法人設立後の税務調査!いつ頃来る可能性が高い?
設立直後の不安と税務調査の謎
法人を設立し、事業が軌道に乗り始めた経営者の皆様にとって、「税務調査はいつ来るのだろうか?」という不安はつきものです。特に、税務調査が来るタイミングが予測できれば、それに向けて万全の準備をしたいと考えるのは当然でしょう。
税務調査は、経営者や個人事業主にとって決して他人事ではありません。そして、法人設立後の税務調査に関する情報は、インターネット上でも様々ですが、結論から言えば、「いつ頃来る」と断言できる時期はありません。
しかし、税務署が調査対象を選定する上での傾向や、法人設立後の特定の状況下で調査に入りやすい「リスク要因」は存在します。このリスクを理解し、適切な対策を講じることが、税務調査の不安を解消し、重いペナルティである重加算税を避けるための鍵となります。
本ブログでは、税務調査専門の税理士法人エール名北会計が、元国税調査官の知見に基づき、法人設立後の税務調査が入りやすい傾向や、その対策について徹底的に解説します。
I. 税務調査の基本原則:「いつ来るか」を断言できない理由
税務調査とは、納税者が申告した内容が税法に基づき適正であるかを確認するために行われる調査です。調査の時期や対象は、税務署内部の選定基準に基づいて決められるため、外部から正確に予測することはできません。
1. 任意調査の性質と事前通知
税務調査の多くは「任意調査」と呼ばれるものです。これは、納税者の協力のもとで行われる調査であり、通常、事前に税務署から「事前通知」の連絡が入ります。この事前通知が来たらどうするべきか、対応を考える必要があります。
税務署が調査対象とする法人を選ぶ基準は非公開ですが、その選定はランダムではなく、申告内容や財務状況の分析に基づいて行われています。国税庁は、限られた人員で効率的に適正な課税を実現するため、リスクの高い案件を優先的に選定する傾向があります。
事前通知では、調査の日時、場所、調査対象となる税目、調査対象期間などが伝えられます。この通知を受けてから実際の調査日までには、通常2週間から1か月程度の期間があり、この間に準備を整えることが可能です。ただし、現金商売など特定の業種や、不正が強く疑われる場合には、無予告調査(いわゆる「飛び込み調査」)が行われることもあります。
2. 調査の遡及期間の節目
税務調査で何年分遡られるか、という点も時期の予測に関わります。一般的に、税務調査では3年分または5年分の調査が行われることが多いです。
3年・5年の原則 通常の申告漏れや誤りの場合、法定の更正期限は原則として3年です。ただし、偽りその他不正の行為により税額を免れた場合は、5年まで延長されます。
7年への延長 意図的な不正行為(隠蔽や仮装)があったと認定された場合、最長7年間まで遡って調査されることになります。無申告の場合も、税務調査が来た時には最長7年分遡る恐怖に直面します。
この遡及期間の存在から、企業が設立され、3期目、あるいは5期目の申告を終えたあたりで、まとめて調査に入る傾向がある、と一般的に言われることがあります。これは、過去の申告内容を網羅的にチェックするタイミングとして効率的であるためです。
実際のデータでは、設立後3~5年目に初回の税務調査を受ける法人が多いとされています。これは、ある程度の事業実績が積み重なり、税務署が調査の必要性を判断しやすくなるためです。また、この時期になると、経理処理の癖や問題点が明確になってくることも理由の一つです。
3. 法人設立後すぐ(1期目・2期目)に調査が入るケース
通常、設立直後の法人は調査の優先順位が低い傾向がありますが、例外的に設立後まもなく(1期目や2期目)に調査が入る場合があります。これは、「目立つ申告」を行った場合や、特定の「リスク要因」が存在する場合です。
設立初年度から高額な売上を計上している場合、多額の経費を計上している場合、業界平均から大きく乖離した利益率を示している場合などは、税務署の注目を集めやすくなります。また、代表者が過去に税務調査で問題を指摘された経歴がある場合も、早期調査の対象となる可能性が高まります。
II. 法人設立後の税務調査を招きやすい「特定のリスク要因」
法人設立後の企業が、平均的なタイミングよりも早く、あるいは高い確率で税務調査の対象となるのは、以下のようなリスク要因が申告内容に見られる場合です。
1. 消費税還付申告を行った法人
法人設立直後に、多額の設備投資を行った場合など、仮払い消費税が仮受け消費税を上回り、消費税の還付申告を行うことがあります。
消費税還付申告は、税務調査の対象になりやすいポイントの一つです。税務署は、高額な還付が発生した場合、その取引の実態や、課税期間の選択が適正であったかを確認するために、比較的早期に調査を実施する傾向があります。これは、不正な還付請求を防ぐ目的があるためです。
特に、輸出業者や設備投資が大きい製造業などでは、消費税の還付額が大きくなることがあります。このような場合、税務署は還付申告書の内容を詳細に検討し、必要に応じて実地調査を行います。還付申告の際には、取引の実在性を証明する書類(契約書、納品書、請求書、領収書など)を完備しておくことが重要です。
2. 多額の欠損金を計上している法人
設立初期に赤字(欠損金)となることは珍しくありませんが、事業規模に対してあまりにも多額の欠損金が継続的に計上されている場合、税務署は「本当に経費が適切に計上されているのか」「架空経費がないか」という点に注目します。
特に、事業と関係のない私的な支出(経費の水増し)や、役員報酬の不適正な設定が疑われると、調査対象となり得ます。
欠損金の繰越控除は最大10年間(中小法人等の場合)認められていますが、これを悪用して意図的に赤字を作り出し、将来の税負担を軽減しようとする行為は、税務署の重点調査項目となっています。また、グループ会社間での不適切な取引により、特定の会社に意図的に損失を集中させるような行為も、調査の対象となります。
3. 現金売上が多い業種の法人
現金取引が多い業種は、税務調査で狙われやすいポイントです。特に、飲食業、建設業、美容院などは、売上除外や所得隠しの温床となりやすいため、法人設立後であっても、常に税務署の監視対象となり得ます。
税務調査官は、現金売上を隠蔽する手口とリスクを熟知しており、仕入れ規模や同業他社との比較から売上除外の痕跡を追います。例えば、仕入原価率の異常な変動、現金出納帳の不自然な記載、レジペーパーと売上計上額の不一致などは、調査官が注目するポイントです。
法人の「隠し口座」の利用も、売上除外を目的とした隠蔽行為とみなされ、重加算税の対象となります。特に、インターネットバンキングの普及により、複数の口座を使い分けることが容易になった現在、税務署はより厳格な調査を行うようになっています。
4. 同族会社特有の不透明な取引
中小企業に多い同族会社の税務調査では、会社と役員個人の間の資金移動や、親族間での不透明な取引が厳しくチェックされます。法人設立後に、社長個人への貸付金や仮払金が多額に計上されている場合などは、実質的な役員報酬隠しや利益操作が疑われ、調査のきっかけとなる可能性があります。
同族会社では、公私混同が起きやすく、個人的な支出を会社の経費として処理したり、会社の資産を個人的に使用したりするケースが見受けられます。これらの行為は、税務上の問題だけでなく、会社法上の問題にも発展する可能性があります。
また、同族会社間での取引価格の操作(移転価格の問題)、架空の業務委託契約、不当に高額な地代家賃の設定なども、税務調査で指摘されやすいポイントです。
III. 法人設立後も油断できない「不正」と「重加算税」のリスク
調査が設立後何年目に実施されるかにかかわらず、税務調査で最も恐れるべきは、重加算税が課されることです。重加算税は、意図的な不正(隠蔽や仮装)があった場合に課される最も重いペナルティであり、追徴税額が大幅に増加するだけでなく、調査の遡及期間が最長7年間に延長されます。
1. 不正と認定されやすい行為の排除
法人設立後、経営の忙しさから経理処理が「適当だった」場合や、「脱税」を意図した場合、税務調査でバレる可能性は高いです。
売上除外 法人税務調査で特に見られるリスクの一つが「売上除外」の危険性です。これは不正の典型です。売上を故意に計上しない、請求書を発行しない、現金売上を個人口座に入金するなどの行為は、明らかな脱税行為として重加算税の対象となります。
架空経費/経費の水増し 実際には発生していない費用を計上したり、私的な支出を意図的に含めたりする行為は、所得の意図的な隠蔽と見なされます。架空の外注費を計上する、実際の金額よりも多い領収書を作成する、個人的な飲食費を交際費として計上するなどの行為は、すべて不正行為として認定される可能性があります。
2. 重加算税を避けるための対応
重加算税を避けるためには、日頃から「不正と認定されないための証拠準備」を徹底することが必須です。万が一、過去の申告内容に問題があったと気づいた場合、税務調査の連絡が来る前に、自主的に修正申告や期限後申告を行うことが重要です。
自主的な申告は、過少申告加算税や無申告加算税の軽減を受けられるだけでなく、「隠蔽や仮装を意図したものではない」という姿勢を示すことにつながり、重加算税を回避する「最後のチャンス」となり得ます。
重加算税の税率は35%(無申告の場合は40%)と非常に高く、さらに過去5年以内に重加算税を課されたことがある場合は、10%が加重されます。この重いペナルティを避けるためには、日頃から適正な経理処理を心がけることが何より重要です。
IV. 税務調査に備えるための日頃からの対策と専門家の活用
法人設立後の経営者が、いつ来るかわからない税務調査に怯えることなく事業に集中するためには、日頃からの準備と、専門家である税理士との連携が不可欠です。
1. 日頃からの対策の徹底
税務調査対策の第一歩は、日頃からできることを徹底することです。
帳簿書類の適正な整備 すべての取引について、正確な帳簿記録と関連資料(請求書、領収書、契約書など)を適切に保管します。電子帳簿保存法の要件を満たす形でのデジタル保存も、業務効率化と調査対応の両面で有効です。
経費の明確化 事業関連の支出と、役員個人の支出を明確に区別し、経費の水増しを避けます。特に、交際費、旅費交通費、車両費などは公私混同が起きやすい項目であるため、使用目的や相手先を明確に記録しておくことが重要です。
内部統制の構築 売上の計上漏れや経費の二重計上を防ぐため、内部統制システムを構築します。複数人によるチェック体制、定期的な棚卸し、現金管理の徹底など、基本的な内部統制を整備することで、意図しない申告誤りを防ぐことができます。
2. 税務調査専門の税理士に依頼するメリット
税務調査の連絡が来てしまった場合、法人設立の時期にかかわらず、専門家である税理士に依頼することが、リスクを最小限に抑える最も確実な方法です。
(1) 精神的ストレスの大幅軽減
税務調査の電話がかかってくると、多くの方が不安・ストレスを抱え、仕事が手につかない状態になります。
税理士法人エール名北会計にご依頼いただくと、税務署からの電話はすべて税理士事務所へかかってくるようになります。税務署との直接のやり取りがなくなり、精神的ストレスが大幅に減ります。税務調査の不安を一人で抱えないことが大切です。
経営者は本業に集中することができ、調査対応は専門家に任せることで、事業への影響を最小限に抑えることができます。
(2) 追加納税を最小限に抑える交渉力
税務調査当日、税務調査のプロが同席することで、追加で払う税金が最小になるよう対応します。
元国税調査官の知見 代表税理士の石曽根祐司は元国税調査官の経歴を持ち、税務調査の実情を熟知しています。元国税調査官の経歴を持つ税理士に依頼することで、税務署側の考え方や調査の手口を先読みした対策が可能です。
適正な反論 調査官の主張が納得できない場合や、税金の法律に基づいた解釈に誤りがある場合、税金のプロがしっかりと反論し、お客様を守ります。一人で対応すると、知識不足で必要以上に税金を払ってしまう可能性があります。
(3) 事前準備の徹底と重加算税の回避
税務調査が始まる前に、税理士は確定申告の内容をチェックし、調査官が指摘してくるであろう点を洗い出します。
回答準備 調査官がしてくるであろう質問に対する答えを事前に準備することで、調査当日、調査官の質問にうまく回答できず、無駄な税金を払うことになるリスクをなくします。
資料整備 調査官にいらぬ誤解を与えるような資料があれば、事前に作り直しをお願いすることもあります。
「何も準備せず、税務調査当日を迎えるのは自殺行為です」。この事前打ち合わせが、不正と認定されることを防ぎ、重加算税回避の成功を左右します。
V. 不安を安心に変える専門家との連携
法人設立後の税務調査が「いつ頃来るか」を正確に知ることは不可能ですが、申告内容や業種、取引内容にリスク要因がある場合、設立時期に関わらず調査の対象となり得ます。特に消費税還付申告を行った法人や現金商売の法人は、より早期の調査に警戒が必要です。
最も重要なのは、日頃から適正な申告を徹底すること、そして税務調査の連絡が来た際には、不安やストレスを抱え込まず、迅速に専門家である税理士に相談することです。
税理士法人エール名北会計は、年間200件以上の税務調査に対応してきた豊富な実績を持ち、税金の法律に基づきお客様を守ります。顧問契約がない方でも税務調査の立会いを依頼することが可能です。
まずは、初回の無料相談をご利用いただき、法人設立後の申告内容に関する不安や、税務調査への対応についてご相談ください。料金に納得いただいてからご依頼をお受けしますので、ご安心ください。
税理士法人エール名北会計 連絡先
税務調査に関するご相談は、税務調査専門の税理士直通ダイヤルまでお気軽にご連絡ください。
電話番号: 080-3354-1163(税理士直通) 営業時間: 毎日 8:00~21:00(時間外でも事前予約で対応可) 代表者名: 公認会計士・税理士 永江 将典 (※代表税理士の石曽根祐司は元国税調査官の経歴を持ち、税務調査の実情を熟知しています。)
主な所在地:
- 名古屋本店:名古屋市中村区太閤3-1-18-6F
- 東京支店:新宿区歌舞伎町1-1-15-9F
- 横浜支店:横浜市西区平沼1-38-21-3F
- 名古屋北支店:名古屋市北区金城3-12-19-4F
- 大阪支店:大阪市北区梅田2-5-8-5F
税理士法人エール名北会計は、名古屋だけでなく、全国対応で税務調査のサポートを行っています。
