税務調査の連絡が来たら何をする?電話の確認事項と初動の手順
最初の連絡から調査当日までに、落ち着いて整えること
税務署から突然電話が来ると、「今すぐ説明しなければならないのか」「指定された日に必ず応じるのか」と焦ることがあります。最初にすることは、相手の所属・氏名と用件を確かめ、対象税目、期間、日程、求められた資料を記録することです。分からない取引を記憶だけで説明したり、慌てて帳簿を書き換えたりする必要はありません。一方、連絡を放置せず、確認して回答する予定を決めることは重要です。この記事では2026年10月時点の税務調査手続に基づき、最初の電話で聞く内容、税理士への共有、日程調整、資料保全と点検の順序を説明します。無予告で訪問を受けた場合の確認事項も整理します。
結論:連絡の記録、相談先への共有、元資料の確保から始める
初動で優先したいのは、何の確認が予定されているかを正確に把握することです。税務署からの電話には、調査の連絡だけでなく、行政指導として申告の見直しを求める連絡もあります。国税庁の税務調査手続に関するFAQでは、具体的な手続に入る前に、調査と行政指導のどちらかを明示するとされています。
受けた説明が曖昧なら、その区分を確認します。行政指導だから回答不要という意味ではなく、調査との区別が修正申告時の加算税等を考える材料になるためです。電話の回数や口調から、自分で調査ではないと決めつけないようにしましょう。
顧問税理士がいる場合は、電話を受けた日時と内容を早めに共有します。税理士がいない場合も、申告書と帳簿の所在を確認すれば、その後の相談を具体的に進められます。まず全体像を把握し、資料の探索と税務判断を分けて行います。
電話で残したい情報
聞き取る内容は、次のように項目を決めておくと整理しやすくなります。すべてを聞けなかった場合は、未確認欄を残して後から確認します。
- 電話の日時、受けた人、税務署等の名称、担当部署、担当者名
- 調査か行政指導か、連絡の目的、対象者が本人か会社か
- 対象税目と年分・事業年度、確認する帳簿書類等の範囲
- 調査開始の候補日時、場所、立会い予定者、予定人数
- 準備する資料、連絡窓口、次回回答する事項と時期
実地調査の事前通知は原則として電話等で行われます。「書面が届いていないから正式な通知ではない」とは限りません。また、何日前までに通知するという一律の日数が定められているわけではありません。
その場で書き切れなければ、重要事項を復唱して確認します。「法人税と消費税の何期分か」「訪問開始時刻は何時か」など、具体的に確認しましょう。個人事業を法人化している場合は、個人と法人のどちらが対象か、両方なのかを曖昧にしないことが大切です。
相手の確認と日程調整を行う
税務職員を名乗る連絡でも、不審な点があれば即答せず、所属・氏名・連絡先を聞いて一度電話を切ります。国税庁サイトで確認した税務署の代表番号など、独立して確認した窓口から問い合わせてください。相手が伝えた番号だけを根拠に本人確認を済ませないようにします。
日程が合わない場合は、具体的な理由と代替候補日を伝えます。入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情などに限らず、合理的な理由があれば変更を協議する取扱いです。税理士の予定や資料準備の状況も共有しますが、希望日へ必ず変更されるとは限りません。
候補日が決まったら、開始日時だけでなく場所も確認します。店舗営業中で資料を広げる場所がない、帳簿が別拠点にあるなどの事情は早めに伝えましょう。事情を知らせないまま当日を迎えると、資料確認が進まず、追加対応が必要になりやすくなります。
最初の資料点検は、提出済みの申告書から始める
準備する資料は、通知内容と事業の状況に合わせて決めます。まず対象年分の申告書控え、決算書・収支内訳書、総勘定元帳、仕訳帳をそろえます。続いて、請求書・領収書・契約書、銀行・カード・決済サービスの明細、給与台帳など、取引を裏付ける資料の所在を確認します。
最初からすべてを並べ替える前に、何がどこにあるかの一覧を作ることが有効です。紙は年度と種類、データは保存先と閲覧方法を記載します。保管場所が税理士事務所や外部倉庫なら、取り寄せにかかる時間も確認してください。
申告後に会計ソフトの数字を変更している場合は、提出済み申告書と現在の帳簿との差を調べます。申告時点の帳簿があれば別に保存し、訂正した理由と資料を対応させます。調査直前の大量の上書きで、何が変わったか分からなくすることは避けましょう。
また、対象期間より前に取得した固定資産の資料など、当期の金額を確かめるために過去の記録が必要になることがあります。最初の通知対象外というだけで、その資料が無関係とは限りません。何を確認するための依頼かを確かめて対応します。
誤りを発見したときは、放置せず根拠を確認する
資料を点検して売上漏れや私用経費を見つけたら、対象取引、年分、元の記帳、正しいと考える処理を一覧にします。複数年に影響するか、既に翌年へ計上されていないかなども確認します。単に帳簿だけ直しても、提出済みの申告が自動で訂正されるわけではありません。
修正申告の時期は加算税の判断に関係しますが、「調査日の前に出せば加算税はゼロ」とは言えません。調査通知の前後、更正を予知していたか、当初の申告状況などにより扱いが異なります。税務署からの電話メモを保存するのは、この経緯を確認するためにも重要です。
延滞税などが生じる場合もあるため、誤りが明らかなのに放置する対応は避けます。自分で結論を出しにくい場合は、資料と発見の経緯を税理士へ共有し、正確な修正と納付の準備を進めてください。書類の廃棄、取引先への口裏合わせ、過去に存在しなかった証拠の作成は行わないことが前提です。
初動を具体化する二つのケース
ケース1:重要な納品日と調査候補日が重なった(説明用の仮定例)
小規模な制作事業者が、調査候補日に大型案件の納品と顧客への説明を予定していたと仮定します。事業主本人しか対応できず、その日の変更が難しい状況です。
この場合は「忙しいので無理です」とだけ答えず、本人が対応できない理由と、対応可能な別日を複数伝えます。同時に、申告書や帳簿の準備状況、税理士の立会い可能日を確認します。変更の可否は協議によるため、回答が来るまでは元の日程が変更済みと扱わないようにします。
日程の記録には、最初の候補日、変更を申し出た日、合意した日程を残します。社内の担当者にも共有し、別の人が古い予定に基づいて対応しないようにしてください。
ケース2:申告書と現在の売上集計に差があった(説明用の仮定例)
申告済み決算書の売上が900万円、現在の会計ソフトでは930万円と表示されていると仮定します。差額は30万円ですが、これだけでは売上漏れと確定しません。
仕訳の変更履歴を確認すると、申告後に追加した30万円が、既に売掛金として計上した取引の入金を再度売上登録したものかもしれません。反対に、申告時に記載漏れだった別の売上という可能性もあります。請求書番号、取引日、納品内容、入金を照合してから判断します。
差額を消すために仕訳を削除するのではなく、なぜ差が生じたかを記録します。必要な訂正と申告への影響が分かるように、申告時の資料と最新の集計を両方残しておきます。
当日までの準備手順
- 最初の連絡内容を記録し、本人確認、対象税目・期間、調査か行政指導かを確認します。
- 税理士と経理担当者に共有し、日程と窓口を調整します。専門家へ新たに依頼する場合は、対象期間と資料量を伝えます。
- 元の帳簿・証憑・データを確保します。紛失している資料は、再取得先と取得予定を一覧にします。
- 申告書と帳簿、帳簿と入出金を点検し、不一致は原因を調べます。分かった事実と未確認の事項を分けます。
- 当日の説明担当、資料の置き場所、データの閲覧方法を決めます。回答待ちの事項を管理する表も用意します。
説明担当者には、事実を把握している範囲で答えてもらいます。営業担当なら契約や納品、経理担当なら入力や精算の流れなど、役割に応じた情報を準備します。答えをそろえるための口裏合わせではなく、同じ資料を確認して認識の違いを解消することが目的です。
当日すぐに分からない質問には、何を調べれば分かるかを伝え、回答方法と予定を相談します。追加資料を提出するときは、提出日、資料名、対象期間を記録し、写しを手元に残します。こうした管理を最初から行うと、対応済みと未対応の混同を防げます。
無予告で訪問を受けた場合
実地調査は原則として事前通知がありますが、事前通知により正確な税額等の把握が難しくなるおそれなど、法令の要件に該当すれば通知なしで行われる場合があります。予告がないことだけで偽物や違法と判断しないでください。
まず職員の身分証明書等を確認し、対象税目・期間、調査目的を聞きます。税理士がいる場合は速やかに連絡し、現在の事情を説明します。通常の税務調査と、許可状に基づく査察の強制調査は手続が異なるため、同じ対応が常に通用するとは考えず、どの手続かを把握することが重要です。
よくある質問
Q1. 電話に出られなかったらすぐ不利になりますか?
A1. 一度出られなかったことだけで結論が決まるものではありません。着信や伝言を確認し、公式の連絡先を通じて用件を確かめ、速やかに折り返します。
Q2. 調査の通知は書面で届きますか?
A2. 実地調査の事前通知は原則として電話等で行われます。希望すれば必ず通知書が交付されるわけではないため、聞き取った内容を自分でも記録してください。
Q3. なぜ自分が選ばれたかを教えてもらえますか?
A3. 調査の目的は通知事項ですが、調査対象に選んだ具体的な理由は、事前に説明する事項とされていません。対象税目・期間と準備資料の確認を進めましょう。
Q4. 税理士が決まるまで連絡を無視してよいですか?
A4. 無視せず、選任中であることや必要な準備を伝えて日程等を相談します。選任したら、税務代理の手続と連絡窓口を確認してください。
Q5. 資料が一部ない場合はどうしますか?
A5. 何が不足しているかを特定し、再取得できる記録を探します。保存状況と取得見込みを説明し、存在しない資料を作ったり、記憶だけで金額を埋めたりしないでください。
Q6. 調査前に修正申告すれば加算税はかかりませんか?
A6. 訪問前というだけでは判断できません。調査通知の有無や更正の予知などを確認します。本税に加え、延滞税や加算税が生じる可能性を含めて検討してください。
Q7. 分からない質問には何と答えればよいですか?
A7. 分からないことを明示し、資料や担当者に確認して回答する方法を相談します。推測を事実として断言せず、確認事項と回答予定を記録しておきましょう。
まとめ
税務調査の連絡を受けたら、相手と用件を確認し、対象税目・期間、日程、必要資料を記録します。税理士等への共有と元資料の確保を進め、不一致は根拠を調べてから訂正しましょう。初動の目的は、慌てて結論を出すことではなく、正確に説明できる準備を整えることです。
