重加算税の要件とは?仮装・隠ぺい・故意過失の判定基準とは?

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永江 将典

公認会計士・税理士
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重加算税の根拠と要件

重加算税の要件

重加算税の根拠は、国税通則法第68条に記載されています。

以下、引用元を載せますが、わかりにくい・・・

簡単に言ってしまえば、「隠ぺい・仮装」した書類に基づき、確定申告をした場合は、重加算税に該当します!ということが書かれています。

納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき

隠ぺい・仮装とは?

重加算税になるか、否かは調査期間が7年になるか?とほぼ同じ意味ですので、詳しくみていきましょう。
調査期間が3年か、7年かって天と地ほどの差がありますからね。

隠ぺい・仮装の定義については、過去に裁判で以下のように述べられています。

「事実を隠ぺい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏することを、「事実を仮装」するとは、所得・財産あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲すること
(和歌山地裁昭52・6.23判決)

ここが重要になってくるので、難しいかもしれませんが、頭に入れておいてください。

調査官が重加算税です!と指摘してきた場合の対応方法

重加算税と指摘された場合の対応法

重加算税を指摘されたら、まずはその根拠を税務調査官へ説明してもらいましょう。

何をもって、あなたが隠ぺい・仮装行為をしたと判断しているか、その根拠を確認します。
ときどき、単なるミスを重加算税だ!と指摘してくる調査官もいるため、注意が必要です。

隠ぺい・仮装行為とミスは明らかに違います。

隠ぺい・仮装行為は、意識して行う行為です。法律的には故意と言います。要は、わざとってことですね。

わざと確定申告で税金を少なくすることと、計算ミスにより確定申告で税金が少なくなっていたことでは意味が違います。

重加算税は、隠ぺい・仮装行為があった場合、初めて対象となります。わざと脱税を目的に税金を少なくするための行為をした場合です。

これは、過去に裁判でもよく指摘されている点で、名古屋地方裁判所の昭和55年10月13日(税資115号31頁)で、

「事実を隠ぺいする」とは、課税標準等又は税額の計算の基礎となる事実について、
これを隠ぺいしあるいは故意に脱漏することをいい、また「事実を仮装する」とは、
所得財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかの
ように装う等、故意に事実を歪曲することをいうと解するのが相当である。

と述べ、わざと隠ぺい・仮装を行った場合に重加算税に該当すると述べています。

何をもって故意(わざと)と判定するのか?

故意に隠ぺい・仮装をしたかどうか?
これは、本人にしかわかりません。

とすると、本人がわざとじゃない!という限り、重加算税の対象とならないことになってしまいます。
これでは、誰も重加算税の対象となりません。税務調査はそんなに甘くはありません。

では、どのような場合、調査官やその上司である特別国税徴収官や税務署内部の審理部門(むちゃな税務調査してないかチェックする部門)は重加算税に該当すると判断しているのでしょうか?

実は、過去に最高裁判所の裁判結果で、

「あなた、これはわざとやったでしょ!」

と誰もが言える行動(隠ぺい・仮装を外部からもうかがい得る特段の行動)がある場合は、重加算税ですよ、という裁判結果が出ています。

詳しくみてみましょう。

隠ぺい・仮装を外部からもうかがい得る特段の行動とは?

平成7年4月28日、最高裁判所の裁判結果です。
こちらにわかりやすくまとめられた記事があったので、引用します。

最判平成7年4月28日(民集49巻4号1193頁)

税金を払ってないのに、重加算税にならなかったケース

実際に、弊社で税務調査から引き受けるにあたって、重加算税にならないケースがあります。それは、無申告で税務調査が来てしまった方のケースです。

重加算税に該当せず、調査期間が5年で終わることが多いです。

依頼いただく方の中には、利益が出ており、税金を払わなければいけない状態であることはわかっていたけど、

  • 経理のことがわからなかった
  • 一人で事業をしており、暇がなかった
  • 経理を任せていた人が辞めてしまった
  • 火事・盗難ですべての資料がなくなり、どうしていいかわからなかった

といった理由で無申告になってしまっていた方がいます。税務調査の結果は、税務署からは当初ほぼすべてのケースで重加算税と指摘されますが、隠ぺい・仮装の有無について話し合い、結果として無申告となるケースがほとんどです。

なぜ無申告でも重加算税にならなかったのか?

もし重加算税を指摘され、納得できない!と思っている方は、この裁判事例をよく読んでおくことをお勧めします。

平成24年2月22日採決・国税不服審判所

ざっくり要点をまとめると、以下のような状態にもかかわらず、重加算税に該当せずと裁判結果が出ています。

  • 納税者自身は、毎月利益が出ており、確定申告をしなければいけないことも知っていました。
  • 通帳や請求書などの資料はおおむね残っており、調査にあたりすべて提出しています。
  • 申告していなかった理由は、経理に詳しくなくどう申告していいかわからなかったため。
  • 過去に商工会の指導を受け、確定申告をしていた経験がある。
  • 青色申告の届け出を提出していた
  • 税金を払えないから確定申告していなかった

最後、凄いですね。申告してなかった理由で、税金を免れるためと発言してしまってます。
でも重加算税になりませんでした。

調査に当たり、確定申告の元となる資料を隠ぺいしていたわけでもなく、仮装もしていないため、重加算税に該当せず、と結論が出ています。

こんな場合は、重加算税が確実!

重加算税の確定

これまで見てきたように、重加算税に該当するのは、隠ぺい・仮装を故意に行ったことが誰からでもわかる状態だった場合です。

でも、まだわかりにくいですよね。

そこで、税務署側も税務調査に当たって判断に迷わなくていいよう事務運営指針というものの中で事例をあげて説明しています。

法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)

1.二重帳簿を作成している場合

→申告用(利益を少なくした帳簿)と、本当の利益がわかる帳簿が作成されていた場合です。申告用の帳簿が見つかった瞬間、重加算税です。

2.帳簿、原始記録、証ひょう書類、貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書、棚卸表その他決算に関係のある書類(以下「帳簿書類」という。)を、破棄又は隠匿していること。

→帳簿をわざと捨てたり、隠して税務調査の際に見せなかった場合が該当します。火事・盗難などやむをえざる事情で帳簿がない場合は該当しません。

3.帳簿書類の改ざん(偽造及び変造を含む。以下同じ。)、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること。

→嘘の書類を作って、税金を減らした場合が該当します。取引先への反面調査などで提出資料が嘘だったことが発覚したりすると、即重加算税です。

4.帳簿書類の作成又は帳簿書類への記録をせず、売上げその他の収入(営業外の収入を含む。)の脱ろう又は棚卸資産の除外をしていること。

→わざと売上の一部を専用の隠し口座などに入金し、帳簿にも記録しなかった場合です。売上に上げるの忘れてた!という主張が通りにくいケースです。

他にも、列挙されてますが、こういうケースは故意に隠ぺい・仮装した行為とみなしますよ、という説明がされています。

重加算税=7年間遡及課税、ではない

これは、調査官の方でも知らない方がいるくらいなのですが、「重加算税=7年の調査」ではありません。重加算税と判定されても、3年で調査が終わることもあります。

7年間の税務調査をする根拠は、国税通則法70条第4項に記載されています。要件は、「偽りその他不正の行為」があったかどうかです。

重加算税:「隠ぺい・仮装」があった場合
7年遡及:「偽りその他不正の行為」があった場合

似てるけど、微妙に違います。詳しく知りたい方は、こちら↓をご覧ください。

重加算税=7年遡及ではない!税務調査が延長される根拠とは?

永江 将典

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