税務調査で明らかになった脱税事例3選
毎年、税務調査の脱税事例を国税庁が公開しています。これらの事例は、多くの場合、売上処理や経費計上の不透明さや反面調査から発覚します。そして、それに伴うペナルティは、追徴課税や法的責任など重いものです。今回は、国税庁が公開している税務調査の脱税事例の一部をご紹介したいと思います。
税務調査で発覚した脱税事例
税務調査で明らかになる脱税事例には、多くの手法が存在します。
それぞれの手法について見ていきましょう。
ケース①ダミー法人を使った脱税
売上の入金先に放置会社・休眠会社を使用する例は、よくある脱税手法の一つです。
事例としては、自社(派遣会社)の売上金を休眠会社へ入金し、売上をごまかすものです。
休眠会社の確定申告をしないことで売上金を自社へ回収する際にごまかし、消費税を脱税するという単純な例です。
このような休眠会社や放置会社は巷にはたくさんあり、悪用されることが多いです。
このケースでは派遣会社の取引先に税務調査が入った際に、派遣会社への入金に目を付けた調査官により発覚し、税務調査に発展したケースではないかと考えられます。
ケース②虚偽の住民登録
ネット事業による収入に対する所得税を頻繁に偽の引っ越しをすること等によって免れようとしたケースです。
このケースでは、引っ越しをしていないにも関わらず、繰り返し形式上引っ越ししたことにすることによって(ネットでの事業収入があることや無申告であることを隠し)、さも働いていないかのようにカモフラージュし所得税から免れたり、税務調査を受けないようにするものでした。
これは税務調査を行う税務署にはそれぞれ市町村区によって管轄が変わるという事情を知り、それをうまく悪用した例と言えるでしょう。
ケース③国外財産調書の不提出
外国で所有する財産を隠し、財産にかかる税金から逃れようとしたケースです。
日本では外国に不動産や株を所有する場合は届出をしなくてはならないルールがあります。
このケースでは、届出をせず、外国に所有する不動産や株の利益を他人の口座へ入金し、後に回収するというものでした。
こちらも入金先の口座の持ち主へ税務調査が入り、脱税が発覚したケースだと考えられます。
脱税がバレた際の具体的なペナルティ
脱税が発覚した際には、ペナルティがあります。具体的なペナルティとして、まず追徴課税が課され、それに加え遅延損害金が発生するケースが多く見られます。また、悪質と判断されれば、法的責任を追及され刑事罰が科せられる可能性も否めません。
※ペナルティ(追徴課税等)について詳しく知りたい方はこちらの記事へどうぞ
税務調査の対象になりやすい特徴
税務調査の対象になる企業や個人には、いくつかの共通する特徴が見られます。
無申告や申告漏れがある場合
無申告や申告漏れは、税務調査の対象となりやすい状況です。これは、例えば、収入や売上を過小に申告したり、まったく申告しなかった場合、問題視されます。これらの行為は税制を乱し、社会全体の公平性を損なうため、厳しく対処されます。
また、無申告や申告漏れは意図的であると判断されることが多く、重いペナルティが科される可能性があります。正しい申告を行うように心がけましょう。
高額現金取引をよく行う業種
高額現金取引をよく行う業種は税務調査の対象になりやすいです。理由としては、現金取引は追跡が難しく、売上や経費の不正申告が行われやすいという特徴があります。現金での収入は、帳簿に記載されないまま処理されるリスクが高いためです。
例えば、飲食店や小売店、建設業などが多くの現金取引を行う業種として挙げられます。これらの業種では、日々の売上や支出が現金で処理されることが多いため、収入の漏れや過少申告が発生しやすいとされています。さらに、現金取引は記録が不十分になりやすく、税務署が取引の信ぴょう性を確認するのが難しい場合があります。
現金を頻繁に扱う業種では、特に厳密な帳簿管理が求められます。
まとめ
これまでに紹介した具体的な脱税事例や、それに伴うペナルティ、税務調査の対象となりやすい特徴についてご理解いただけましたでしょうか。税務調査は誰にでも起こりうることですが、適切な対策を講じることで回避可能なケースも多くあります。適切な申告と普段からの会計処理の見直しが、長期的な信頼構築に繋がります。
参考資料:令和元年度 査察の概要
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/sasatsu/r01_sasatsu.pdf
令和2年度 査察の概要
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/sasatsu/r02_sasatsu.pdf