無申告なのに住民税の通知だけ届いたら?所得税の申告要否と対応手順
住民税の納税通知書が届いたときに確認すること
確定申告をしていないのに住民税の通知が届くと、「自治体が計算してくれたから申告は不要なのか」「所得税も払った扱いになるのか」と迷うことがあります。結論からいうと、住民税の通知が届いたことだけでは、所得税の申告が済んだことにも、申告義務がないことにもなりません。給与支払報告書などを基に、確定申告をしていなくても住民税が計算される場合があるためです。まず通知の年度と所得の内訳を読み、自分の収入資料と照合してください。この記事では2026年10月時点の制度を踏まえ、所得税の申告が必要な場合と住民税だけの申告が必要な場合を分け、通知を受け取ってからの確認順序を説明します。納付期限への対応と、申告漏れの整理は並行して進めましょう。
結論:住民税と所得税は別に確認する
所得税は国税で、住民税は自治体が扱う地方税です。個人住民税は原則として前年の所得を基に課税されるため、2026年度の通知なら、通常は2025年中の所得を確認します。通知書の「年度」と、確定申告書の「年分」は同じ数字とは限りません。
勤務先が自治体に給与支払報告書を提出している場合、その情報を基に住民税が課税されることがあります。公的年金等の情報や、過去に自分が提出した住民税申告書が基になっている場合もあります。通知が来た理由を、所得税の申告の有無だけで推測しないようにしましょう。
給与だけが通知に載っていて、副業の所得が反映されていない可能性もあります。逆に、所得税の確定申告が不要で、住民税の計算も適切な場合もあります。「無申告」と思っていても、年末調整等で所得税の精算が済んでいることがあるため、申告義務から順に確認します。
最初に通知書のどこを見るか
まず、書類の名称を見てください。納税通知書、勤務先を通じて受け取る特別徴収税額の通知、申告書の提出案内、督促状では、意味と対応が違います。税額が記載された通知なのか、所得を申告するよう求める案内なのかを分けます。
次に、課税年度、氏名、所得の種類と金額、所得控除、税額控除、年税額、徴収方法、各期の納期限を確認します。所得欄の金額は入金総額とは限らず、給与なら給与所得控除後、事業なら収入から必要経費を差し引いた所得として載る点に注意してください。
給与天引き分と自分で納める分が分かれている場合は、年税額と今回の納付額を混同しないようにします。退職・転職や申告内容の変更で通知が複数届いたときも、先に届いた納付書を独断で破棄せず、現在有効な税額と納付状況を自治体へ確認しましょう。
所得税の20万円ルールを誤解しない
給与所得者の一部には、給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合に所得税の確定申告を要しない取扱いがあります。代表的には、給与収入が2,000万円以下で、給与を1か所から受け、その全部が源泉徴収の対象となる場合です。ただし、同族会社役員の賃貸料など別途申告を要する事情がないかも確認します。
これは、誰でも副収入20万円まで非課税になる制度ではありません。副業が物販や受託業務なら、基本的に判定するのは売上そのものではなく、必要経費を差し引いた所得です。給与を複数の勤務先から受ける場合は、年末調整されなかった給与の収入金額を使うなど判定が違います。国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」で条件を確認できます。
この所得税の申告不要制度が使えても、住民税には同じ20万円の申告不要制度はありません。例えば横浜市の市民税・県民税の申告案内でも、一定の副収入が20万円以下の場合の住民税申告を案内しています。実際の申告先は、原則としてその年度の1月1日に住所がある自治体です。
説明用の仮定例1:所得税は申告不要でも副業分の住民税申告が必要
2025年の給与収入が500万円、給与は1か所で年末調整済み、ほかに申告を要する事情がない会社員を仮定します。副業の原稿作成による収入が30万円、必要経費が12万円であれば、副業所得は18万円です。
ほかに給与・退職所得以外の所得がなく、所定の要件を満たせば、20万円以下の取扱いにより所得税の確定申告が不要となる場合があります。しかし、給与だけで計算された住民税通知が届いていても、副業所得18万円の住民税申告は別に必要です。居住自治体に、反映状況と必要な申告を確認します。
説明用の仮定例2:事業所得が住民税通知に載っていない
給与のほかにネット販売を行い、年間売上150万円、必要経費70万円で事業等の所得が80万円あったとします。通知の所得欄には給与所得しかなく、本人は所得税の申告もしていません。150万円-70万円=80万円で、前例のような20万円以下の取扱いには当たりません。
まず、在庫や返品などを含めて80万円という所得計算が適切かを点検し、給与や控除も含めて所得税の申告要否と税額を確認します。確定申告を行えば、通常、その情報が住民税の課税にも利用されます。通知が変更されるまでの間の納付方法は、自治体に相談してください。
申告を直すときは二重計上と納付の行き違いに注意
所得税の確定申告を行った人は、原則として同じ内容の住民税申告を別途する必要はありません。ただし、期限後の申告が自治体の当初課税に間に合わない場合などがあります。すでに通知があるときは、申告した年分、提出日、追加した所得を自治体へ伝えると確認が進みます。
先に住民税申告をした後で所得税の申告をする場合も、同じ所得を二つの別収入として説明しないようにします。先の申告書の控えと、後の申告書を用意し、同じ取引を申告したものだと対応が分かるようにしてください。
税額の変更がありそうでも、連絡しただけで現在の納期限が延長されるわけではありません。通知の税額に疑問があるときは、納付すべき金額や変更後の精算を担当窓口に確認します。所得税を税務署に納めても、その支払が住民税の納付にそのまま振り替わるわけではありません。
また、医療費控除などで所得税の還付申告をする場合には、20万円以下の副業所得も原則として申告に含めます。申告不要制度は、申告書の中で特定の副業所得だけを自由に省略できるという意味ではありません。
通知を受け取ってからの準備手順
1.年度と年分を対応させる
通知の年度と、その計算対象となった前年の収入資料を並べます。転居している場合は、対象年度の1月1日の住所も確認してください。現在住んでいる市区町村と課税した自治体が異なっていても、それだけで誤りとは限りません。
2.収入資料を漏れなく集める
すべての勤務先の源泉徴収票、年金の源泉徴収票、売上明細、経費資料、保険料等の控除資料を用意します。事業や副業がある人は、生活費の入出金と売上・経費を分け、振込手数料等が引かれる前の売上額も確かめます。
3.申告した記録を確認する
所得税の申告書控え、e-Tax受信通知、住民税申告書、勤務先の年末調整資料を探します。会計ソフトで作成しただけの申告書と、実際に提出した申告書は違います。提出状況が不明なら、作成画面だけで申告済みと判断しないでください。
4.所得税と住民税の窓口を使い分ける
所得税の申告要否や期限後申告は税務署へ、通知の計算根拠や住民税申告は自治体の担当窓口へ確認します。問い合わせ時には、通知年度、所得の種類、申告済みの手続を先に伝えると、質問の対象が明確になります。
5.期限後申告と資金の準備を進める
所得税の申告義務があった場合は、対応する年分で期限後申告を行います。国税庁の確定申告を忘れたときの案内では、期限後申告による税の納期限は申告書を提出した日とされています。加算税・延滞税が生じる場合もあるため、住民税だけの資金計画にしないでください。
よくある質問
Q1.住民税を払えば所得税の無申告も解消しますか?
A1.解消しません。税目と申告先が異なります。住民税の納付済み額を所得税からそのまま差し引くこともできません。所得税について申告義務があったかを別に確かめます。
Q2.通知に副業所得が載っていなければ申告不要ですか?
A2.載っていないことは申告不要の根拠になりません。自治体がその所得をまだ把握していない場合もあります。売上と経費を整理し、所得税の確定申告か住民税申告のどちらが必要か確認します。
Q3.給与だけで年末調整済みでも確定申告が必要ですか?
A3.年末調整で所得税の精算が済み、ほかに申告を要する事情がなければ、通常は不要です。ただし、複数の給与や別の所得がある場合などは判定が変わるため、全収入を確認してください。
Q4.住民税の税率から所得税も逆算できますか?
A4.単純にはできません。所得税と住民税では控除額や税率の仕組みが異なります。通知額だけから未納所得税を推定せず、該当年分の所得・控除・源泉徴収税額で計算します。
Q5.税務署への申告後も元の納付書を使いますか?
A5.自己判断で使い続けたり破棄したりせず、自治体に確認します。変更通知の発行時期や納付済み額の扱いによって案内が変わります。問い合わせ中も、納期限を放置しないようにしてください。
Q6.2026年の収入が減ったら2026年度の住民税も下がりますか?
A6.通常は前年所得に基づくため、今年の収入減が直ちに税額へ反映されるわけではありません。納付が難しい場合は、自治体の納付相談や減免等の対象にならないか、個別の要件を確認します。
Q7.税理士への相談はどんな場合に役立ちますか?
A7.複数年の所得が抜けている、給与と事業の資料が混在する、所得区分や経費の判断が難しい場合です。通知書と申告履歴を示し、所得税と住民税の手続の順番を相談すると整理しやすくなります。
まとめ
住民税の通知が届いても、所得税の申告が済んだとは限りません。通知の年度、所得の内訳、年末調整や申告の記録を確認し、不足する所得を整理しましょう。所得税の申告不要制度と住民税の申告義務を区別し、申告の訂正と現在の納付期限への対応を並行して進めることが大切です。
参照した一次資料:
