税務調査の対象は誰?確率の読み方と調べられる内容・準備を解説
税務調査は自分にも来る?個人事業主・法人が確認したい対象と調査内容
【この記事のポイント】
税務調査は、個人事業主や副業のある会社員も対象になります。売上が少ないという理由だけで、対象から外れることはありません。備えの基本は、売上・経費・資金移動の3点を確認することです。申告書の数字を、帳簿や取引資料で説明できる状態に整えます。全国の調査件数だけでは、自分に調査が来る確率は分かりません。調査には訪問による確認のほか、電話や文書での確認もあります。数字の意味を分けて読むことが、準備の優先順位を決める第一歩です。
夜、同業者の「税務調査が来た」という投稿を見て、検索窓に自分の業種を入れ直す。「この売上でも来る?」「昔の経費まで見られる?」。確率を調べても、安心しきれない。そんなときは、対象の考え方と確認される資料を分けて考えると、今日点検する場所が見えてきます。
調査の対象、統計の読み方、確認される資料を整理し、自分で進める準備と税理士に相談する境目を確認します。
今日のおさらい:要点3つ
- 小規模・副業・赤字という理由だけで、調査対象から外れるわけではありません。
- 全国の件数や申告漏れの割合は、そのまま自分の調査確率にはなりません。
- 売上・経費・口座の動きを照合し、説明できない点から相談を進めます。
この記事の結論
- 最も重要なのは、申告した数字と取引の実態が一致していることです。
- 調査の確率を探すより、資料で説明できない取引を見つける方が準備は進みます。
- 連絡が来ている、無申告がある、売上漏れに気付いた場合は、早めの個別相談が必要です。
税務調査の対象と「来る確率」をどう考えるか
個人事業主・副業・法人で、対象になる考え方は共通
税務調査は、申告内容や納税義務を確認するために行われます。法人だけの話ではありません。個人の事業、不動産賃貸、副業なども確認の対象です。「この売上以下なら調査されない」という一律の安全ラインで判断しないことが大切です。
国税庁の令和6事務年度の所得税及び消費税調査等の状況では、富裕層、海外投資、インターネット取引、無申告者などへの取組が示されています。所得税の無申告者への実地調査は、特別・一般調査で4,812件でした。
ただし、ネット販売をしているだけで申告に問題があるわけではありません。取引形態と申告の正しさは別です。赤字の法人でも、売上や経費の計上、消費税などの確認事項は残ります。
まず点検したいのは、現金売上を記録しているか、複数の販売先の売上を集計しているか、事業と私生活の支払いを区分しているか。この3点です。これは調査に選ばれる順番ではなく、自分で申告を見直すための点検項目です。
調査件数と確率は別物。分母と調査の種類をそろえる
2026年10月21日時点で確認できる全国の令和6事務年度の実績は、2024年7月から2025年6月の集計です。
| 区分 | 件数 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 所得税の実地調査 | 46,896件 | 特別・一般調査と着眼調査の合計 |
| 所得税の簡易な接触 | 689,440件 | 文書・電話・来署依頼などによる確認 |
| 法人税の実地調査 | 約54,000件 | 法人に対する実地調査の規模 |
所得税の数字は前掲の調査資料、法人税は国税庁レポート2026・資料編によります。簡易な接触には、添付書類の提出依頼なども含まれ、訪問調査と同じ意味ではありません。
法人税は、同資料の申告件数322万件で実地調査約5.4万件を割ると、単純比率は約1.7%です。ただし、調査と申告の集計対象は一致しないため、各社の年間当選確率のようには使えません。これを逆算して「約60年に1回来る」と考えるのも誤りです。
個人についても、給与や年金の還付申告を含めるか、事業所得者だけを数えるかで分母が変わります。全体の数字から「自分の確率は1%以下」と決めつけないこと。申告内容などを検討して選ぶ調査は、全員が同じ条件の抽選ではないからです。
公開された2つの体験から分かる、調査前後の変化
正直なところ、確率の数字だけでは気持ちは落ち着きません。ここでは、税理士法人エールの公式サイトに掲載された体験を、確認できる範囲で要約します。
1つ目は、永江税理士本人の体験です。公式の会社概要には、税理士事務所を始める前の2010年、会社員として働きながら不動産所得を申告していた時期に、調査を受けた経緯が記されています。私的な支出を経費に混ぜていたことなどが不安につながり、当日は交通費や家賃等の経費割合、帳簿との不一致を確認されました。結果として追加納税が生じています。知識以前に、取引の実態を正しく記録する必要性が伝わる体験です。
2つ目は、公式サイトの「お客様の声」に掲載された、東京都の建設会社の経理スタッフS様の体験です。当初は社長が短期間で終わると考えていましたが、同業者の話をきっかけに税理士へ立会いを依頼。代表者への聞き取り後は、帳簿確認への対応を税理士が担い、社長とスタッフは通常業務へ戻れたと述べています。
「社長も、私たちも通常の業務に戻れて」という現場の声。税額だけでなく、仕事に戻れる時間にも依頼の価値があります。ただし、これは個別の経験であり、同じ日数や結果を約束するものではありません。
税務調査で調べられる内容と、今できる準備
帳簿だけでなく、売上・経費・入出金のつながりを見る
確認の中心は、申告した金額と実際の取引とのつながりです。資料を大量に並べるだけでなく、「この数字は何を合計したものか」をたどれるようにします。
| 確認する内容 | そろえておきたい資料 | 自分で点検する点 |
|---|---|---|
| 売上の記録 | 請求書、レジ記録、販売履歴 | 現金・振込・決済サービスの集計漏れ |
| 経費の実態 | 領収書、契約書、作業記録 | 支払先、仕事内容、事業との関係 |
| 資金の動き | 通帳、入出金明細、借入資料 | 売上、借入、立替金などの区別 |
| 在庫や設備 | 棚卸表、購入資料、資産台帳 | 数量、取得時期、帳簿との対応 |
例えば比較用の仮定として、販売額10万円、手数料3,000円、入金9万7,000円の取引を考えます。販売額と入金額が違うこと自体は異常ではありません。販売明細、手数料明細、入金を対応させれば、差額の理由を説明できます。入金額だけで集計していた場合は、売上や手数料の処理を確認する必要があります。
実は、法人の調査でも代表者個人の口座が確認される場合があります。国税庁の税務調査手続FAQでは、事業との関連が疑われる個人預金の通帳も、必要な範囲で提示を求める対象になると説明されています。「個人名義だから無関係」とは限りません。
よくある失敗は、帳簿の数字だけを合わせること
よくあるのが、「領収書があるから説明は不要」と考えてしまうことです。例えば、飲食代なら支払日と金額だけでなく、誰と何のために会ったのかも確認しておきます。仕事と私用が混じる通信費などは、事業に使った割合をどの資料から求めたかが大切です。
税務調査を意識して帳簿を整える際も、根拠のない数字でつじつまを合わせてはいけません。入力を訂正するなら、元の資料、誤りの内容、訂正理由を残します。資料が足りなければ、取引先への再発行依頼や、決済履歴の取得から着手。説明できる部分と、確認中の部分を分けましょう。
当日の受け答えも同じです。記憶が曖昧なら、推測で即答するより、資料を確認して回答する方が正確です。回答例は「その金額は明細を確認し、確認後にお伝えします」。これは会話の例であり、実際のお客様の発言ではありません。
ケースによりますが、まず1か月分の売上と入金を照合すると、ずれの原因を探しやすくなります。最初から全年度を一度に片付けようとせず、確認の手順をつくってから対象期間へ広げる方法です。
自分で対応するか相談するか。比較したい4つの判断基準
「相談したら、その場で契約を迫られないだろうか」。初めて税理士を探すなら、その警戒心も自然です。判断基準は、資料の量、説明の難しさ、調査までの時間、費用と依頼範囲の4つです。
| 選択肢 | 利点 | 確認したい負担・条件 |
|---|---|---|
| 自分で対応 | 報酬負担を抑え、取引を直接説明できる | 資料整理や税務上の判断を自分で行う |
| 顧問税理士へ依頼 | 過去の申告や事業の経緯を共有しやすい | 調査対応の範囲と追加報酬を確認する |
| 調査対応を別の税理士へ依頼 | 個別の論点について意見を聞ける | 資料引継ぎや顧問税理士との役割調整が必要 |
見積もりは金額だけでなく、事前確認、当日の立会い、追加資料への対応、修正申告の作成まで含むかを比較します。誰が担当し、追加料金が生じる条件は何か。ここが曖昧なら、契約前に質問して構いません。
すでに調査の連絡があり資料を説明できない、申告していない年がある、売上漏れが見つかった。こういう人は今すぐ相談すべきです。一方、連絡前で資料を確認できる状態なら、今から申告内容の点検を始められます。調査の連絡後でも、準備や相談を始めることは可能です。「もう遅い」と止める必要はありません。
迷っているなら、不明点を3つに絞り、同じ資料をもとに相談先の説明を比較する方法がおすすめです。
よくある質問
Q1. 個人事業主でも税務調査の対象になりますか?
A1. 対象になります。法人と同様、売上や経費の申告内容を確認されます。事業規模だけで対象外とは判断できません。
Q2. 法人の税務調査は年1.7%の確率ですか?
A2. 約1.7%は本文の公表件数を割った単純比率です。各社の条件が異なるため、そのまま個別の年間確率には使えません。
Q3. 申告漏れが見つかった割合は、調査に来る確率ですか?
A3. 違います。前者の分母は調査を受けた人・法人です。申告者全体を分母にする割合とは区別します。
Q4. 税務署からの電話は、すべて税務調査ですか?
A4. すべてではありません。調査と行政指導は別です。まず今回の連絡がどちらに当たるかを確認します。
Q5. 通帳やパソコンのデータも確認されますか?
A5. 調査に必要な範囲で対象になります。紙の帳簿だけでなく、取引履歴などの電子データも準備します。
Q6. 3年分の資料だけ用意すれば足りますか?
A6. 3年分で十分とは断定できません。通知された対象期間を確認し、それ以前の購入資料などが必要かも確かめます。
Q7. 調査日は変更できますか?
A7. 入院や業務上の事情など、合理的な理由があれば変更を協議できます。希望がある場合は早めに担当者へ伝えます。
Q8. 調査の連絡後でも税理士へ相談できますか?
A8. 相談できます。連絡日・対象期間・調査予定日の3点を伝え、引受け可否と準備に必要な時間を確認します。
まとめ
- 対象かどうかは、売上規模や個人・法人の区分だけでは決まりません。
- 確率を見るときは、分母と「実地調査・簡易な接触」の違いを確認します。
- 売上・経費・入出金の根拠をそろえ、説明できない点を相談します。
今日することは、調査が来る日を予想し続けることより、不明な取引を1つ書き出すこと。必要な資料と相談したい点が決まれば、次の行動に移れます。申告漏れや無申告に気付いた場合は、放置せず個別に確認してください。
税理士法人エール名北会計へのご相談は、税務調査サポートの公式案内をご確認ください。公式サイトでは初回相談無料、税務調査のみの依頼にも対応すると案内されています。相談時には、現在の状況、資料の有無、希望する依頼範囲をお伝えください。
