無申告は売上いくらから税務調査の対象?金額だけで判断できない理由

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売上の大小より先に確認したい申告義務と帳簿の整え方

副業や個人事業の申告をしていないと、「売上が少なければ税務調査は来ないのか」「100万円や1,000万円を超えると危ないのか」と気になることがあります。しかし、一定の売上以下なら調査対象にならないという保証はありません。所得税の申告義務、消費税の納税義務、税務署が調査先を選ぶ判断は、それぞれ別の問題です。確認すべきなのは、取引を正しく集計したうえで、年ごとの所得や適用制度から申告の必要性を判断することです。この記事では2026年10月時点の制度に基づき、主に個人事業と副業を対象に、売上・所得・課税売上高の違いと、無申告に気付いたときの準備を説明します。調査の確率を推測するより、申告状況を確かめるために数字を使いましょう。

結論:調査対象を分ける一律の売上基準は示されていない

国税庁は、資料情報を収集・分析し、調査や指導に活用していることを公表しています。国税庁レポート2025の適正・公平な課税・徴収でも、法定調書、情報照会で収集した情報、調査で把握した情報などの利用が説明されています。

この公表資料から、「年間売上が何円以上なら必ず調査する」「何円未満なら調査しない」という境界は読み取れません。無申告であっても売上額だけではなく、所得、取引情報、申告との整合性などを確認する必要があります。ここで個人ごとの調査確率を数字で示すことはできません。

公表された調査実績の平均売上や追徴税額があっても、それは実際に選定された対象者の結果です。調査されていない人を含む全体の確率ではなく、自分が対象にならない根拠には使えません。まず「申告が必要だったのに未提出か」を調べましょう。

売上、所得、税額を区別する

売上は商品販売やサービス提供による収入の規模を表します。所得は、事業所得や雑所得であれば、原則として収入からその収入を得るために必要な経費を差し引いて計算します。税額はさらに所得控除、税率、税額控除、源泉徴収税額などを踏まえて求めるため、売上額だけでは決まりません。

同じ売上でも、仕入れの多い小売業と、仕入れが少ない受託サービス業では所得が違います。また、手元に残る現金と所得も同じではありません。借入金の返済元本は通常そのまま経費にならず、設備購入も内容によって減価償却を通じて経費になります。

売上の入金が翌年でも、その年の収入に計上すべき取引があります。逆に、通帳への入金でも、自分の口座間の振替や借入金は売上ではありません。売上規模を調べる最初の段階から、入金合計をそのまま使わないことが重要です。

20万円はすべての事業者に使える基準ではない

所得税では、一定の給与所得者について、給与・退職所得以外の所得が20万円以下なら確定申告を要しない取扱いがあります。国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」が示すように、給与収入、給与の支払元の数、源泉徴収の状況などの条件で判断します。

この取扱いを専業の個人事業者へそのまま適用することはできません。また、副業が給与の場合と、事業・雑所得の場合とでは、判定に用いる金額が異なります。副業の「入金が20万円以下だから大丈夫」と考える前に、所得の種類を確認してください。

所得税の申告が不要でも、住民税の申告を要する場合があります。医療費控除等のために所得税の確定申告を行うときは、20万円以下の副業所得も原則として申告に含めます。20万円は税務調査の対象を分ける基準でも、所得そのものを非課税にする基準でもありません。

消費税の1,000万円も調査の基準ではない

消費税では、基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら原則として納税義務が免除されます。個人事業者の基準期間は通常その年の前々年です。したがって、今年の売上が1,000万円以下だから今年は必ず免税、とは限りません。

さらに、インボイス発行事業者の登録、特定期間の課税売上高、課税事業者の選択等によって、基準期間が1,000万円以下でも免除されない場合があります。特定期間は個人事業者なら通常前年の1月1日から6月30日で、国内の個人事業者等では課税売上高に代えて給与等支払額による判定も可能です。国外事業者にはこの代替判定が使えないなど例外があります。

詳しい条件は国税庁「納税義務の免除」で確認できます。新設法人、高額特定資産の取得等による別の制限もあるため、売上表だけで判定を終えないことが大切です。インボイス登録をきっかけに課税事業者となった場合も、所得税とは別に消費税の申告状況を確認します。

説明用の仮定例1:売上より所得を確認する副業

給与収入500万円で、給与は1か所から受け、年末調整済みの会社員が、2025年に副業で商品を販売したとします。売上80万円に対し、売れた商品の原価や販売手数料など必要経費が55万円なら、副業所得は25万円です。

80万円-55万円=25万円となり、ほかに特殊な事情がない前提では、20万円以下の申告不要の取扱いには当たりません。売上が100万円未満でも、それだけで所得税の申告が不要になるわけではありません。なお、55万円には私用分や売れ残った商品の仕入れをそのまま混ぜず、必要経費として適切かを確認します。

説明用の仮定例2:売上が少なくてもインボイス登録している

個人のデザイナーが以前からインボイス発行事業者として登録しており、2026年の課税売上高が400万円、2024年も1,000万円以下だったとします。売上規模だけを見れば小さくても、登録期間中は基準期間による免税の扱いにはなりません。

所得税の帳簿を整えていても、消費税申告を忘れていないか別に確認します。納付税額の計算方法は、一般課税、簡易課税、適用要件を満たす特例などで異なります。登録した理由や時期、過去の売上、届出の有無を確認せず、400万円に一定割合を掛けて納付額を決めることはできません。

少額でも記録を整える意味

口座や販売サービスを複数使っている場合、各サービスの売上は小さくても、合算すると所得が変わることがあります。同じ事業の売上をサービスごとに分けて申告要否を判定しないでください。手数料控除後の入金だけを集めると、売上と経費の双方を見落とすこともあります。

現金取引は、売上日報、予約記録、レシートの控え、入金記録などを対応させます。銀行に預けた金額と現金売上が一致しなくても、釣銭、経費への支払、生活費への引出しなどを分けて説明できるようにします。現金だから把握されないという前提は持たないようにしましょう。

赤字と思っている場合も、所得計算が正しいかを確かめます。年末在庫、私用分、設備の取得、未収売上を見直すと結果が変わることがあります。特に「通帳残高が減ったから赤字」という判断は、借入返済や生活費が混ざると実際の所得とずれます。

無申告に気付いたときの準備手順

1.全収入の入口を一覧にする

銀行、現金、販売サイト、決済サービス、報酬の支払元を列挙し、対象年ごとに利用期間を確認します。廃止した口座や利用をやめたサービスも対象です。売上明細を取得できる期限がある場合は、先にダウンロードします。

2.入金額から取引額へ戻して照合する

販売明細と精算書を使い、売上、返品、値引き、手数料、未入金残高を分けます。取引日と入金日を並べ、年末の売上が翌年に入金されたものを特定します。集計の重複を防ぐため、注文番号や請求番号を目印にしてください。

3.必要経費の根拠を確かめる

支払日だけでなく、何のための支出か、事業と私生活の両方に使っていないかを確認します。家賃や通信費の家事按分は、利用実態に基づく説明を残します。割合を一律に決めたり、領収書のない支出を都合よく増やしたりしないでください。

4.税目ごとに申告状況を点検する

所得税は他の所得や控除を含めて、消費税は基準期間・登録・届出などを含めて確認します。住民税の通知が届いていても、所得税の申告済みとは限りません。申告書の控えと受信通知を年分ごとに整理しましょう。

5.期限後申告と納付の準備をする

申告が必要だった年は、該当年の制度で計算して手続を進めます。加算税や延滞税の有無も確認し、資金が足りない場合は税務署へ早めに納付相談をします。税務署からすでに連絡がある場合は、その日時・内容を税理士に伝え、申告の進め方を相談してください。

よくある質問

Q1.売上100万円以下なら調査されませんか?

A1.そのような保証はありません。調査の有無を売上の一つの数字で判断できず、申告義務も所得や他の収入等で変わります。少額でも、まず正しい所得計算と申告要否の確認が必要です。

Q2.取引先が支払調書を出していなければ申告不要ですか?

A2.不要にはなりません。相手の書類提出義務と自分の所得税申告義務は別です。支払調書を受け取っていなくても、請求書や入金明細から収入と源泉徴収額を確認します。

Q3.赤字なら何の申告も不要ですか?

A3.一律には判断できません。他の所得や税目、利用する制度によって異なります。所得税で納付税額がなくても、消費税の申告義務や住民税の申告を別に確認する必要があります。

Q4.開業届を出していなければ事業の申告は不要ですか?

A4.開業届の有無だけで申告義務はなくなりません。実際の収入や活動内容に基づいて判断します。必要な届出の整理と、すでに生じた所得の申告は分けて進めましょう。

Q5.売上を複数口座で受け取ると判定は別になりますか?

A5.同じ人に帰属する所得は、口座ごとに独立した申告不要枠があるわけではありません。売上を合算し、口座間振替を二重に数えないようにして年間の所得を計算します。

Q6.2026年の売上が1,000万円以下なら消費税は免税ですか?

A6.今年の売上だけでは決まりません。個人なら通常は2024年の課税売上高、特定期間、インボイス登録、各種届出等を確認します。免税判定と税務調査の選定も別の問題です。

Q7.無申告に気付いて自主申告すれば調査はありませんか?

A7.自主申告後でも内容を確認されることはあります。調査がないことを目的にするのではなく、正しい申告と納付に向けて資料を整えましょう。年数が多い場合や計算が難しい場合は税理士へ相談してください。

まとめ

無申告で調査対象になるかを分ける、一律の売上基準はありません。20万円は一定の給与所得者の申告不要制度、1,000万円は消費税の免税判定に関係する数字であり、いずれも調査されない境界ではありません。全取引を集計し、税目と年分ごとの申告義務を確認して、必要な手続を進めましょう。

参照した一次資料: