金で預かりますよね。
世の中には、この現金の売上を申告から抜いてしまう方がいます。

気持ちはわかりますがね。
特に売上が1000万円をちょっと超えた程度の場合。

消費税を払いたくない!という悪魔のささやきに心が揺れる方が多いです。
実際、1000万円超えてるけど毎年900万円程度で申告してました。
税務調査が来てしまい・・・助けてください!というご依頼をよくいただきます。

では、どうやって現金売上はチェックされるのか?

現金売上をチェックする覆面調査

美容院の場合、実地調査の前に調査担当者が実際にカットに訪れていたりします。
なんかやたらお店のことを聞いてくるお客さんがいたら、怪しいかもしれません。

あ!あの時来てましたよね!!
という話もちらほらあります。

税務調査の前に、現金売上をどう扱っているか?
会計の時にレジを見ていたり、どこにお金をしまっているか?
領収書を依頼した場合、領収書の綴りはどう保管しているか?
見られています(笑)

貰って帰った領収書が、税務調査のときに出てこなかったら。
その分、売上から除外してませんか?
なんてことになりかねません。

朝の雑談タイムに、領収書の保管はどうしてますか?
と聞かれたときに、うちは領収書をもらうお客さんはいません、
なんて答えてると、矛盾が発覚し、不正してるのでは?と疑われるきっかけになってしまいます。

現金売上をレジロールやレジ内のデータと照合してみる

他にも、レジには色んなデータが残っていると思います。
レジのデータと申告書の売上、売上を記録した帳簿が合っているかチェックします。

さすがに、現金で受け取った際にレジを打たない、なんてことはないと思います。
レジを打ったけど、帳簿には載せなかった、なんていう行為は簡単に発見されます。

他にも、先ほどの領収書の束と帳簿は確実に照合されますし、
顧客カルテと売上の帳簿も照合されます。

この時が、一番発見されることが多い気がします。
顧客カルテの来店数と売上が矛盾している・・・なんてことはよくあるパターンです。

(年間100件以上、税務調査に同席してるので、毎年何回かそういうときがあります)

シャンプーやドライヤーなど物販の売上もチェックされる

売上に関しては、物販の売上もチェックされます。

物販の場合、どれだけ仕入れているか簡単に把握できます。
また、午前の雑談中には在庫管理についても聞かれ、だいたいどのくらいの在庫が
あるかも話ベースで把握されてます。

すると、年間でどのくらい販売してるか、
仕入先のディーラーからの明細と物販売上を比べれば、ざっくり物販売上が見えてきます。

ざっくりの売上予測に比べ、申告書上の物販の売上が少ないと、
詳しくチェックされることになるでしょう。

売上の次は、経費のチェックが始まる

美容院・理容室の税務調査

 

経費のチェックは、理容業の経営に関係ないものが入っていないか?水増しの有無がチェックされます。

よくあるのが、家庭・プライベートの出費を経費に入れてしまいました、という相談です。

・家庭での食事、スーパーのレシート
・ホームセンターでの買い物レシートに仕事用と私用が混在し、総額で申告していた
・仕事用の服だけでなく、私服も経費に入れている
・私用の車も減価償却していた
・家族旅行が旅費交通費に入っていた
・家族の携帯電話まで通信費にしていた

などと言ったものがよく見つかります(笑)

完全に私用のものは経費から除外され否認されますが(その分、税金が増える)
例えば携帯電話を仕事でもプライベートでも使っていた場合。

このような経費は、家事関連費としてルールが定められてます。
ルールを決めておかないと、なんでもかんでも経費にしたくなっちゃいますもんね。

税務調査でも、これは私用で経費として認められません!と指摘されることがあります。
そんな場合、ちゃんと経費だ!と主張さるための根拠を紹介します。

経費は、どこから家事費・家事関連費(プライベートな支払)として否認されるか?

100%私用の費用は、家事費と呼ばれ、経費になりません。

これは、所得税法45条一項に記載されています。

第四十五条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの

要は、家事上の経費(プライベート・私用な経費)は、事業所得の計算上、必要経費として認めません、と言っています。

では、仕事用と私用が混在する経費はどうなのか?

これは所得税法には記載がなく、所得税法に書かれてないことを具体的に定める所得税法施行令96条にルールが書かれています。

第九十六条 法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費

要約すると、主に仕事用に使っていて(私用の割合のほうが低い)、仕事用と私用で使った割合がはっきりとわけることができる場合、仕事用の部分を経費にしていいよ、と書いてあります。

ポイントは、2つ。
主に仕事用で使っていること。そして、
仕事用と私用の割合がはっきりとわけることができる場合、です。

例えば、車を平日は仕事で使い、休日は私用で使っている場合。
減価償却費の額を使った日数の割合で分けることができます。
平日の仕事で使うほうが多いですから、主に仕事用という条件も満たせます。
これなら経費に参入しても文句は言われません。

主たる部分とは、どれだけ仕事用なら主たると判断されるのか?

これは、所得税基本通達45条2項に記載されています。
仕事で使う割合が50%を超える場合、経費としてみとめると定められています。

 

第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。

 

青色申告の場合、50%以下でも仕事で使ってる割合で経費にできる

個人の場合、青色申告の承認申請書という届け出書類があります。
この届け出を出している場合、特典として仕事で使っている割合で経費にしていいよ、と決まっています。

所得税法施行令第九十六条二項 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費

ここでも、仕事用と私用の割合が明確にわけることができる場合と書かれています。
実地調査の現場では、これは明確に分けることができないため、経費として認めることはできない!
と調査官から指摘を受けることがあります。

その根拠がここになるわけです。

同業他社よりも交際費など経費が多いと指摘された場合の対応法

青色申告だけど帳簿を作らず、数字を集計して申告していた場合

永江 将典

公認会計士・税理士
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